日本の高級車の代名詞であるトヨタ・クラウン。その圧倒的な「風格」と、のちの「クラウン帝国」の礎を築いたのは、アメリカ車の流行を取り入れつつも日本的な繊細さを融合させた2代目(RS41型)だった。王冠のバッジや豪華なグリル、ユニークな室内装備などの意匠面はもちろんのこと、技術面でも大きな進化を遂げている。トヨタ初のOHC直列6気筒エンジンや完全自動化されたATの採用、剛性を高めたX形フレームの導入など、車両の近代化が一気に進んだ時代であった。
【写真11枚】→「高級車たる不動の地位の礎を築き上げた記念碑的なモデル」2代目トヨペット・クラウン(RS41型)
●文:月刊自家用車編集部
―― 高級車というカテゴリーを確固たるものにし、現代に至るまで脈々と受け継がれる「クラウンならではの風格」を確立した2代目クラウン
2代目クラウンは、高級車たる不動の地位の礎を築き上げた記念碑的なモデルであった
日本の自動車史において、高級車というカテゴリーを確固たるものにし、現代に至るまで脈々と受け継がれる「クラウンならではの風格」を確立したのは、紛れもなく2代目クラウン(RS41)である。
初代モデルが日本の自動車産業の夜明けを告げるエポックメイキングな存在であったとすれば、この2代目は、クラウンが独自のアイデンティティを確立し、高級車たる不動の地位の礎を築き上げた記念碑的なモデルだ。
2代目クラウンは、当時の日本の高級車ユーザーが求めていたステータス性や豪華さを見事に具現化し、人々を魅了してやまない数々の革新がこの車には詰め込まれていた。
現在に続くクラウンのアイデンティティ「王冠のバッジ」は、この代から始まった
まず、そのエクステリアデザインは、当時の日本車としては群を抜く存在感を放っていた。車幅いっぱいに広がるメッシュ状の豪華なフロントグリルは、一目でクラウンとわかる圧倒的な迫力と高級感を演出。そして、今日でもクラウンの象徴としてフロントに燦然と輝く「王冠のバッジ」が初めて採用したのも、この2代目からである。
フロントグリルのデザインには細かなこだわりが込められていて、よく見るとトヨタの「T」の頭文字をモチーフにしていることがわかる。この意匠は、前期型ではやや丸みを帯びた優美な形状だったが、後期型になると輪郭が少し角張った力強いデザインへと変更されている。
リアビューは、特徴的な円形のテールライトが配置されているが、ここでも前期型には涙の滴のような形状の後退灯が併設されるなど、細部にまでデザインの遊び心が感じられた。
全体として直線を引き締めた端正なフォルムや、フロントの4灯式ヘッドライトの採用などは、当時大きな影響力を持っていたアメリカ車の最新トレンドを巧みに取り入れたものだった。
しかし、単なる模倣にとどまることなく、その奥底には日本の風土や美意識に調和する日本的な繊細さがしっかりと滲み出ており、和洋折衷の絶妙なバランスがこの車の気品を高めていたのだ。
―― 初代の丸みをおびたデザインから一転し、当時のアメリカ車のトレンドも取り入れた直線的でダイナミックなデザインへと進化した。
―― 水平基調のトランクが特徴的なデザインで、左右に独立した丸型のテールランプ(ストップランプとウインカー)を縦に並べて配置した。
―― ボンネットからキャビン、そしてリアへと続くラインが、ほぼ水平に一直線に伸びたフラットデッキを採用。これにより、視覚的な安定感と流麗さが際立っていた。
◆クラウンデラックス・1962年
―― Specification(クラウンデラックス・1962年) ●全長× 全幅× 全高 : 4610×1695×1460mm●ホイールベース : 2690mm●車両重量 : 1265kg●エンジン型式・種類:3R型・水冷直列4気筒OHV●総排気量 : 1897cc●最高出力 : 90PS/5,000rpm●最大トルク : 14.5kgm/3,400rpm●トランスミッション:3速マニュアルコラムシフト
操作系に奢られた画期的なアイデアが満載だった
