『ラブ・イン・ザ・ビッグシティ』、『脱走』、『ハルビン』など6月から7月にかけて話題の韓国映画が続々と日本公開される。ここでは6月20日から公開される2本のリメイク作品『秘顔-ひがん-』と『プロット 殺人設計者』の見どころを篠儀直子が解説する。
韓国映画の公開ラッシュ
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6月・7月も注目の韓国映画が次々公開される。興味深いのは、6月20日に外国映画のリメイク作が2本同時に公開されることだ。もちろんどちらもオリジナルにはない側面が追加されていて、その側面には、現在の韓国映画全般のこだわりがある意味表われているようでもある。2本を順に紹介していこう。
『秘顔-ひがん-』
R指定映画(19歳未満鑑賞不可の映画)として、韓国で5年ぶりに観客動員数100万人突破を記録した作品。大胆な性描写が話題を集めたことは間違いないが、心理スリラーとしての面白さがやはりヒットの決め手だろう。
チェリストのソヨン(チョ・ヨジョン)がある日突然失踪する。ソヨンの婚約者で、彼女の豪邸で同居していた指揮者のソンジン(ソン・スンホン)は、悲嘆にくれながらも、代理のチェリスト候補のミジュ(パク・ジヒョン)を面接する。ソヨンの代わりなどいないと思っていたソンジンだが、やがてミジュと情熱的に愛し合うように。ある夜、いつものようにソンジン(とソヨン)の家でシャワーを浴びようとしたミジュが悲鳴を上げる。急に熱湯が出てきたというのだ。何かがおかしい。実はソヨンは、ふたりのすぐ近くにいたのだ──!
通常であれば、ソヨンの居場所に気づいたミジュが、自身が愛を失うのと引き換えにソヨンを救うべきかで悩む展開になるところだ。実際、この映画のリメイク元であるコロンビア・スペインの合作映画『ヒドゥン・フェイス』(2011)はそのような展開になる(『秘顔-ひがん-』の韓国語の原題はそのまま「ヒドゥン・フェイス」)。また、『秘顔-ひがん-』(以下『秘顔』)に先立って製作された、インドやメキシコでのリメイクも同じ筋立てになっている。
しかし『秘顔』はちょっと違う。突然お湯が出てきて悲鳴を上げたミジュは、駆けつけたソンジンに「何でもないわ」と笑顔を見せて、何かを隠すようにドアを閉めてしまう。そう、彼女は何か知っているのだ(そしてみなさん、チョ・ヨジョンといえば、『パラサイト 半地下の家族』(2019) ですよね?)。
刻々と変わる「秘密の顔」ここから先、映画はだんだん時間をさかのぼり、この3人の因縁と愛憎を明らかにしていく。パワーバランスは物語が進むにつれてくるくると変わり、それとともに3人は、互いの、あるいは自分自身も知らなかった「秘密の顔」を知ることになるだろう。
『秘顔』と同日に公開される韓国映画には、次に紹介する『プロット』のほかにもうひとつ『脱走』があるが、『秘顔』にも『脱走』にも、恵まれた境遇に生まれた者の、愛への渇望と支配欲とが描かれている。『脱走』の場合、支配されていた側はそこからの脱出を目指し、支配する側に対しても自由になれと説くのだが、はたして『秘顔』ではどうなるのか。また『秘顔』は、エロティックな描写があるという面でも人物関係の面でも、パク・チャヌク監督の『お嬢さん』(2016)と共通するところがあるのだが、では『お嬢さん』同様、家父長的・帝国主義的抑圧への抵抗へと向かうのかどうか。
『秘顔』の作り手たちの興味はどうやら、支配と被支配、共依存等の分析にあるようだけれど、まずは予測不能な展開を楽しんでほしい。空間のコントラストを印象づける美術、照明設計の力も借りて、3人の俳優たちが見ごたえある心理表現を展開する。
『秘顔-ひがん-』『プロット 殺人設計者』
事故に見せかけてターゲットの殺害を行なう“設計者”のチームのリーダー、ヨンイル(カン・ドンウォン)は、かつての仲間、チャンヌン(イ・ジョンソク)が亡くなったのと酷似した事故の存在を知り、“清掃人”と呼ばれる同業者が動き出したことを確信する。疑惑のただなかにある女性、チュ・ヨンソン(チョン・ウンチェ)から、次期検事総長候補である父親の殺害を依頼されるが、決行時、想定外の事態が発生。チームのなかに“清掃人”と通じている裏切者がいるのか、“清掃人”とは誰なのか。誰も信用できないなか、ヨンイルは命の危険を感じながら単独で調査を進めていく──。
こちらは香港ノワール『アクシデント/意外』(2009)のリメイク。ちなみに『アクシデント』の製作は名匠ジョニー・トー、監督・主演はいまをときめく『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』(2024)の、ソイ・チェンとルイス・クーの顔合わせだった。香港の大スター、ルイス・クーが演じた役を、こちらでは韓国の大スター、カン・ドンウォンが演じる。ストーリーの大筋は同じで、そのまま引き継がれている細部もある。
スタイリッシュな魅力謎解きの要素もあるけれど、『秘顔』同様、基本的には心理スリラー。印象的なのは、すべての要素が都会的なクールさ、スタイリッシュさを目指している点だ。現代韓国都市が魅力的に撮られているのはもちろんのこと、とりわけ次期検事総長候補暗殺シーンと、それに続く追跡のシークエンスには、はっとするようなドラマチックな画面が連続する。
ヨンイルは「少しソシオパスのよう」だと語るカン・ドンウォンが、このミステリアスな人物の性格と心理をどのように表現しているかも見どころ。物語内に跋扈する「陰謀論」のテーマが、結末とどうからむかにも注目されたい。音楽を担当したのは『1987、ある闘いの真実』(2017)、『エクストリーム・ジョブ』(2019)、『犯罪都市 ROUND UP』(2022)、『破墓/パミョ』(2024)など、数々のヒット作・重要作を手掛けたキム・テソン。機械音やシンセサイザーを用いた不穏な音程が、ヨンイルの不安定な心情を見事に描き、没入感を高めている。
『プロット 殺人設計者』著者プロフィール:篠儀直子(しのぎ なおこ)
翻訳者。映画批評も手がける。翻訳書は『フレッド・アステア自伝』『エドワード・ヤン』(以上青土社)『ウェス・アンダーソンの世界 グランド・ブダペスト・ホテル』(DU BOOKS)『SF映画のタイポグラフィとデザイン』(フィルムアート社)『切り裂きジャックに殺されたのは誰か』(青土社)など。
編集・遠藤加奈(GQ)
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