新型フェアレディZのプロトタイプが発表され、大きな話題を集めている。そこで、あらためて歴代モデルについて小川フミオがカウントダウン形式で振り返った!
巷間けっこう大きな話題を呼んでいるのが、2020年9月16日に公開されたフェアレディZのプロトタイプだ。「ピュアスポーツカーのZは、日産のスピリットそのものです」と、社長兼CEOの内田誠氏の言葉が紹介されているように、日産はまだスポーツカーを捨てなかった! と、嬉しく思ったファンは少なくないだろう。
フェアレディZは、初代「S30型」が1969年11月に登場。日産が自動車づくりを教わった英国車の雰囲気を、プロポーションやヘッドランプまわりに漂わせながら、なににも似ていない、まことにスタイリッシュなモデルだった。以降、フェアレディZは、ずっと日産自動車のイメージアップに貢献するモデルである。
Hiromitsu Yasui今回発表されたプロトタイプのメディア向け資料のなかでも、「初代S30型のシルエットやフロント&リアのアイコニックなモチーフを引き継いだ」と、書かかれているほどだ。
ただしS30のみならず、歴代のフェアレディZはどれもそれなりにファンがついている。思い出すのは2019年のニューヨーク自動車ショー。米国でも「Z(ズィー)カー50周年」ということで、このショーでは、日産のブースのみならず、オーナーズクラブが歴代のモデルを展示していたのが印象的だった。
ここでは、歴代フェアレディZのなかから、個人的にいいなぁと思うモデルをカウントダウン形式でリストアップしてみた。個人的なベスト5なので、異論のあるひとは、自分なりの5台を選びだすことを、楽しんでください。
第4位:6代目(Z34)
Z34型ともよばれる現行モデルは、6代目にあたる。2008年の登場だから、すでに12年が経過。時が経つ速さを思うとともに、いまも存在感が薄れていないと感じさせる。
いいところは、パワフルであり、それをうまく制御して、ドライビングが楽しいクルマに仕上げているエンジニアリングだ。3696ccのV型6気筒エンジンは、標準モデルで247kW(336ps)/7000rpmの最高出力と、365Nm/5200rpmの最大トルクを発生。高回転型で、とりわけ6段マニュアル変速機との組合せは、自動車好きにとって大きな魅力を持つ。
乗り味は快適で、意外なほど重厚感がある。もともとフェアレディZの大きな特徴だった、“長距離も得意なグランドツアラー”という要件をきちんと満たしているともいえる。
大きく張り出した前後のフェンダーと、大きく開いたフロントエアダムの開口部が目立つボディは、スポーツカー的な美しさを感じさせる。全長が4260mmに抑えられているのも、あるていどのコンパクトさで評価されてきたフェアレディZのいい点を継承したともいえる。
願わくは、ボンネットの高さがもっと低く、フロントマスクとリアエンドに個性的な表情があれば、なおよし! と、思う。それに、小さなエンジンで、軽快な運動性能を追求したモデルがあれば、乗ってみたかった。いろいろ希望を述べたくなるほど、私にとっても思い入れのあるクルマ。それがフェアレディZなのだ。
第3位:3代目(Z31)
3代目が、1983年9月に登場した際、私はホッとした。その前の2代目が、北米の安全基準を未消化のまま採り入れたような、ぱっとしないデザインだったからだ。全長は初代とほとんど変わらないのに、妙に間延びして見えた。
それに対し3代目は、古くなっていた直列6気筒エンジンをやめ、パワフルで、前後長が短くハンドリングに好影響を与えるV型6気筒に切り替えるなど、気合の入ったモデルだった。
実際、フロントオーバーハングを切り詰めるとともに、トレッドを拡大。ドライビングプレジャーを前面に押しだすようになったのだ。
スタイリングも、ポップアップ式ヘッドランプの採用などで、従来のデザインから離れることに成功。トヨタが強力な競合車「スープラ」を1986年に発表したのち、フェアレディZも対抗すべく、255psを発揮するパワフルなVG30DETエンジンを搭載し、市場をにぎわせてくれた。
1986年にスタイリングを中心にビッグマイナーチェンジがおこなわれて、よりキャラクターの強いスタイルになったのも印象的だ。当時のニッサンデザインインターナショナル(現ニッサンデザインアメリカ)が担当し、前後サイドパネルをはじめ、ボディ全体に自然なふくらみがもたらされたことや、ボディ同色バンパーの採用で、欧州的な雰囲気と感じられたものだ。
