現在位置: carview! > ニュース > スポーツ > 【忘れがたき銘車たち】“職人”が情熱を注いだ『つちやMR2』と土屋春雄さんからのお誘い/番外編

ここから本文です

【忘れがたき銘車たち】“職人”が情熱を注いだ『つちやMR2』と土屋春雄さんからのお誘い/番外編

掲載 更新
【忘れがたき銘車たち】“職人”が情熱を注いだ『つちやMR2』と土屋春雄さんからのお誘い/番外編

 『Racing on』とオートスポーツwebのコラボでお届けしているweb版『Racing on』。これまで『忘れがたき銘車たち』と題して、懐かしのレーシングカーを紹介してきましたが、今回はちょっと番外編。JGTCのGT300クラスで伝説を残したつちやMR2と、そのMR2を手がけた土屋春雄さんと筆者の忘れられない思い出について語ります。

* * * * * *

5年ぶりポール獲得のWedsSport坂東正敬監督「予想よりも速いタイム。土屋春雄さんのパワーがADVANに宿ったのかも」

 2021年4月11日、スーパーGT開幕戦岡山の決勝日でもあったこの日、つちやエンジニアリングの創始者として、数々の名レーシングカーを手がけられきた土屋春雄さんが亡くなられた。

 1971年に産声を上げたつちやエンジニアリングだから、マイナーツーリング、グループA、JTCC、JGTCなど、さまざまなカテゴリーに春雄さんの思い入れのあるマシン、情熱を注いだマシンがあったはず。

 そんなたくさんのレーシングカーのなかでも、特筆すべき伝説的な記録を残し、本誌取材で「今までの最高傑作に近いと思うし、走らせた4年間は本当に楽しかった」と春雄さんが語るのが、1996~1999年までJGTCのGT300クラスを戦ったトヨタMR2(2代目/SW20型)だ。

 MR2は初代、2代目と全日本級のサーキットレースには参戦してこなかった車両だったが1996年、発足から3年目を迎えたJGTC GT300クラスに『imuraya BP MR-2』がエントリー。

 この車両を皮切りに徐々にGT300に参戦するMR2が増えていくことになる。そんななか、同年の第5戦スポーツランドSUGOで、つちやMR2はデビューを果たす。

 つちやエンジニアリングは1996年当時、トヨタ・コロナエクシヴを使ってもうひとつの全日本選手権であるJTCCも戦っていたが、それよりもクルマに対する制約が少なく自由度が高かったことからJGTCへの参戦を決意。

 ベース車両にMR2を選択したのは、GTはFFでは戦いたくなかったという意向があったこと、TRDの協力で中古のテスト車のボディを提供を受けられたことが理由のひとつだった。
 
 その後、提供されたボディをベースにつちやエンジニアリングのノウハウをふんだんに使ってロールケージを組み、余っていたというJTCCのカローラセレスなどで使用していた部品を使い、マシンを製作した。

 完成した車両は他のMR2よりも大幅に軽く、車重は1000kgを切っていた。だが軽く仕上がりすぎたため、バラストを積むところがなくなり、ドアやガラスをノーマルに戻したほどだった。

 迎えたデビュー戦は、マシンの完成がレースウィークの水曜日で、ドライブする織戸学、土屋武士のふたりがトラックを使いマシンを徹夜でサーキットへ運ぶなど慌ただしいものだったが、走り始めるといきなり速さを見せる。

 予選で2番手につけると、決勝でも一時はトップを走るなど快走。最終的には4位フィニッシュだったが、鮮烈なインパクトを与えた初陣となった。1996年はこの1戦のみの参戦だったが、1997年からはシリーズ参戦。第3戦仙台ではそれまでNAだったエンジンをターボへと換装。このラウンドで初優勝を飾った。

 そして1998年、つちやMR2は伝説を残す。鈴木恵一/舘信吾組がドライブしたこの年、決勝が中止となった第2戦富士を除くと、“ほぼ全勝”であるシリーズ6戦中5勝をマークした(TIサーキット英田で行なわれたオールスター戦を入れる7戦6勝)。

