効率性とドライビングダイナミクスの両立!
ポルシェは2025年10月23日、数週間以内に発売予定の新型「カイエン・エレクトリック」に搭載される、“革新的”な高電圧(HV)技術に関する詳細を発表した。この新型電動SUVは、機能統合型バッテリー、強力なデュアル冷却システム、インテリジェントな熱管理、そして堅牢な充電性能を特徴として、E-Performance(電動パフォーマンス)の新たな基準を築くことを目指している。またこの発表に先立ち、米国ではメディア関係者向けの航続距離テストが実施された。
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600km超の航続距離と実証テスト
カイエン・エレクトリックは、ポルシェ自社開発による「プレミアム・プラットフォーム・エレクトリック(PPE)」の進化版をベースにしている。その800Vアーキテクチャは、優れた充電出力、インテリジェントなエネルギー配分、高い効率性の基盤となる。新しい駆動システムとの組み合わせにより、WLTP複合基準で600kmを超える航続距離を実現する見込みだ。
その長距離走行性能を実証するため、米国では、独立系ジャーナリストによる高速道路での実環境テストが実施された。生産版に近いがカモフラージュを施されたプロトタイプ車両は、許容最高速度である時速70マイル(113km/h)での走行において、1回のバッテリー充電で350マイル(563km)以上を走破した。
ポルシェの取締役会副会長にして研究開発担当取締役のミヒャエル・シュタイナー氏は、この新型モデルについて次のように述べている。
「カイエン・エレクトリックによって、私たちはe-performanceを新たなレベルに引き上げています。当社の革新的な高電圧システムは、最高の効率性とポルシェ特有のドライビングダイナミクスを両立させています」
機能統合型バッテリーとセル化学
カイエン・エレクトリックの中核を成すのは、総エネルギー量113kWhの機能統合型高電圧バッテリーである。このバッテリーは車両構造に直接統合され、エネルギー貯蔵庫としてだけでなく、車体の構造部品としても機能する。
この設計により重量とパッケージングにおいて大きな利点が生まれ、セルとバッテリーハウジングの比率は、第2世代タイカンのバッテリーと比較して12%向上。また、バッテリーの統合は車両剛性の向上と重心の低下にも寄与し、俊敏なハンドリング性能を実現する重要な要素となっている。
パッシブセーフティ(受動安全性)の面でも新たな基準を設けたという。バッテリーモジュールには、特別に開発されたアルミニウムプロファイルが使用され、衝撃の際にはエネルギーを吸収してセルを保護するというのである。
6つの交換可能モジュールと192個の大型パウチセルから成るリチウムイオンバッテリーが採用されており、セルはグラファイト-シリコン陽極(アノード)と、ニッケル-マンガン-コバルト-アルミニウム(NMCA)陰極(カソード)で構成される。86%という高いニッケル含有率が最大のエネルギー密度を確保し、陽極に含まれるシリコンが急速充電能力を大幅に高めるという。この結果、現行タイカンのバッテリーと比較してエネルギー密度は7%向上し、充電効率も高められた。
デュアル冷却と予測熱管理
この高電圧システムの重要な要素として、革新的な冷却機構が挙げられる。バッテリーの温度を上下両面から調節する「デュアル冷却」が採用されており、天候や充電出力、運転スタイルにかかわらず、バッテリーが常に最適な温度範囲で作動するよう、精密に制御。その冷却能力は、大型の家庭用冷蔵庫約100台分に相当するという。
また、エネルギー効率の高い圧力ファンが初めて採用され、従来の吸引ファンと比較して、エネルギー消費が約15%削減された。これにより、最小限のエネルギー損失で一貫して高い充電容量と高性能が維持されるとのこと。
さらに、新しい「予測熱管理(Predictive Thermal Management)」が電気アーキテクチャに統合されている。このシステムは、車両のすべての冷却・加熱回路をリンクさせ、温度、ルート、運転プロファイルといった情報を継続的に分析し、エネルギーの流れを積極的に制御。ナビゲーションデータや交通状況、運転行動までも考慮に入れて冷却・加熱の要件をリアルタイムで計算し、バッテリーを常に最適な温度に保とうとする。
ドライバーは、充電時間の短縮やエネルギー消費の削減、より正確な航続距離予測といったメリットを享受できることになるが、シュタイナー氏は、「機能統合型バッテリー、両面冷却コンセプト、そして予測熱管理は、私たちが技術についていかに包括的に考えているかを実証するものです」と述べ、効率的かつ強力、魅力的な電動モビリティの提供を目指す同社の姿勢を強調した。
400kWの急速充電とワイヤレス充電
ポルシェでは、カイエン・エレクトリックは充電性能においても新たな基準を打ち立てると説明している。高出力充電ステーションでは最大400kWの充電容量に対応し、バッテリー残量10%から80%までを16分未満で充電することが可能とのこと。わずか10分間の充電で、300km以上の航続距離を追加できる。
この高い充電レートは、充電状態(SoC)が約50%に達するまで350~400kWのレベルで一貫して維持される。特筆すべきは、この最適な急速充電曲線が、従来よりも大幅に低い摂氏15度のバッテリー温度からでも達成可能である点だ。これにより、年間を通じて実環境下で非常に堅牢な充電性能を発揮できるという。
さらに、800Vアーキテクチャとバッテリー内の高電圧スイッチの組み合わせにより、一般的な400Vの充電ステーションにおいても、追加のブースターなしで最大200kWでの効率的な充電が可能となる。
ポルシェはまた、2026年から「ポルシェ・ワイヤレスチャージング」システムをカイエン・エレクトリックで初めて提供する計画も明らかにした。これは11 kWの非接触充電システムで、コンパクトなフロアプレートを使用する。非接触ながら、有線のAC充電と比較しても遜色のない最大90%の効率を達成するという。
具体的には、車両がフロアプレートの上に停車するとシステムが自動的に車両を検知し、充電のため車高をわずかに下げ、数センチの隙間を介して誘導充電が行われるという訳である。このプロセスは全自動で安全、かつメンテナンスフリーとされる。My Porscheアプリを通じて充電プロセスの監視や時間設定なども可能。ポルシェは、この技術によって、充電時においても効率性と利便性が両立することを示すとしている。
断片的ながら情報が数度にわたって公開されてきたカイエン・エレクトリックだが、いよいよそのデビューは近づいている。その全貌が明らかになるまで、もう少しの辛抱である。
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