現在位置: carview! > ニュース > スポーツ > F1カタールGPで問題発生! ピレリタイヤに一体何が起きていたのか? 元F1タイヤ開発責任者、浜島裕英氏が考察

ここから本文です

F1カタールGPで問題発生! ピレリタイヤに一体何が起きていたのか? 元F1タイヤ開発責任者、浜島裕英氏が考察

掲載
F1カタールGPで問題発生! ピレリタイヤに一体何が起きていたのか? 元F1タイヤ開発責任者、浜島裕英氏が考察

 F1カタールGPは、ピレリタイヤにトラブルが発生する懸念があるとして、決勝レースでは1セットのタイヤで18周を超えて走ってはならないという制限が加えられる、異例のグランプリとなった。

 一体どんなことが起きていたのだろうか? かつてブリヂストンでF1タイヤ開発を率い、今はNAKAJIMA RACINGに所属する浜島裕英氏に考察してもらった。

■タイヤトラブルの懸念が生じたF1カタールGP。使用周回数制限により問題は起きず……ピレリは研究所でさらなる分析を約束「サーキットよりも細かいことを調べられる」

 F1カタールGP初日終了後、ピレリがフリー走行で使われたタイヤを分析した結果、問題が発生する懸念があることが分かった。そのため2日目からは問題発生の原因になっている可能性が高いと判断された高速コーナーであるターン12とターン13で縁石に乗らないよう、トラックリミットが急遽変更されることとなった。

 ピレリはこの時点で、土曜日のF1スプリント終了後に、改めてタイヤを検査するとしていた。このF1スプリントは、セーフティカーが多く出動する展開となったためレーシングスピードで走る周回数が少なく、大きな負荷はかからなかったはずだが、ピレリとFIAは、決勝レースで1セットのタイヤで走れる最大周回数を18周に制限することを決めた。

 ピレリのカーレース/F1タイヤ責任者であるマリオ・イゾラは今回のトラブルについて、「20周以上走行した一部のタイヤにはサイドウォール部の、トッピングコンパウンドとカーカスコードの間に、微細な裂傷の兆候があることが分かった。おそらくいくつかのコーナー、特にターン12と13で縁石を繰り返し乗り越えることによって発生した衝撃が原因だと考えられる」と土曜日の段階で説明していた。

 これは一体どういうことなのだろうか? 浜島氏に尋ねると、彼は次のように解説してくれた。

「トッピングコンパウンドとは、カーカスコード(プライコードともいう)の繊維を覆っているゴムのことで、トレッド・コンパウンドの事ではないと思います。このカーカスコードを覆っているゴムの呼び方はメーカーによって違っていて、トッピングコンパウンドと呼ぶ会社もあれば、コーティングコンパウンドと呼ぶ会社もあります」

 タイヤは、ゴムを丸く成形しただけのモノではない。複数のパーツが組み合わされ、それが一体となっているのだ。

「タイヤには一番外に路面と接するトレッドのゴムがあり、その下に補強層、ベルトが巻かれていて、さらにその下にカーカスとかプライと呼ばれる構造を作る層があります。フラットスポットができてしまった時に見えることがある繊維は、カーカスと呼ばれることがありますが、あれは補強用の繊維層です。勿論、非常に激しいフラットスポットを作れば、カーカスまで達することはありますが」

 そう浜島氏は説明する。

「今回問題が発生したのは、カーカスもしくはプライと呼ばれる部分だと思います。このカーカス(プライ)層は、カーカス(プライ)コードの繊維がすだれ状に存在していて、その周りをゴムでコーティングする形になっています。このカーカス(プライ)コードと、それを覆うコーティングしているゴムが剥離してしまったということではないでしょうか」

■タイヤも疲労する

 ではなぜそんな問題が発生したのか? 浜島氏は一般論として次のように説明する。

「縁石に乗って走られてしまうと、タイヤ的には辛いんです。変な変形をしてしまいますからね」

「段差のある縁石に乗ると、タイヤは伸び縮みします。そうなると、ゴムも繊維も疲労してしまうんです。金属も、何度も曲げ伸ばしをすると折れてしまいますが、それと基本的には同じです」