 見事ドライバーズ&チームチャンピオンを獲得。唯一、土が付いたのは第5戦もてぎだったが、それもセーフティカー導入のタイミングによる逸勝だった。

 モモコルセ&アペックスカラーになった1999年は、前年ほどの圧勝とはならなかったが、最終戦もてぎまでに1勝を含む3度のポディウムフィニッシュを果たすなどしてタイトル争いを展開。もてぎ戦は子息・土屋武士の駆るザナヴィARTAシルビアに対して1点差のシリーズ2位で迎えたが、3位でフィニッシュし1点差で逆転。2年連続のダブルタイトルを獲得した。

 1996年のスポット参戦を除くと、シーズンを通して参戦した3年で2度のダブルタイトルという戴冠率の高さ、そして1998年のほぼ全勝劇。4年という短い参戦期間ながら、つちやMR2が見せつけた圧倒的強さは、今もGT史に燦然と輝き続けている。

* * * * * *

 ここからは、筆者の短いながらも忘れられない春雄さんとの思い出を記します。『Racing on』誌編集部員の私、実は愛車がSW20型のトヨタMR2です。今回紹介したつちやMR2は私にとって憧れの1台でもありました。

 そんな私が一昨年、弊誌No.503のGT300特集の取材で、つちやエンジニアリングにお邪魔する機会がありました。その日の取材は『モモコルセ・アペックスMR2』の車両撮影。特別な1台を間近で見られるとあって、少し特別な気持ちで愛車に乗り、伺いました。

 その取材の合間、「今どき珍しいのに乗ってるヤツがいるな」と思ってもらえたのか、春雄さんは私のクルマを見るなり、笑顔で「これくらいキレイなやつなら欲しいよな」と運転席に座ったり、車検証のスペックを見たりと、喜んでMR2についてお話いただきました。

 これがご縁で、春雄さんもMR2が少し欲しいと思ったのか(ハッキリ「ほしい」とは言ってませんでしたが……)、市販車の詳細や価格についてなど、私なんかに質問をいただいたりしていたのでした。

 そんななか昨年、春雄さんから「コロナで時間があったからMR2の3Sを新しくイジって組んだんだ。今度、遊びに来て、君のノーマルと比較させてよ」と、なんともありがたい、びっくりなお誘いをいただきました。

 しかし、そのお誘いの直後から新型コロナウイルスの感染者が再び都内で激増。「こんな時にお伺いするのは……」と躊躇している間に結局、叶わなくなってしまいました。後悔、先に立たずですね。

 お誘いいただいたのに本当にごめんなさい。直接お話できたのは短い間でしたが、忘れません。ありがとうございました。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

