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「サイバートラック乗りたいぞ」じゃあ並行輸入……とはいかない! エンジン車と違ってEVの並行輸入に存在する高いハードルとは

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「サイバートラック乗りたいぞ」じゃあ並行輸入……とはいかない! エンジン車と違ってEVの並行輸入に存在する高いハードルとは

世界中で魅力的なEVが登場

電気自動車(EV)の時代が到来し、世界中で多種多様なEVが続々と発売されている。しかしその一方で、日本市場に導入されていないモデルも数多く存在する。従来の内燃機関(ICE)車であれば、並行輸入で海外モデルに乗る愛好家も少なくなかったが、EVの場合、並行輸入車をほとんど見かけない。なぜEVでは並行輸入が進まないのか、その理由と課題について探ってみよう。

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<魅力的な海外EVモデルの登場>

2024年3月、中国の家電大手シャオミが初のEVセダン「SU7」を発表した。SU7は、最高出力673馬力、最大トルク838Nmという圧倒的なパワーを誇り、0-100km/h加速は2.78秒という驚異的な性能をもつ。さらに、最大航続距離は800km(中国のCLTC基準)に達し、急速充電では15分で510kmの航続距離を回復できるという。また、同12月、クロスオーバーSUV「YU7」を公開した。「YU7」は2025年に発売されるとしている。シャオミの高い性能と先進的なデザインをもったEVは、多くの自動車愛好家たちから注目されている。

一方、アメリカで注目を集めているのがテスラのサイバートラックだ。独特な未来的デザインと、最大1万1000ポンド(約5000kg)の牽引能力、最上位モデル(Cyberbeast)では0-60mph(約96km/h)加速が2.6秒という性能で、多くの日本人ドライバーたちも深い興味をもって見つめている。

しかし、これらの魅力的なEVモデルは、現時点で日本での正規販売の予定がない。

<EVの並行輸入を阻む高いハードル>

ICE車の場合、並行輸入は比較的容易だった。しかし、EVの並行輸入には多くの障壁が存在する。まず、EV並行輸入の最大のハードルは充電インフラの互換性にある。日本国内の急速充電器の約80%が「CHAdeMO」規格に対応しているが、欧米や中国のEVの多くは「CCS」や「GB/T」を採用している。たとえ変換アダプタを使用したとしても、充電速度が50%以上低下する事例もあり、実用性が損なわれる。テスラのスーパーチャージャーに至っては自社ネットワークに依存するため、並行輸入車は原則利用不可能だ。さらに、家庭用充電設備の電圧差(日本は100V/200V、海外は220-240Vが主流)も無視できず、充電効率の低下や機器劣化のリスクがつきまとう。

また、EVのバッテリーは高電圧・大容量であり、安全基準への適合が極めて重要だ。日本の厳格な車両安全基準に適合されるには多額の費用と手続きがかかる。さらに、EVのソフトウェアアップデートや遠隔診断などのコネクテッド機能が、日本の通信規格や法規制に対応していない可能性もある。たとえば、自動運転機能の地図データ更新が地域制限にかかる可能性も高く、セキュリティアップデートが適用されないまま走行する危険性も無視できない。

日本のメーカーもEVモデルの開発を加速

テスラのサイバートラックの場合、同社がほかのモデルを販売しているので、充電設備やアップデートのハードルはそれほど高くないと考えられるが、その規格外の大きなサイズや形状など、日本の保安基準に合致していないことが輸入を困難にしている。

保証やアフターサービスの問題も大きい。ICE車の場合、並行輸入業者が独自に保証を提供する場合もあるが、EVでは限定的だ。かつメーカー純正部品の調達や専門的な修理に対応できるかどうかも不透明である。とくに、バッテリーの交換や修理には高度な技術と設備が必要であり、並行輸入業者がこれらに対応できるケースは限られている。

<日本のEV市場の課題と展望>

日本のEV市場は、世界的に見ても普及が遅れている。経済産業省の統計によると、2023年の日本の新車販売に占めるEVの割合はわずか2.0%程度に留まっている。これは、充電インフラの整備不足や、日本メーカーのEVラインアップの少なさなどが要因として挙げられる。

しかし、状況は徐々に変化しつつある。政府は2035年までに新車販売の100%を電動車(EV、PHEV、HEV、FCEV)にする目標を掲げており、充電インフラの整備や購入補助金の拡充などの施策を進めている。また、日本の自動車メーカーも、EVの開発と投入を加速させている。

海外の魅力的なEVを日本で見かける機会が少ないのは残念だが、並行輸入のハードルが高い以上、正規輸入の拡大に期待を寄せるしかない。既存のICE海外メーカーも魅力的なEVを発売しはじめているが、BYDやテスラのように、独自の販売網を構築して日本市場に参入する海外メーカーが増えれば、消費者の選択肢も広がるだろう。

他方、日本の自動車メーカーにとっては、海外の先進的なEVに対抗できる魅力的な製品を開発し、グローバル市場で競争力を高めることが急務となっている。日本のEV市場が活性化し、世界中の優れたEVが日本の道路を走る日が来ることを期待したい。

このようにEVの並行輸入がガソリン車ほど普及しない背景には、単にコストの問題だけではなく、充電規格という物理的制約、法規制による技術的障壁、そしてサポートネットワークの欠如という三位一体の課題が立ちはだかっている。自動車産業が国ごとの規格戦略を推し進める限り、個人が自由に「世界のEV」を選ぶことは容易ではない。この現実は、EV時代の新たな課題として認識されるべきだろう。

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みんなのコメント

11件
  • セクシーハムスター
    輸入だけならできるでしょ
    公道を走れるかは知らんけど
    サーキットの走行会にでも持ち込んで恥をか・・・注目を集めればよいよ
    アメリカでは、ピックアップトラックは
    トラック扱いになることで税金を減免されてる(庶民向け)カテゴリなのに
    どうみても庶民向けに作られたとは思えない
    トラックには乗用車のような厳しい衝突安全性能基準(歩行者保護含む)がないから
    ピックアップトラック規格に逃げた印象
  • luv********
    旧MiniのMokeEVが欲しい
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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