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中須賀、若手の成長喜ぶも「そう簡単に乗り越えさせない」/2019JSB1000チャンピオンインタビュー

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中須賀、若手の成長喜ぶも「そう簡単に乗り越えさせない」/2019JSB1000チャンピオンインタビュー

 12月14日に都内で行われた二輪の全日本選手権ランキング認定表彰式『MFJ MOTO AWARDS 2019(モト・アワード2019)』。全日本ロードレース選手権の最高峰、JSB1000クラスチャンピオンの中須賀克行(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)が表彰された。2年連続、そして前人未到の通算9度のチャンピオンの獲得である。

 2018年に復活したホンダワークスチーム、Team HRCが2019年シーズン圧倒的な速さをみせつけた。対するヤマハファクトリーも更なる速さを求めてシーズン前のセパンテストでマシンの改良に取り組んだ。

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 中須賀が駆るヤマハYZF-R1は2015年にデビュー以来2019年で5年目。4メーカーのなかでは一番古いマシンとなった。「新型マシンに対抗するにはマシンを熟成させるしかない。そのためにできることは何でもやった」と中須賀。セパンではマシンのバランスを崩してまで、さまざまなテストを行いセットアップを詰めていった。

 迎えた2019年の開幕戦もてぎで中須賀は2連勝を飾る。「セパンで確認したことが、もてぎはうまく機能した。だけど(高橋巧と)接戦の上での勝利だったから厳しいシーズンになるだろうなと思いました」と中須賀は振り返る。

 確かに接戦ではあったが、中須賀の強さは誰もが認めるところだ。2019年シーズンも中須賀を中心に動くだろうと周囲は思ったはずだ。

 しかし第2戦の鈴鹿。ここでTeam HRCの高橋巧が圧倒的な速さをみせる。予選では前人未到の2分3秒台に入り、中須賀が保持していたコースレコードをコンマ7秒も上回った。そしてまさかの事態が起こる。レース1で中須賀が転倒リタイア。ノーポイントレースとなった。高橋はその速さのまま2連勝を飾る。

「鈴鹿に来たら高橋選手とマシンのパッケージがものすごく速かった。予選でも追いつけなく、決勝でも引き離されまいとしてプッシュし続けていたら転倒してしまいました。自分たちが良かれと思ってやってきたことが鈴鹿では機能しませんでした」

 続く第3戦SUGOでも高橋が2連勝、中須賀は2位入賞を続けるものの、前半戦終了時点で28ポイントの差を空けられていた。この時点で自力チャンピオン獲得に黄色信号が灯った。

 開幕戦で勝ったもてぎから後半戦はスタートした。ここで中須賀はひさしぶりに勝つ。続く第6戦岡山では3位、そして第7戦オートポリスではコースレコードを更新しての2連勝。オートポリスから新しいリヤアームを投入、これがうまく機能した。

「サーキットによって合う、合わないが出ているのは『どこかのバランスが微妙にずれているのではないか』、『どこかに見落としがあるのではないか』と懸命にマシンの開発を進めてもらいました。後半戦の岡山、ドライでは好感触を得てバイクのポテンシャルと進んでいる方向性は間違っていないと確信できました。オートポリスで投入した新しいパーツがうまくハマったこともあり、ふたつ勝つことができました」

■最後の最後で起こった大逆転劇。中須賀が感じた高橋の心境
 最終戦鈴鹿を前に高橋とのポイント差は11。2019年の高橋とホンダCBR1000RR SP2のパッケージは他を寄せ付けない速さを持っており、このポイント差をひっくり返すのは至難の業だということは自他共に認めるところであった。

 最終戦レース1、スタート直後に高橋と野左根航汰(YAMAHA FACTORY RACING TEAM)が接触、ふたりとも順位を大きく落とす。そしてその直後、誰もが目を疑う映像が飛び込んできた。高橋がまさかの転倒を喫したのである。

 レース1は中須賀が優勝、高橋は16位。レース1終了時点で逆に中須賀が9ポイントリードでレース2を迎えることとなった。追う立場から追われる立場になった。そして、中須賀はレース2で2位に入賞し、大逆転でシリーズチャンピオンを獲得した。

「最終戦は、高橋選手、(野左根)航汰、自分、みんなチャンピオンシップがかかっていました。各々がやるべきことをやったなかでアクシデントがありましたが、そこで自分が勝てるポジションにいたことがチャンピオン獲得への流れを作るきっかけになったと思います。ですが、(レース2では)走りは固くなってしまいました」

「(最終戦鈴鹿では)自分はふたつとも勝つしかなかったので『やってやるぜ!』と意気込んでサーキット入りしましたが、レース1の途中から失ったものがふたたび手に入るかもしれない、と思ったら急に走りがガチガチに固くなってしまいました。チャンピオンを獲れば獲るほどその重みがわかってくるので余計に緊張して自分の走りができませんでした」

 2019年シーズン、中須賀と高橋は熾烈なバトルを展開した。中須賀にとって久々の強力なライバル出現であった。お互いに刺激し合い、高め合ってきたふたり、中須賀は最終戦の高橋の結果をどう見たのだろうか。

「チャンピオンというプレッシャーは少なからずあったと思いますし、それを手に入れて次につなげたいと思っていたと思います。ライダーはみんなそう思うはずです」

「でも、ほぼ確実に手に入れられるところまで来ていながら手に入れることができなかった。それは“チャンピオンになることの難しさ”を証明していると思います。1レース1レース、つねに勝ちを狙って、つねに意識を高く持って、それを1年間ずっと続けていかなければ手に入れられないのです。その苦労を知っているだけに高橋選手はすごく悔しかったと思います」

 中須賀も2010年に3年連続チャンピオン獲得がかかった最終戦鈴鹿で攻めた結果、転倒してチャンピオンを逃した経験をしている。

「あの時はとにかくプッシュしました。攻めた結果だったのでライダーとしては気持ち良かったのですが、あとから失った物の大きさに気付いてもの凄く後悔しました」

 チャンピオンの重さとそれを獲ることの難しさを知っている中須賀だけに、高橋の悔しさが痛いほどよく解っているようである。

 2020年シーズン、高橋はスーパーバイク世界選手権(SBK)に参戦するため全日本ロードレースは走らない。そのため中須賀が中心となってJSB1000クラスの闘いが展開されるだろう。

 2019年シーズン後半から野左根や水野涼(MuSASHi RT HARC-PRO.Honda)の若手ライダーが頭角を現し、優勝争いに絡んでくるようになった。中須賀は若手ライダーの成長を喜ぶと共に高い壁となって彼らの前に立ちはだかることが役目だとも言う。

「彼らをやっつけるのが自分の役目だけど、いつまでも自分のようなおじさんに負けているようではいけない。早く自分を追い越して世界への切符を手に入れて欲しいと思います。ですがそう簡単に乗り越えさせません。彼らの勢いや成長が自分の刺激になりますし、それでまた自分も進化できる。お互いに進化して全日本ロードレースの走りのレベルを上げていければと思います」

 なお、中須賀の2020年の体制についてはまだ交渉している段階とのことだが、全日本ロードレース参戦は間違いないようだ。2020年シーズンの抱負については次のよう語る。

「高橋選手が抜けた穴を埋めるべく、全日本ロードレースの走りのレベルを落とさないように自らを高め、来てくれるお客さまが楽しめる質の高いレースをして全日本ロードレースのレベルを上げていきたいと思います。その中心となって引っ張っていけるように心を引き締めて頑張っていきたいと思います」

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