「ジュネーブ・ウォッチ・デイズ 2026」で発表された新作腕時計のなかから、米版『GQ』ウォッチ・エディターがお気に入りの10本を私的にピックアップ。
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様々なブランドが新しい腕時計をリリースする場が増えるのは大歓迎だ。大手ウォッチメイカーの多くは今も毎年4月の「ウォッチズ & ワンダーズ・ジュネーブ(Watches and Wonders Geneva)」のみを新作披露の舞台としているが、2020年に始まったばかりの「ジュネーブ・ウォッチ・デイズ」も瞬く間に見逃せないイベントとなった。
チューダー、ゼニス、ブライトリング、ハミルトンといった名門から、ベルネロンやMB&Fのような独立系の新顔まで、「ジュネーブ・ウォッチ・デイズ」では注目の新作が継続的にお披露目されてきた。2026年のイベントから、米版『GQ』ウォッチ・エディターのキャム・ウルフの目に留まったお気に入りの時計を紹介する。
ジュネーブ・ウォッチ・デイズ 2026で最も心奪われた新作時計10選
ブライトリング「ナビタイマー B09 クロノグラフ 41 マイルス・デイヴィス」
オリス「プロパイロット X ゴンゾ エディション」
ゼニス「クロノマスター ソロ スポーツ」
ブルガリ「オクト フィニッシモ ヴィアネイ・ハルター 限定モデル」
ハミルトン「カーキ フィールド マーフ」
ダニエル・ロート「エクストラ プラット ローズゴールド ギルト」
MB&F マッド・エディションズ「M.A.D.3」
ジラール・ペルゴ「ロレアート フィフティ トゥールビヨン マイクロローター 39」
ベルネロン「ミラージュ ミロワール」
チューダー「ノースフラッグ」
ブライトリング「ナビタイマー B09 クロノグラフ 41 マイルス・デイヴィス」
マイルス・デイヴィスのような、文字通り「クール」を体現した伝説的アーティストが愛用していた時計となれば、文句のつけようがない。ブライトリング「ナビタイマー」は、ひときわ情報量の多いデザインで知られる。文字盤を埋め尽くす数字はすべて、パイロットが飛行中に航法計算を行うためのいわば「計算尺」ともいえる機能に欠かせないものだ。このモデルでは逆パンダの文字盤と、ヴィンテージ風に仕上げた数字によって、その賑やかな印象がいくぶん抑えられている。
オリス「プロパイロット X ゴンゾ エディション」
長らくこの仕事で様々な時計を見てきたせいかもしれないが、オーデマ ピゲが16万ドル(約2400万円)の「ロイヤル オーク」『ブラックパンサー』モデルを作るような時代にあっては、「『マペット・ショー』のゴンゾをモチーフにした1万ドル(国内170万5000円)の時計」と聞いてももはや驚かない。ましてや、このオリス「プロパイロット X」のように、キャラクターへのオマージュがこれほどさりげなく、巧みに取り入れられているとなればなおさらだ。
オリスは、この変わり者のマペットにまつわる様々な要素を拾い上げ、時計の随所にちりばめた。鮮やかなグラデーションがかかった文字盤は彼のショーマンシップへのオマージュであり、唐辛子のディテールは彼のお気に入りのシャツから採られたものだ。そして「10 Great Days(最高の100日間)」というフレーズは、彼の愛称「Gonzo the Great(ゴンゾ・ザ・グレート)」にちなんでいる。一方、彼を直接的に示すイラストは、主ゼンマイが完全に巻き上げられたときにごく控えめに現れるのみとなっている。
ゼニス「クロノマスター ソロ スポーツ」
1969年、ゼニスは世界初の自動巻きクロノグラフ・ムーブメントのひとつとなった「エル・プリメロ」を発表した。その技術はあまりにも名高く、1990年代にはロレックスが「デイトナ」に採用したほどである。それ以来、ゼニスはこの画期的な技術を独創的な方法で様々に発展させてきた。
新作「クロノマスター ソロ スポーツ」にも「エル・プリメロ」が搭載されているが、肝心のクロノグラフ機能は取り払われている。少々逆説的ではあるものの、歴史ある内部機構をより控えめかつ日常的な時計で楽しみたいコレクターに向けた、ゼニスからの明確な歩み寄りといえるだろう。
ブルガリ「オクト フィニッシモ ヴィアネイ・ハルター 限定モデル」
ヴィアネイ・ハルターらしいスチームパンクを彷彿とさせる武骨さと、ブルガリ「オクト フィニッシモ」のエレガントな薄さが融合。4月の「ウォッチズ & ワンダーズ・ジュネーブ」では37mmという小径化を実現しており、2026年は「オクト フィニッシモ」にとってビッグイヤーとなった。
独立系時計師ヴィアネイ・ハルターとコラボレーションしたこのモデルは、まるで予期せぬ形に終わった科学実験の産物のような、膨らみのある奇抜なデザインを持ち味とする彼の作風が存分に発揮されている。その結果、この「オクト フィニッシモ」は、さながらとびきりラグジュアリーな海賊の腕にぴったりとでもいうような雰囲気に仕上がっている。
ハミルトン「カーキ フィールド マーフ」
映画『インターステラー』に着想を得た堅実なモデル「マーフ」に、ハミルトンはより美しい文字盤を用意した。新作には、宇宙に煌めく星々を思わせるブルーのダイヤルを採用。名作SF映画とのつながりをこれまで以上に強く打ち出した。
