青森ねぶた祭期間中のフル稼働
第三セクターの青い森鉄道(青森県青森市)は、青森市で2026年8月2日~7日に開催される青森ねぶた祭に合わせ、臨時列車を増発する。
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期間中は、近距離区間を中心に普通列車・快速列車を増やすほか、2025年に続き、必ず座れる有料着席の特別快速列車を青森~八戸間に設定する。さらに、ネット予約に対応したライナーチケットレス乗車整理券も発売する。
また同社では、八戸市で定期的に開かれる館鼻岸壁朝市の開催日に合わせ、早朝から特別快速列車を設定しているほか、8月1日・2日には八戸三社大祭に合わせた臨時列車を運転する。
さらに冬季にも、沿線のリゾート施設と協力し、酒のあで雪見列車を10年前から運転している。車内では、県内各地域の郷土料理を詰め込んだあでセットと厳選した地酒を提供し、地元のお囃子団体による生演奏も披露するなど、季節を彩る催しとして定着してきた。
いずれも特定の季節や開催日に限られる需要だが、同社はこうした利用に対し、観光や催し向けの特別車両ではなく、普段使いの一般車両を活用した列車の増発で対応している。
見た目に大きな話題を呼ぶ車両ではないため、目立ちにくい取り組みではある。しかし、例えば青森ねぶた祭の期間中は1日最大13本を増発し、合計68本の増発を予定している。車両数や人員が限られる第三セクター鉄道としては、持てる力を最大限に使う運行となる。
ある意味で、同社が持つ余裕の大きさを感じさせる増発である。
線路の余力と逼迫する車両・人員
では、同社の「余力の大きさ」はどこから生まれるのだろうか。
青い森鉄道は、東北新幹線の延伸開業に合わせて並行在来線を経営分離する形で開業した。2002(平成14)年12月1日の盛岡~八戸間の延伸開業時には、目時~八戸間25.9kmを引き継ぎ、2010年12月4日の八戸~新青森間の延伸開業時には、八戸~青森間96.0kmを開業した。
全区間は東北本線の該当区間を受け継いだもので、全線複線電化となっている。線路の形もおおむね良く、在来線としては高い水準の路線である。
ただし、JR時代に大きな収入源だった日中の特急列車はすべて廃止された。同社が直接運行する列車は普通列車・快速列車のみとなり、ほかの収入源はJR貨物から受け取る線路使用料による貨物列車、同じくJR東日本から線路使用料を受け取る夜行列車のみとなっていた(2015年に定期列車は廃止)。
少なくとも線路については、列車を増やす余地が十分に残されていたといえる。むしろ、ホームの延長などを含め、東北本線時代に整えられた大きな設備規模が、維持費の負担につながっていた面もある。
一方で、車両や人員についてはどうだろうか。
同社が発表した第25期(2025年4月~2026年3月)の事業報告によると、保有車両は701系電車18両(9ユニット)、703系電車2両(1ユニット)の計20両(10ユニット)である。これとは別に、703系電車2両(1ユニット)をリース契約で借り受けている。
このユニット数で、1日90本の列車を120kmを超える路線で運行していることを考えると、余裕のある運用とはいいにくい。
人員についても同社に限った話ではないが、少子高齢化により駅員や運転士の不足が心配されている。特に同社では、JRからの出向社員の高齢化が進んでおり、若手人材の育成が急がれている。
鉄道の倍以上を稼ぐ指定管理事業
同社の「余力の大きさ」は、線路や車両、人員の余裕だけではなく、むしろ特有の財務体質から見ることができる。
同社が前述の事業報告で公表した同期の損益計算書によると、鉄道事業の営業収益は24億8900万円、営業費は24億5300万円で、3600万円の黒字を計上した。
ただし、この数字だけで実態を判断することはできない。
注目されるのは、鉄道事業とは別に計上している指定管理事業の数字である。こちらは営業収益が54億8400万円、営業費は54億7900万円で、430万円の黒字となっている。
利益率は低いものの、指定管理事業では鉄道事業の倍以上となる営業収益を上げている。
総務省の資料によると、指定管理者制度は、公の施設の管理に民間事業者などが持つ知識や経験を生かし、多様化する住民の求めに効果的かつ効率的に応えることを目的とした制度である。
ここでいう公の施設には、体育館、博物館、老人福祉施設、公立病院、都市公園などが例として挙げられており、基本的には利益を目的とする施設ではない。
では、同社が収益を上げている指定管理事業とは何なのか。
前述の事業報告によると、鉄道施設を所有する青森県から指定管理者の指定を受け、線路などの鉄道施設の保守管理を行っているとしている。
そもそも、経営分離された区間では、線路などの施設を青森県が第三種鉄道事業者として保有し、同社は第二種鉄道事業者として、青森県に代わって駅施設や線路の管理と使用を担う上下分離方式を、日本の第三セクター鉄道で初めて採用した。
つまり、青森県は対象区間の線路などの鉄道設備を公の施設として扱い、その維持や管理にかかる費用を負担している形である。
補助金でなく指定管理という選択
一方、同社は第三種鉄道事業者である青森県に対し、鉄道事業の営業費の中から線路使用料を支払っている。
前述の事業報告によると、その金額は減免措置を受けた状態で2億5566万円である。同社は青森県に2億円弱の使用料を支払い、反対に青森県から54億円超の指定管理業務を受けていることになる。
この差額となる50億円超は、青森県から同社への実質的な支援金と見ることもできる。また、線路使用料の減額分についても、実質的な支援と捉えることができる。
ただし、損益計算書上では、あくまで指定管理事業の営業収益として計上されており、減免額についても営業費の一部として扱われている。特別損益として支援金が計上されているわけではない。
やや古い資料となるが、前述の総務省の資料によると、2021年4月1日時点で指定管理者制度が導入されている施設数は7万7537施設である。
施設の種類は、基盤施設、スポーツ施設、文教施設、社会福祉施設、産業振興施設など幅広いが、鉄道についての記載はない。
指定管理制度全体については、利点や課題などさまざまな意見がある。ここでは詳しく触れないが、青森県は2024年12月、2025年4月1日~2028年3月31日の指定管理者として同社を指定している(第6期目)。
この決定は県議会の議決を経たものであり、県民の判断を反映したものといえる。仮に50億円の指定管理料が実質的な支援金であったとしても、青森県東部を走る重要な鉄道路線を維持する利点の方が大きいと判断されたとも受け取れる。
各自治体が負担の増加をどう考えるかにもよるが、全国各地で課題となっているローカル線の維持については、その是非は別として、支援金ではなく指定管理制度を活用する方法も選択肢のひとつになりそうだ。(銀河鉄道世代(フリーライター))
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