ホンダはN-BOXを始めとする軽自動車から、大型セダンのレジェンド、スーパースポーツカーのNSXまでを用意する総合自動車メーカーだ。
しかし、車種ごとの販売格差が激しい。2020年4~9月のデータを見ると、一部の軽自動車とコンパクトな車種は絶好調に売れている。
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N-BOXは、2020年度上半期の売れ行きは月平均で1万5102台、N-WGNは5053台、フィットは8419台、フリードは5399台になる。この4車種の販売台数を合計すると、2020年度上半期に国内で売られたホンダ車の72%に達する。
ホンダにはこのほかにも、シビック、インサイト、アコード、ヴェゼル、ステップワゴン、オデッセイなど、数多くの車種を用意する。それはすべて「残りの28%」に片付けられてしまう。ホンダの国内販売は、一部の人気車によって支えられているわけだ。
好調に売れるN-BOXやフィットは、多くのユーザーが購入して愛用している以上、優れた商品と考えられる。しかしほかの車種が、売れていないから劣った商品とは決めつけられない。人気の乏しいカテゴリーに属していると、良いクルマでも売れ行きを伸ばすのは難しい。
また、シビックやステップワゴンは、商品力は高いのに、N-BOXやフィットなどに販売力を奪われて売れ行きを低迷させている面もある。
そこで「売れていないけれど優れたホンダ車」を取り上げて、特徴と売れない理由をガイドしたい。
文/渡辺陽一郎、写真/HONDA
【画像ギャラリー】ホンダの売れてないクルマたち……いいクルマなのになぜ売れない!? 優れた特徴と売れない理由を探る
■安定性と軽快感をあわせ持ち運転が楽しくなる
○シビック/月平均登録台数:407台
安定性と軽快感があわせて楽しめるホンダ シビック。充実装備に起因した価格の高さがネックか
●優れた特徴:スポーツ性の高いタイプRも選べるが、1.5Lターボを搭載するノーマルタイプのグレードも実用回転域の駆動力を充分に確保して運転しやすい。トランスミッションは、CVT(無段変速AT)に加えて6速MTも選べる。
走行安定性も高い。操舵に対する反応の仕方が自然で、落ち着いた走りが特徴だ。その一方で適度な軽快感も併せ持ち、運転する楽しさを満喫できる。
●売れない理由:衝突被害軽減ブレーキなどの各種機能を充実させたこともあり、価格は1.5Lターボのハッチバックでも294万8000円に達する。マツダ3などを含めて、今のミドルサイズハッチバックは売れ行きを伸ばすのが難しい。300万円前後の価格帯は、SUVとミニバンで占められる。
また、シビックは国内販売を中断していた時期があり、相当数のユーザーが離れてしまった。従来型からの乗り替え需要が乏しいことも、販売不振の原因だ。しかも好調に売れないことを理由にセダンを先ごろ廃止したから、さらに落ち込んでいる。廃止する前に、売れ行きを伸ばす対策を講じるべきだった。
■燃費効率にすぐれたミドルサイズセダン
○インサイト/月平均登録台数:236台
セダンならではの快適な乗り心地が味わえるホンダ インサイト。SUV全盛の今は苦戦を強いられている
●優れた特徴:1.5Lのe:HEV(ハイブリッド)を搭載するミドルサイズセダンで、街中と高速道路を使って実用燃費を試したところ、普通の走り方で28km/Lに達した。燃費効率が優れ、加速も滑らかだ。スポーティではないが、乗り心地も快適で長距離の移動に適する。
フロントマスクなどの外観デザイン、インパネ周辺の質も高い。「LX」が355万5000円と価格は高いが、カーナビなども標準装着される。シビックと装備の違いを補正して価格を比べると、実質25~30万円の上乗せで、1.5Lターボがe:HEVにグレードアップされている。
●売れない理由:e:HEVでは、エンジンは主に発電機を作動させて駆動はモーターが受け持つ。高効率なハイブリッドシステムや充実した装備を採用しながら、インサイトは買い得だ。