第2位:4代目(Z32)
4代目にあたるZ32型は、いわゆるバブル経済まっただなかの1989年に登場した。それまでは米国的な雰囲気が強かったスタイリングが、欧州的で新鮮だった。いや、それ以上である。
フロントの造型やサイドウィンドウのグラフィックスなど、ボディデザインは、ほかにない強いオリジナリティを感じさせた。側面からみると、スッと延びたボディは、タイヤとボディの関係もよく、美しいとさえいるキャラクターを持っていたのだ。
Z31型に対し、全長は短くなったいっぽう、ホイールベースは延長された。いっぽうでフロントのオーバーハングはより短い。そのボディに、当時国産車の上限だった最高出力280psを発揮するパワフルな3.0リッターV型6気筒ガソリンターボ・エンジンを搭載。
このエンジンは、片バンク(3気筒)ごとにスロットルチェンバー、エグゾーストマニフォルド、触媒、そしてマフラーまでを独立して備えた”2系統”。効率化/高性能化をねらったものだ。
日産の開発陣が、世界に誇れるスポーツカーを作ろうと頑張ったのが、よくわかる。そこも大きな好感ポイントだったのだ。
第1位:初代(S30)
フェアレディZが”ブランド”として定着したのは、1969年の初代が成功したからにほかならない。ボディサイズ、エンジン排気量、パッケージングと、日本でも米国でも、直接競合するモデルは見当たらないほどオリジナリティが高かった。
英国の「MGB」(1963年~1980年)やトライアンフ「TR6」(1969年~1976年)よりぐっとモダンなエンジニアリングだし、スタイリングも新鮮。さらに、クーペボディは耐候性が高く、2by2は機能的だったので、米国で大ヒットしたのもよくわかる。
日本では、当時、かなり大排気量と思われた2.4リッター6気筒エンジンが1971年10月に用意されたのも、そのときは”アメリカっぽくてカッコいいなあ”と思った。
いっぽう、おなじタイミングで、FRP製のノーズピース、オーバーフェンダー、それにアクリル製ヘッドランプカバーを備えた240Z-Gも発売された。こちらは欧州のスポーツカーのような雰囲気。
いまならオリジナルデザインもいいと思うかもしれない、当時は、フェアレディZはGノーズ(エアロダイナノーズ)つきに限る! と、信じていた(私見)。
要するに、当時の言葉でいうと”バタくさい”クルマだった。こんなクルマを作れるなんて! と、日産のイメージアップに貢献。それはいまでも、自動車好きの心のなかで生きている。
番外編:Z432
フェアレディZといえば、これでしょう! と、印象的に残っているのは初代に設定されたZ432だ。そもそもは日産のレーシングモデルである「R380」用エンジンをデチューンした1989cc直列6気筒を搭載したのが大きな特徴だ。
おなじエンジンを搭載し、レースで活躍していたスカイラインGT-R(1969年2月発表)が、すでにマーケットの”地ならし”をしていたため、登場とともに、大きな話題になったスポーツモデルである。
車名の数字は、知られすぎるほど知られているので、わざわざここで書くのもなんとなくはばかられるが、「4」は1気筒あたり4つのバルブ、「3」は3連ソレックス・カーブレター、「2」はツインカムを表していた。
いま操縦すると、ステアリングホイールやシフトレバーは妙に重く、ブレーキは効かず、エンジンも現行フェアレディZのようにシュンシュンと吹け上がらない。でも当時はこんなクルマなかったのだろう。加速のよさひとつとっても、じゅうぶん人気の理由が推察できる。
当時は、レースでの活躍が市場に強くアピール出来た(欧米ではいまでもそう)。Z432は、そのために開発されたモデルといっても過言ではない。価格も、標準モデルの2倍、185万円もした。
消費者物価指数から、当時の貨幣価値を現在に置きかえるには、おおざっぱに、4倍超だとか。となると、Z432はいまなら740万円超。いまでこそ1000万円を超える日本車もあるとはいえ、当時の日産は大胆だった。
でも高くても理想を追求したモデルがないと、クルマがおもしろくならないのは事実。スポーツカーらしさの追求は、まだプロトタイプが発売された段階であるものの、7代目フェアレディZにおおきく期待するのである。
文・小川フミオ
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