近年、軽自動車の圧倒的な売れ筋になっているのがスーパーハイトワゴン。そのなかで、ホンダN-BOX、スズキスペーシア、ダイハツタントが販売台数のトップ3モデルだが、そのなかでフルモデルチェンジから2年と、登場からもっとも新しいのがタントだ。
しかしながら、このトップ3のなかでタントの順位は最近、3位が定位置になってしまっている。首位奪還に向けてプラットフォームからパワートレーンまですべてを一新して2019年に登場し、2019年11月に一度1位になったものの、その後は首位を獲れていないのだった。
トヨタの商用車提携にスズキとダイハツも参加!! 軽商用車の電動化によって物流はさらに進化するのか!?
その要因は何なのか? モータージャーナリストの諸星陽一氏が分析する。
文/諸星陽一
写真/DAIHATSU、Honda、SUZUKI、ベストカー編集部
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■スーパーハイトの元祖といえばタントだった!
ダイハツのタントは2003年11月に登場、軽スーパーハイトワゴンというジャンルを開拓したエポックメイキングなモデルでした。しかし、新たなジャンルで成功を収めればそこにライバルが参入してくるのは当たり前。
とくに軽自動車の世界ではヒットするモデルがあればより細かいところまで手を尽くした後発モデルがすぐに登場し、市場争いは熾烈になるのが常です。
ダイハツのタントは2003年11月に登場、軽スーパーハイトワゴンというジャンルを開拓したエポックメイキングなモデルだった。名前もダイハツらしく、考え込まれている
最初にタントに挑戦してきたのはスズキのパレットで、2008年1月に市場導入されました。2008年度(2008年4月~2009年3月)に一番売れた軽自動車はスズキ ワゴンRでは2位はムーヴ、タントは3位、パレットは7位でした。パレットは2013年に撤退しスペーシアと名前を変えます。
パレットは2013年に撤退しスペーシアと名前を変えた。ネーミングが直感的にスペースユーティリティへと繋がらない名前だったからでは? と筆者
タントの車名の由来は「とても広い、たくさんの」といった意味をもつイタリア語だとダイハツは発表しています。しかし「たんと」は方言ではあるのですが、日本人の感覚で言えば「たんと」は「たくさん」でしょう。
パレットが改名したのはそのネーミングが直感的にスペースユーティリティに優れたクルマではないことが想像できないからだったのでは? と私は考えています。
■ワゴンR対ムーヴの戦いではつねにトップ争いを演じてきたが・・・?
とはいえ2008年ごろのトップカテゴリーはまだスーパーハイトワゴンではなく、ハイトワゴンの人気が高く、スーパーハイトワゴンが販売台数1位に躍り出るのは2012年度のことです。
ホンダはそれまで弱かった軽自動車の分野に資金、人材、技術を大量に投入。2011年12月に初代N-BOXを市場導入。そのN-BOXが2012年度に1位となるのです。その後N-BOXは2014年度を除いてつねに1位をキープしています。
1990年代以降、軽自動車の開発資源が絞られてきたホンダ。2000年代末に軽自動車市場での復活のため、開発資源を投入してN-BOXを開発した
唯一、1位を譲った2014年度のトップセールスはタントでした。前年9月にタントはフルモデルチェンジし3代目に進化しています。その後、タントは2019年7月にふたたびフルモデルチェンジを果たしますが、2020年度も1位に返り咲くことができませんでした。
660ccエンジン最高の熱効率を自負して2019年7月にフルモデルチェンジした現行型タント。WLTCモード燃費はNAのFFが21.2km/L。ターボのFFが20.0km/Lだ
月別でみても2019年11月に1度トップの座を手に入れますが、その1回だけでした。しかも2020年度の月別販売台数を見ると、毎月のトップセールスはN-BOX、2位がスペーシア、3位がタント(10月だけ2位と3位が逆転します)とタントはかなり苦戦を強いられています。
ワゴンR対ムーヴの戦いではつねにトップ争いを演じてきたダイハツの軽自動車としてはちょっとふがいなさを感じます。果たして、その原因はどこにあるのでしょうか?