「トッピングコンパウンドの剥離も、やはり屈曲が原因だと思います。どんなゴムでも、屈曲を繰り返すと剥離します。今回は、想定よりも早く壊れてしまう段階がやってきた、そういうことではないかと想像します」

 カーカスコードとトッピングコンパウンドの剥離について、浜島氏はさらに次のように分析する。

「カーカスコードの周りにはコーティング材が塗ってあって、ゴムと接着しやすいようになっています。タイヤ製造の最終工程で、圧力と熱をかけてゴムに混ぜ込んだ硫黄を反応させる”加硫”という作業をしますが、それでカーカスコードとトッピングコンパウンドをしっかりと接着させます」

「どんな完璧なモノを作ったとしても、いつかは壊れてしまうものですが、今回のカタールでは、入力の強度と回数が想定よりも大きく、閾値を越えてしまったのでしょう。ひと言で言えば、接着の強度が、F1で、カタールで使うには足らなかったということだと思います」

「真の原因が何かにもよりますが、製造工程というか、カーカスコードとトッピングコンパウンドの接着方法を見直す必要があるかもしれません。製造ロットによって出た問題ならば、加硫の加減の違いなどで、性能ばらつきの下限にあった可能性もあります」

■安全を確保しながらも限界ギリギリで作られるF1タイヤ

 浜島氏によれば、超ハイパフォーマンスを目指すF1タイヤは、非常にギリギリのところで作られているという。それゆえに実戦投入するまでには、様々な試験が繰り返される。

「新しいタイヤを作ったら、まずはクリアしなければいけない最低条件を満たしているかどうかを、室内試験で確認します。それを達成して初めて実車でテストして、走行後のタイヤを解剖し、強度が落ちていないかどうか、落ちていたとしても、安全な圏内に収まっているかどうかを改めてチェックします」

「その時に安全圏から外れているモノがあれば、テレメトリーデータをチームからもらって、かかっていた荷重などを見直し、対策を判断します。そして次のレースに臨むんです」

 浜島氏は、かつてブリヂストンでF1タイヤを開発していた時を振り返り、そう語った。

「でも、想定外の走りをされてしまうと、タイヤが壊れてしまう場合もあります。例えばマクラーレン時代のルイス・ハミルトンは、トルコのターン8で突出して高い荷重を右フロントタイヤにかけていました。これは想定外で、安全圏を外れてしまい、タイヤが壊れてしまいました」

「F1ドライバーは、全員がすごいレベルにいるわけです。でもそれをほんの少しでも超えられてしまうと、タイヤは壊れてしまうこともあります」

「F1タイヤは、限界ギリギリのところで作られています。そうしなければ、高いパフォーマンスは出せません。ガチガチのトラックやバスのようなタイヤで走るわけにはいきませんからね」