オリジナルの「マーフ」は、手頃な価格で日常使いしやすい時計を求める人々の間で絶大な支持を獲得してきた。今回の新作は、そんなファンに「マーフ」を手放せなくなる新たな理由を与えてくれる。昼間はオリジナルを着用し、星空が輝く夜にはこちらに着け替えたい。
ダニエル・ロート「エクストラ プラット ローズゴールド ギルト」
今年の「ジュネーブ・ウォッチ・デイズ」でも最大級の色気を放った一本が、タキシードにも似合いそうなこのダニエル・ロート「エクストラ プラット」だ。LVMHが2023年に復活させて以来、同ブランドは無闇にコレクションを拡張することなく、独自のペースを貫いてきた。新たなチームは、ダニエル・ロートを象徴する「エクストラ プラット」のデザインを見事に磨き上げた。新作は一目見ただけで、現在のブランドのラインナップで最も美しいモデルだと感じさせる。
MB&F マッド・エディションズ「M.A.D.3」
独立系時計ブランドが今のように脚光を浴びる遙か前には、ヴィンセント・カラブレーゼがその中心的存在だった。この伝説的な時計師を代表する作品のひとつが「バラディン」である。小さな窓に時を表示し、そこから伸びる矢印が窓とともに文字盤上を回転しながら、外周の目盛りを指して分を示すという独創的な機構を備えている。
MB&Fは、抽選販売される手頃な価格帯の人気ライン「マッド・エディションズ(M.A.D.Editions)」の第3弾で82歳のカラブレーゼとタッグを組み、このデザインを現代的に蘇らせた。もしかしたら「M.A.D.3」は、MB&Fが生み出した時計史上もっともおとなしいデザインかもしれない。
ジラール・ペルゴ「ロレアート フィフティ トゥールビヨン マイクロローター 39」
ジラール・ペルゴ「ロレアート」が、オーデマ ピゲ「ロイヤル オーク」やパテック フィリップ「ノーチラス」、さらに言えばヴァシュロン・コンスタンタン「222」ほどの支持を集めてこなかったのが、私にはずっと不思議だった。
今回の「ロレアート」は、そのようなブレスレット一体型のラグジュアリースポーツウォッチを好む人々が望みそうなものをこれでもかと詰め込んだ一本だ。39mmと絶妙な径のケースには、トゥールビヨンに加えてマイクロローターを搭載。マイクロローターということはつまり、時計内部で回転してゼンマイを巻き上げるおもりを小型化したことで、ムーブメントひいてはケースの薄型化が図られたことを意味する。
トゥールビヨンを支えるのは、ブランドを象徴するブリッジ(受け)である。1867年に誕生した、ジラール・ペルゴの伝説的な「スリー・ブリッジ」デザインを想起させるものだ。ラグスポ界隈のコレクターも、この新作でついに「ロレアート」の魅力に目覚めるかもしれない。
ベルネロン「ミラージュ ミロワール」
昨年、シルヴァン・ベルネロンは自身のブランドのラインナップを拡大し、新たな顔となる「カンティエーム・アニュエル」を加えた。翻って今年は、彼の名を一躍知らしめた「ミラージュ」の新作で再び十八番に立ち返った形だ。
もしベルネロンの時計をどれでもひとつ自分のコレクションに加えられるなら、私は今でもラピスラズリ文字盤の「ミラージュ」を選ぶだろう。しかし、そこに立ちはだかったのがこの「ミロワール」である。オープンワークの文字盤からは、美しくアレンジされたCal.283ムーブメントが覗く。既存の「ミラージュ」のケースバック側から見たCal.233を鏡映しに配置し直し、それを文字盤側に再現したものだ。
その美しい文字盤もさることながら、私にとって真の主役はベルネロンが新たに生み出したソリッドゴールド製の一体型ブレスレットである。もともとデザイン性の高かったモデルだが、これによってうっとりするようなジュエリーへと昇華されている。実は4月にこの時計を実際に着ける機会があったのだが、その出来栄えには圧倒された。
当然のように、その時点ですでに数年先の製造分まで受注が決まっていた。ホワイトゴールドとイエローゴールドの各モデルは価格13万250スイスフラン(約2500万円)で、ベルネロンはそれぞれを年に36本ずつ製造する。
チューダー「ノースフラッグ」
ロレックスの姉妹ブランド、チューダーが2021年に生産終了となった「ノースフラッグ」を復活させる。2015年3月に初の自社製ムーブメントをデビューさせた際の記念碑的なモデルだ。
チューダーはこれまで優れたダイバーズウォッチやクラシックなGMT、タイムレスなドレスウォッチといった好ましいオーソドックスな時計を充実させる一方、アクアブルーやフラミンゴピンクといったサウスビーチを思わせる鮮やかな色のクロノグラフも展開してきた。そんななか、独特のモダンな文字盤を備えた「ノースフラッグ」は、現在のラインナップを特徴づけるヴィンテージ志向の枠を超え、新たな領域を示したように思える。
復活モデルはすっきりとした端正な仕上がりで、今度こそ本格的な人気を獲得しそうな予感がする。
From GQ.COM
By Cam Wolf
Translated and Adapted by Yuzuru Todayama
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