しかし、300万円を超える価格だけを見ると、割高感が生じてしまう。カーナビはオプションにして価格を下げる方が、数多く売るためには有利だ。また大人しい雰囲気のミドルサイズセダンは、流行からはずれて売れ行きを伸ばすのは難しい。注目を集める華やかなグレードも必要だろう。
■運転すると分かる上質な乗り心地
○アコード/月平均登録台数:295台
運転すると上質感を実感できるホンダ アコード。リアウインドウを寝かせたモッタリした外観がネックか
●優れた特徴:操舵感は鈍く、カーブを曲がる時にはボディの揺り返しが少し大きい。その代わり乗り心地は快適だ。e:HEVの制御も進化して、モーター駆動を基本としながら、アクセル操作とエンジン回転数をある程度同期させた。後席を含めて居住性も良好だ。運転すると上質なクルマだと分かる。
●売れない理由:リアウインドウを寝かせた外観は、5ドアハッチバックのように見える。このような外観のLサイズセダンは、日本では売りにくい。
さらに現行アコードの発売は、日本では2020年2月だが、北米では2017年7月に発表されていた。日本では北米の新型発表から2年半にわたり、安全装備などの劣る旧型を売っていた。
つまりアコードにとって日本はオマケの市場だから、売れ行きが伸び悩んでも仕方がない。販売にも力が入らず、メーカーも諦めているように見える。
■ゆったり乗れて安定性も良好なミニバン
○オデッセイ/月平均登録台数:679台
ミニバンには珍しい低重心と高安定性をもつホンダ オデッセイ。外観や視界など、情緒的な部分が敬遠の理由か
●優れた特徴:オデッセイは床を平らに仕上げながら、その位置を低く抑えた。全高は1700mmを下まわるが、室内高は充分に確保されている。床が低いために乗降性が優れ、低重心になるから走行安定性も良好だ。
3列目のシートは、床と座面の間隔が適度で、着座姿勢も自然な印象に仕上げた。足を前方へ投げ出すアルファード&ヴェルファイアよりも、快適に座れる。低重心で走りが良く、なおかつ多人数乗車時の居住性も優秀だ。快適性と低燃費を両立させたe:HEVも選べる。
●売れない理由:ミニバン開発の難しさは、機能の優れたクルマが好調に売れるとは限らないことだ。アルファード&ヴェルファイアに比べると、全高が低いために外観の存在感が乏しい。
床が低いので乗員の視線も下がり、車内からの見晴らしが良くない。実用的な機能は優れているのに、情緒的な理由で販売が伸び悩む。
■走行性能と使い勝手を両立した優良車
○ステップワゴン/月平均登録台数:2602台
長所も短所も前出のオデッセイと似ているホンダ ステップワゴン。フリードの好調さでユーザーが奪われている面もある
●優れた特徴:オデッセイと同様、低床設計によって、乗降性や走行安定性が優れている。加速感も静かで滑らかだ。e:HEVも採用され、ライバルのセレナやヴォクシー系3姉妹車と比較して、走行性能が勝っている。
3列目のシートは床下に格納されるので、スッキリと広い荷室に変更できる。リアゲートには縦長のサブドアが内蔵され、狭い場所でも開閉しやすい。3列目の左側を床下に格納しておけば、サブドアを使って車内の最後部から乗り降りすることも可能だ。
●売れない理由:背の高いミニバンには派手なフロントマスクが求められるが、ステップワゴンは必ず大人しい顔立ちで登場する。その後、マイナーチェンジで派手に変更する繰り返しだ。「派手な顔は避けたい」と述べる開発者の意図も分かるが、登場時点のインパクトが乏しく、その後に変更しても販売は伸びない。
シートアレンジは実用的だが、注目される特徴が乏しい。3列目シートの座面は、2列目に比べて奥行寸法が75mm短い。従って3列目に座ると、大腿部に違和感が生じる。コンパクトミニバンのフリードが好調に売れて、ステップワゴンのユーザーを奪っている面もある。
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みんなのコメント
シビック、インサイト、アコードは海外市場を狙って作ってるので、所得の上がらない日本では割高ですね。