こんな記事も読まれています

ホンダ「CRF1100L アフリカツイン アドベンチャースポーツ ES」【1分で読める アドベンチャーバイク紹介】
ホンダ「CRF1100L アフリカツイン アドベンチャースポーツ ES」【1分で読める アドベンチャーバイク紹介】
webオートバイ
今や販売の9割がe-POWER!? 価格差40万円も大人気ミニバン「セレナ」のハイブリッドが売れるワケ
今や販売の9割がe-POWER!? 価格差40万円も大人気ミニバン「セレナ」のハイブリッドが売れるワケ
ベストカーWeb
最強の断熱性能が標準装備! ダイハツ アトレーがベースの軽キャンパー
最強の断熱性能が標準装備! ダイハツ アトレーがベースの軽キャンパー
月刊自家用車WEB
いろいろ惜しかった パジェロJr.の限定車にミラージュの謎グレード……ざんねんな三菱のクルマたち4選
いろいろ惜しかった パジェロJr.の限定車にミラージュの謎グレード……ざんねんな三菱のクルマたち4選
ベストカーWeb
よりガチなオフロード仕様「オーバートレイル」誕生!! GXはランクル250のレクサス版ではなかった!?
よりガチなオフロード仕様「オーバートレイル」誕生!! GXはランクル250のレクサス版ではなかった!?
ベストカーWeb
くるまりこちゃん OnLine 「覆面パトカー」第79回
くるまりこちゃん OnLine 「覆面パトカー」第79回
ベストカーWeb
ホンダレーシングサンクスデー2023は1万5400人が来場。国内外の2輪・4輪マシンが豪華競演
ホンダレーシングサンクスデー2023は1万5400人が来場。国内外の2輪・4輪マシンが豪華競演
AUTOSPORT web
新型登場でN-BOX優勢は続くのか!? 室内空間ならタントに軍配!! ライバル3台と徹底チェック
新型登場でN-BOX優勢は続くのか!? 室内空間ならタントに軍配!! ライバル3台と徹底チェック
ベストカーWeb
アプリのダウンロード不要!JAFロードサービスをウェブから簡単要請
アプリのダウンロード不要!JAFロードサービスをウェブから簡単要請
グーネット
三菱 新型「トライトン」が安全性能評価ASEAN NCAPで最高評価を獲得
三菱 新型「トライトン」が安全性能評価ASEAN NCAPで最高評価を獲得
グーネット
テスラ「サイバートラック」納車開始 ブランド初の電動ピックアップ 【動画あり】
テスラ「サイバートラック」納車開始 ブランド初の電動ピックアップ 【動画あり】
グーネット
2人旅に特化したNV350ベースのキャンピングカー「NICO」発売 ドリームドライブ
2人旅に特化したNV350ベースのキャンピングカー「NICO」発売 ドリームドライブ
グーネット
角田がF1デビューマシンでドーナツターン。カート大会で大暴れのリカルドともてぎのファンを盛り上げる
角田がF1デビューマシンでドーナツターン。カート大会で大暴れのリカルドともてぎのファンを盛り上げる
AUTOSPORT web
三菱伝統「冬」の代名詞復活! 2台の「シャモニー」をデリカD:5の特別仕様車&デリカミニのパッケージとして発売!
三菱伝統「冬」の代名詞復活! 2台の「シャモニー」をデリカD:5の特別仕様車&デリカミニのパッケージとして発売!
ベストカーWeb
フォード「サンダーバード」のオーナーは米寿を迎えるお父さん!! 人生最後の思い出に「懐かしの愛車」を再び手に入れました
フォード「サンダーバード」のオーナーは米寿を迎えるお父さん!! 人生最後の思い出に「懐かしの愛車」を再び手に入れました
Auto Messe Web
療養中の山本尚貴が2カ月半ぶりにファンの前に登場「戻ってこられてよかったが本当の復活はこれから」
療養中の山本尚貴が2カ月半ぶりにファンの前に登場「戻ってこられてよかったが本当の復活はこれから」
AUTOSPORT web
【C63 S E PERFORMANCE】AMGから登場した本格的な電動スポーツモデル
【C63 S E PERFORMANCE】AMGから登場した本格的な電動スポーツモデル
グーネット
新型ムーヴは両側スライドドアで爆売れなるか!? 発売を延期…デビュー時期は未定も期待大
新型ムーヴは両側スライドドアで爆売れなるか!? 発売を延期…デビュー時期は未定も期待大
ベストカーWeb

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

査定を依頼する

あなたの愛車、今いくら?

複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!
愛車を賢く売却して、購入資金にしませんか?

あなたの愛車いまいくら?
メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで! 登録してお得なクーポンを獲得しよう
マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

ログイン

中古車探しをもっと便利に

  • 中古車お気に入り管理
  • おすすめ中古車の表示

あなたにおすすめのサービス

あなたの愛車、今いくら?

複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!

あなたの愛車いまいくら?
メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村