インテリアに目を移すと、室内空間もまたエクステリアと同様に直線を基調としたモダンなデザインでまとめられていた。特に目を引くのは、そのユニークな速度計。一般的な丸型のメーターではなく、水平指針式の横長長方形(長く寝かせたボビンを2色に塗り分けて回転させ、細いスリットに現れるバーの長さによって速度を読み取らせる)という、非常に未来的で凝った仕掛けが採用されていた。
また、操作系の特徴として、ステアリングのホーンリングがセルフキャンセル式のウィンカースイッチを兼ねていたことが挙げられる。これはステアリングから手を離さずに操作できる画期的なアイデアだったが、右折や左折、車線変更の際などに、ドライバーがうっかり力を入れすぎてホーンを鳴らしてしまうということもあったようだ。
―― 一般的な丸型のメーターではなく、水平指針式の横長長方形の未来的なスピードメーターを採用した。
―― ステアリングは2ジョイント式で路面からのショック吸収性が高められた。シートクッションとサスペンションの改良により乗り心地の改善が行われている。また窓面積も拡大した。
―― ホイールベースの拡大により120mmも大幅にレッグスペースが拡大した。またアメリカンカーをイメージさせるシートのカラーリングが新鮮に感じられる。
トヨタ初となるOHC機構を備えた直列6気筒エンジンをラインナップ。それは後のトヨタ2000GTへと引き継がれていく
メカニズムの面でも、2代目クラウンは大きな飛躍を遂げている。基本となる4気筒エンジンは初代後期型から受け継いだ1900ccだったが、発電機を旧来の直流式からより効率的で安定した交流式へと変更するなど、着実な近代化が施されていた。
そして特筆すべきは、1965年の後期型において、トヨタ初となるOHC(オーバーヘッドカムシャフト)機構を備えた直列6気筒エンジン搭載モデルが発売されたことだろう。この新開発の「M型」シリンダーブロックは非常に高いポテンシャルを秘めており、後に世界を驚かせる名車「トヨタ2000GT」のエンジンのベースにもなっている。
また、トランスミッションについては、基本は3速コラムシフトのマニュアルだったが、初代の途中で設定された半自動2速オートマチックトランスミッション「トヨグライド」が、1963年には完全自動化を果たし、高級車にふさわしいイージードライブを実現した。
さらに見えない部分の進化として、初代で用いられていた通常の梯子形フレームから、より強固で捩じり剛性に優れたX形フレームへとシャシー構造が刷新され、乗り心地や操縦安定性が飛躍的に向上している。
―― 高速道路での時速100km巡航を想定してチューニングされた1.9Lの「3R型」エンジンをが搭載した。
2.6リッターV型8気筒エンジンを搭載した最高級プレステージカー「クラウンエイト」も登場
この時代はモータースポーツの熱狂が高まりつつあった時期でもあり、2代目クラウンはその波にも乗ることになる。鈴鹿サーキットでの日本グランプリ開催を機にメーカー間の開発競争が激化する中、1965年にはスポーティモデルである「クラウンS」が登場する。
先述のM型6気筒エンジンを105psから125psへと強力にチューンナップし、スポーティな4速マニュアルフロアシフトや前輪ディスクブレーキで完全武装したこのモデルは、高級車でありながら熱い走りを求める層から熱狂的な支持を集めたのだ。
さらに、1964年には「クラウン・エイト」が登場する。これは2代目クラウンをベースに全長と全幅をさらに拡大し、2.6リッターV型8気筒エンジンを組み合わせた最高級プレステージカーだった。
この先進的な軽量アルミブロックエンジンは海外のレース界からも注目され、当時のF1ワールドチャンピオンであったジャック・ブラバムがわざわざトヨタを訪れ、自身のF1マシンのベースエンジンとして提供を依頼したという伝説的なエピソードも残されている。
◆クラウンエイト(1964年)
―― 2代目クラウンをベースに、車体を大型化し、日本初の量産V型8気筒エンジンを搭載したトヨタの最高級プレステージサルーンだった。
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