2020年度の月別販売台数。7月以降、タントはスペーシアと2位争いを演じている
■顧客の欲する仕様で見えてくる「差」
もっとも大きな要因は価格にあるといえるでしょう。N-BOX、スペーシア(スペーシアカスタム、スペーシアギア含む)、タント(タントカスタム含む)の価格帯は以下のようになります。
・N-BOX:142万8900円~202万2900円
・スペーシア:138万500円~188万4300円
・タント:124万3000円~200万2000円
この価格帯を見るとN-BOXが高いように思えますが、じつは違います。
今、クルマを買うとなったらやっぱり衝突軽減ブレーキなどの先進安全装備が欲しいですよね。さらにあれだけ世の中で自動運転、自動運転と言っていると、その入り口といってもいいアダプティブクルーズコントロール(ACC)はやはり欲しいと思うはずです。
そして、バックソナーなどの駐車支援システムについてもやはり欲しいと思う人が多い装備です。N-BOXは全車でこの3つの装備が標準装着されますが、スペーシアはバックソナーは全車に標準されるものの衝突軽減ブレーキは一部車種には非装着で、ACCは一部車種に標準もしくはオプション。
タントは3つとも装備されない、オプションでも装備できないといったグレードもあります。この3種の装備が付いた状態でのもっともリーズナブルなモデルは以下のようになります。なおオプション装着は多くの場合、セットオプションとなるのでACCのみが装備されるとは限りません。
・N-BOX:142万8900円(L・FF)
・スペーシア:160万1600円(ハイブリッドX・FF)
・タント:164万4500円(Xターボ・FF)
N-BOXとスペーシアの価格差は17万2700円、N-BOXとタントの価格差は21万5600円にもなるのです。もちろんほかの装備との兼ね合いもありますから一概には言えませんが、ベーシックモデルでも重要装備が充実しているN-BOXが販売数を伸ばすのは当たり前でしょう。
先進安全装備や駐車支援システムを搭載すると相対的に「安い」クルマとなるN-BOX。WLTCの燃費性能はNAのFFが21.2km/L、ターボのFFが20.2km/Lだ。タントよりターボ仕様の燃費がちょっとだけ優れている
さて、ここにさらに装備を加えた例を出してみましょう。リアのパワースライドドアです。N-BOXとスペーシアは、左パワーオートスライドドアはボトムグレード以外は標準装備です。しかし、タントカスタムは全車標準なのですがタントは5グレード中2グレードのみ標準装備となります。
衝突軽減ブレーキ、ACC、バックソナーに加えて左側パワースライドドアを装備するクルマで一番リーズナブルなのはN-BOXのL(FF)で155万9800円となります。タントの場合、XSターボのFFで164万4500円となってしまいます。
両側パワースライドドアも装備した場合、一番リーズナブルなのはスペーシアのハイブリッドX(FF)で160万1600円です。同様の装備でN-BOXは165万8800円、タントは169万9500円となります。
■OEMの力
このように装備と価格で考えると、タントがちょっと不利な理由が見えてきます。
タントがそうした様相でダイハツは大丈夫か? と思う方もいるかも知れませんがダイハツはトヨタとスバルにも軽自動車をOEM供給しています。
タントのOEM車であるスバル シフォン。ダイハツはスバルやトヨタ向けにOEM車を作っている
2020年度の軽乗用車の販売台数をもとに計算するとダイハツ、トヨタ、スバルの合計台数は43万7460台(トヨタ製C+PODの24台を含む)、同様にマツダにOEM供給しているスズキは合計で44万7748台とともに40万台超え、ホンダはOEM供給先がなく単独となり27万5113台です。
こうしてみるとダイハツやスズキはやっぱり軽自動車をしっかり作っていることがわかると思います。
ダイハツやスズキは新旧プラットフォームを上手に使って幅広く車種を作り全体ボリュームで稼ぐ、ホンダはプラットフォームを統一し(S660は2022年に生産終了が決まっている)効率よくクルマを作るという、軽自動車ビジネスに対するアプローチの違いが見えてきます。
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みんなのコメント
緑か青になるなんてセンス無さ過ぎだし、
ついでに言うとタフトもこのクソ暑い季節なのに
どの色を買っても強制的にオレンジ色へされてしまう。
まるで入学した年度で色が強制的に指定されてしまう
学校のジャージみたいだ。
この塗装を思い付いた人は
開発から降ろした方がいいよ。
無塗装で真っ黒色のエアコン吹き出し口に
なった方がまだマシ。
N-BOX・スペーシア・タントの中でセンターメーターは1台だけ。
買い換える時、センターメーターが理由で真っ先に候補からはずれた。
結果、スペーシアギアに決定した。アイドリングストップからの始動も
セルモーターのキュルキュル音が無いしね。