アルファ・ロメオ・トナーレでジュリエッタ乗りに出会う【新米編集長コラム#9】
アルファ・ロメオ・トナーレでジュリエッタ乗りに出会う【新米編集長コラム#9】
AUTOCAR JAPAN
ル・マン優勝のポルシェ「917K」がなんと550万円!? ホンダエンジンを搭載した子供向けジュニアカーの大きさは実車の7割…おもちゃにしては高すぎる!?
ル・マン優勝のポルシェ「917K」がなんと550万円!? ホンダエンジンを搭載した子供向けジュニアカーの大きさは実車の7割…おもちゃにしては高すぎる!?
Auto Messe Web
ライバルかつ僚友のトヨタWRC育成ふたりがラリージャパン初参戦。お互い「負けたくない」と意識
ライバルかつ僚友のトヨタWRC育成ふたりがラリージャパン初参戦。お互い「負けたくない」と意識
AUTOSPORT web
高性能4シーターオープン、メルセデスAMG『CLE 53カブリオレ』発売、価格は1400万円
高性能4シーターオープン、メルセデスAMG『CLE 53カブリオレ』発売、価格は1400万円
レスポンス
【特許画像リーク!】来年デビュー予定の新型「BMW iX3」のリーク画像を入手!コンセプトモデルのほぼそのまま量産される
【特許画像リーク!】来年デビュー予定の新型「BMW iX3」のリーク画像を入手!コンセプトモデルのほぼそのまま量産される
AutoBild Japan
【中国メーカー初受賞】BYDシール 「Euro Car Body 2024」車体構造デザイン部門で第3位
【中国メーカー初受賞】BYDシール 「Euro Car Body 2024」車体構造デザイン部門で第3位
AUTOCAR JAPAN
アルファロメオ『33ストラダーレ』新型、「ベスト・イン・クラシック2024」の最高賞を受賞
アルファロメオ『33ストラダーレ』新型、「ベスト・イン・クラシック2024」の最高賞を受賞
レスポンス
新車77万円! ホンダ革新的「コンパクトカー」に「安くて広くて最高!」の高評価! 全長3.7mで「フィット」より小さい“街乗り最強”モデルとは! デザイン&乗り心地も大満足
新車77万円! ホンダ革新的「コンパクトカー」に「安くて広くて最高!」の高評価! 全長3.7mで「フィット」より小さい“街乗り最強”モデルとは! デザイン&乗り心地も大満足
くるまのニュース
トヨタ新型「最小級SUV」登場か!? 「ヤリスクロス」より小さい“静音モデル”に「カッコいい!」と反響アリ! 「bZ1X」かもしれない新型車に期待大!
トヨタ新型「最小級SUV」登場か!? 「ヤリスクロス」より小さい“静音モデル”に「カッコいい!」と反響アリ! 「bZ1X」かもしれない新型車に期待大!
くるまのニュース
エバンスが0.7秒リードの接戦。トヨタ2台がパンク、ヌービルに“ノーパワー”トラブル/ラリージャパン デイ2午前
エバンスが0.7秒リードの接戦。トヨタ2台がパンク、ヌービルに“ノーパワー”トラブル/ラリージャパン デイ2午前
AUTOSPORT web
ええええぇついに最後か!? 鮮明なボディカラーに思わず見とれる!!!!!!!!! 爆速2Lターボのホットハッチ[AMG A45 S]の魅力度がマシマシ
ええええぇついに最後か!? 鮮明なボディカラーに思わず見とれる!!!!!!!!! 爆速2Lターボのホットハッチ[AMG A45 S]の魅力度がマシマシ
ベストカーWeb
なんちゃってセレブ、ヒョンデ新型「アイオニック5N」の「ファーストエディション」を激オススメ! 限定50台のうち22台が「マガリガワ クラブ」に集合!
なんちゃってセレブ、ヒョンデ新型「アイオニック5N」の「ファーストエディション」を激オススメ! 限定50台のうち22台が「マガリガワ クラブ」に集合!
Auto Messe Web
「ノーマルタイヤで立ち往生」に国交省ブチギレ!?「行政処分の対象です」2年連続で大量発生…「スタックの7割が夏用タイヤ」今年も緊急警告
「ノーマルタイヤで立ち往生」に国交省ブチギレ!?「行政処分の対象です」2年連続で大量発生…「スタックの7割が夏用タイヤ」今年も緊急警告
くるまのニュース
いやあ、クソ暑かったよ! ラスベガスF1初開催を知るエディ・チーバーに訊く。悪名高き“駐車場コース”でのレースは「悪い思い出ではない」
いやあ、クソ暑かったよ! ラスベガスF1初開催を知るエディ・チーバーに訊く。悪名高き“駐車場コース”でのレースは「悪い思い出ではない」
motorsport.com 日本版
「AI EV時代のトヨタ」めざすファラデー・フューチャー、新型EV『FX』最初の試作車が完成
「AI EV時代のトヨタ」めざすファラデー・フューチャー、新型EV『FX』最初の試作車が完成
レスポンス
待ってろスイスポ!!! FF1.3Lターボのピリ辛ボーイズレーサー[新型GRスターレット]は若者にも手が出しやすい250万円で登場か!?
待ってろスイスポ!!! FF1.3Lターボのピリ辛ボーイズレーサー[新型GRスターレット]は若者にも手が出しやすい250万円で登場か!?
ベストカーWeb
Team HRC、S耐の2年計画を完遂。初期メンバーの武藤「楽しい環境がいつまでも続けばいいな」
Team HRC、S耐の2年計画を完遂。初期メンバーの武藤「楽しい環境がいつまでも続けばいいな」
AUTOSPORT web
F1関係者への入国拒否が続くラスベガス。角田裕毅も足止め「危うく帰国させられるところだった。来られてラッキー」
F1関係者への入国拒否が続くラスベガス。角田裕毅も足止め「危うく帰国させられるところだった。来られてラッキー」
AUTOSPORT web

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村