なぜ、こうした事態を想定できなかったか
やはり、そうなったか。スズキが2025年2月3日にニュースリリースした、『新型ジムニー ノマドご注文中止のお詫び』に対して、メディア、販売店、そしてユーザーの多くがそう思ったに違いない。
【画像】シリーズ初の5ドアモデル『スズキ・ジムニーノマド』 全29枚
このリリース発信の4日前、都内で開催された記者会見で、月間販売目標台数1200台と発表されたことで「また長納期になるな」と感じた人が少なくなかったからだ。長納期どころか、一気に約5万台の受注となり、このままの生産計画では最悪『4年待ち』という事態で、あえなく受注一時中止という事態となった。
また、会見の中で国内営業部門が強調していた、全国各地のショッピングモールでの先行展示会も中止となった。すべての計画が大きく狂ってしまったのだ。これを、スズキにとっての単なる『嬉しい悲鳴』と受け流してよいとは、ユーザーも販売店も到底思わないはずだ。それどころか『なぜ、こうした事態に陥ることを想定できなかったのか!?』と、憤りを感じるだろう。
今回の件、その背景について考えてみたい。大きく3つの要因があると、筆者は見ている。ひとつ目は、ジムニー・シリーズのポジショニングに対する見解の甘さだ。会見の中で、『開発ターゲット』という項目として、ターゲットユーザー層の考え方を示した。
それによると、ジムニーとジムニー・シエラの開発ターゲットを『ジムニーの性能を最大限に活用するプロユースのお客様』と位置付けた。その上で、ジムニー・ノマドについては『ジムニーの性能を日常生活で必要とするお客様』とした。さらに、これらを含めた大きな括りとして、『ジムニーの性能への憧れがあるお客様』と説明したのだ。これでは、日本市場におけるジムニー市場の現状把握として不十分だと感じる。
プロユース、ファミリーユースという単純図式ではない
筆者は現行4代目ジムニーが誕生した2018年、自身もジムニー・オーナーになることで、ジムニー日本市場の実態を詳しく調べた経験がある。その際、ジムニーの商品性が3代目までと大きく変わったと感じた。
デザインとしては、3代目がSUVライクなイメージとなったものの、高速道路でのハンドリングで3代目と4代目を比較すると、圧倒的な差を感じたからだ。つまり、4代目は見た目も走りも、日常的に使える(軽自動車及び登録車の)コンパクトSUVになったと言える。
さらに、2010年代後半から2020年代のコロナ禍に向けて、若い世代だけではなくシニアを含めた広い世代で『新しいライフスタイル』という概念が広がり、4代目ジムニーは『新しいライフスタイルのアイテムのひとつ』として定番化した。
こうした市場動向を踏まえると、前述したスズキが描く『開発ターゲット』は少なくとも日本市場には上手くあてはまらない印象がある。そのため、ジムニー・ノマドに対する市場予測が大きく外れたのではないだろうか。
会見の際も、『ジムニー=プロユース』がベースで、そこからの『ファミリーユース』という発言が目立った。これに対して、筆者を含めて多くのメディアが違和感を覚えたと思う。
ふたつ目の要因は、国内における生産、販売戦略の甘さだ。ジムニー5ドア化については、4代目登場当時から日本のみならず、グローバル市場からの要望としてスズキ本社にあがっていた。だが、当初生産は日本のみであったため、日本固有の軽自動車規格であるジムニーと、輸出モデルとしてのジムニーであり日本ではジムニー・シエラと呼ぶ登録車のバックオーダーが、スズキの当初予想を超えて広がった。
望まれるユーザーが十分に理解しうる納期
対応策としてスズキは、国内工場での生産能力の拡張などを進めながら、その後は日本市場以外の対応をインド工場に委ねることになった。それでも、現時点で国内向けバックオーダーが残っている状況であるため、このタイミングで日本に登録車5ドアを導入することに対して、スズキ社内で賛否が分かれた。
当初は反対の姿勢を示していた鈴木俊宏社長は、国内営業からユーザーひとりひとりに丁寧に説明するよう説得されて、最終的にGOサインを出したことを会見で明らかにした。ところが、発表4日後に受注一時中止という事態に及んでしまったのだ。
4代目の導入初期で苦労した生産、販売戦略での学びが今回、上手く機能しなかったと言わざるを得ない。今回の対応策として、一般論として考えられるのは、インド工場での生産能力拡大に加えて、日本国内工場でのジムニー・ノマド生産開始だろう。
そして3つ目の要因は、自動車産業界の基本構造によるものだ。自動車メーカーは生産と卸売を主業として、販売については販売会社に委ねている。自動車メーカーは記者発表で大々的にお披露目し、販売会社が注文を受付けてその数をメーカーに発注する、という旧態依然とした商流だ。
他の産業界でも同じような商流だが、自動車の場合、自動車メーカーの先行投資額が巨額であり、その回収までの期間も長いことが特徴となる。そのため、今回のように需要と供給のバランスが崩れると、一気にメーカーは機能停止に陥ってしまう。
将来的に自動車産業界は、EVシフトによるエネルギーマネージメントビジネスに転じることが予想されるが、そうなると需要からバックキャストした生産予測を詳細に行うことが必然となるだろう。いずれにしても、ユーザーとしては一刻も早く、ジムニー・ノマドを含めたジムニー・シリーズの納期が、ユーザーが十分に理解しうるレベルを維持することが望まれる。
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みんなのコメント
ボッタクリ商売をしてる他社も見倣うべきです
単純に売れる数を大量生産って訳にもいかない
スズキだとジムニーシリーズと軽トラ軽箱バンが、
燃費の悪い三車種
必要最小限売れ続ける事が、一番な車種なんだよ