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「意外な層」に売れている米国スバル 小さな町で見た自由の音色 英国記者の視点

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「意外な層」に売れている米国スバル 小さな町で見た自由の音色 英国記者の視点

音楽を愛する小さな町

かつて伝説の音楽フェスティバルが開催されたニューヨーク州のある町は、スバルの4WDワゴンが大好きだ。その理由は、巧みなマーケティングにある。

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「ここはタイダイ染めのような場所よ」

ニューヨーク州北部にあるガソリンスタンドのカフェカウンターにいる女性に、ウッドストックがどんなところか尋ねると、こんな答えが返ってきた。今回の旅の目的地ではなく、たまたま立ち寄っただけだった。

筆者(AUTOCARの英国人記者)は、キャッツキル山地に近い趣のある町だとしか思っていなかったが、彼女の説明を聞いて、そこは “あの” ウッドストック――1960年代の有名なロックフェスティバルで「3日間の平和と音楽」を掲げ、世界中に文化的影響を与えた地だと気づいた。

実際には、フェスティバルは56年前にウッドストックから100km離れた場所で開催されたにもかかわらず、町は明らかに「平和と愛」の雰囲気を残している。

店員は間違っていなかった。ニューヨーク州の田舎でトランプの旗や看板を見かけるのは普通のことだ。なぜなら、ニューヨーク州で最もリベラルな地域は大都市(ニューヨーク市など)であり、米国人は英国人よりも政治的な意見を声高に表明する傾向があるからだ。時折見られる「自由民主党勝利」というステッカーが、英国人の最も騒がしい表現だ。しかし、ウッドストックの近くでは共和党の看板はほとんど見かけない。

「大統領は変わっても、ウータンは永遠だ(Presidents come and go, but Wu-Tang is forever)」と書かれた看板がある。「米国を再びグルーヴィーに(Make America groovy again)」と、CNDのシンボルが入ったTシャツが店の窓に飾られている。(翻訳者注:ウータンはおそらくヒップホップグループのウータン・クランのことと思われます。)

都市部を除けば、ウッドストックはニューヨーク州で最もリベラルな地域の1つだ。2024年の大統領選挙では58%が民主党に投票した。

そして、ウッドストックは米国にとって、平和と愛のパロディのような場所だ。この日曜日の午後、ベジタリアンカフェとハーブ療法の店に囲まれた中央広場では、ドラムサークル(打楽器を使った即興演奏)が行われていた。

そして、もう1つ気づいたことがある。スバルだ。スバルがたくさん、本当にたくさん走っている。筆者が今まで見たどの場所よりも、はるかに多い。ある駐車場では(科学的に厳密な調査ではないことは承知している)、クルマの20%近くがスバルだった。

なぜ「リベラル」にウケるのか?

これはまったくの偶然ではない。1990年代、現地法人スバル・オブ・アメリカは、自社のクルマの購入者を調査したところ、顧客として想定していた退役軍人、アウトドア派、教師などの層に加え、予想外の層もいることがわかった。レズビアンだ。

スバルとマーケティング会社が詳しく調べたところ、納得のいく理由にたどり着いた。この層は、収入が比較的安定しており、子供のいるケースも少ない、アウトドア好きの女性たちだった。そんな彼女たちが、スバル車を購入していたのだ。

スバル・オブ・アメリカは、保守的な地域では反発を受けるかもしれないが、この層を対象とした広告を打ち出し、カントリーワゴンとしてのクルマの良さをアピールするとともに、さりげなく売り込むべきだと考えた。

ある広告では、「外に出ろ、戻ってくるな(Get out, and stay out)」と謳った。別の広告では、「これは選択ではない、わたし達の本質だ(It’s not a choice, it’s the way we’re built)」と掲げ、4WDの駆動システムをアピールした。2004年のフォレスターの広告は安全性をテーマに掲げながら、「少なくとも当社は “プライオリティ” を正しく理解している(At least we’ve got our “priorities” straight)」と主張した。

英国部門のスバルUKが、彼女ができない若い男性にインプレッサ・ターボを売り込んでいた一方、スバル・オブ・アメリカは彼女ができる女性にアウトバックを販売していた。

同社はこうした広告キャンペーンが賛否両論を招く可能性があると考えていたが、その懸念は的中した。ターゲット層かどうかに関わらず、多くの消費者が広告を楽しんだ一方で、保守派からスバル車のボイコットを示唆する苦情の手紙も届いた。ただし、調査結果を見る限り、そのような手紙を送った人は、これまでスバルを購入したことがない人だろう。

そして、スバルは広告によって2000年代前後の米国での評判を高め、現在もそのポジションを維持している。リベラルな人はスバルを購入する可能性が高く、保守的な人はスバルに反対する傾向がある。

世論調査会社ユーガブの2024年の派閥別ブランドランキングによると、「リベラルな米国人の28%(および同性愛者の女性の33%) がスバル車の購入を検討しているのに対し、同じ考えを持つ保守的な米国人は16%しかいない」という。スバルのこの12ポイントという差は全自動車メーカー中トップで、ホンダ(10ポイント差)やフォルクスワーゲン(8ポイント差)を上回っている。

保守派が特に好むブランドであるフォード、シボレー、GMCについては、その差は小さい。例えば、保守派の29%がフォード車の購入を検討する一方で、リベラル派の23%が同じく購入を検討している。

もちろん、米国北東部でスバルを所有する実用的な理由もある。この地域は冬になると雪が多く降り、本格的な四輪駆動システムが求められるからだ。

しかし、米国の小さな町のほとんどがデトロイトのV8エンジンの轟音で賑わう中、ウッドストックのボンゴの音色にスバルのオールシーズンタイヤの音が静かに伴っているのは、実用的な理由だけでは説明できない。

文:AUTOCAR JAPAN AUTOCAR JAPAN
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みんなのコメント

1件
  • ねこにごはん
    →1990年代

    30年も前の調査結果がなんの役に立つ。ちゃんした仕事をしろ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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