この記事をまとめると
■ポルシェは世界中のチューナーからベース車両として選ばれている
最後は南アフリカで謎の死を遂げた! ポルシェのチューナーとして世界に名を馳せた「ゲンバラ」とは
■ポルシェを専門にチューニングするチューナーも数多い
■近年では旧車をレストモッドする際のベースカーとしてもポルシェはメジャーだ
レース屋にもストリート派にも大人気のポルシェ
もしかしたら、ポルシェはチューンアップやカスタマイズのベースとして世界で一番選ばれているのではないでしょうか。だって、世のなかを見まわすと、ポルシェ・チューナーを名乗るファクトリーはめっちゃ多くないですか? 素材としてポルシェが適しているのか、あるいはビジネスとして成功しやすいのか、理由はさておき、専門チューナーと呼ばれるいくつかをご紹介しましょう。
クレーマー(Kremer)
彼らの功績はいくつもありますが、筆頭は本家ポルシェ・ワークスを差し置いて1974年のル・マンを制したことではないでしょうか。マシンはそれこそ本家の935とタイマン決められる935K3で、ゴリゴリのレーシングカーだったのですが、あまりの人気からロードカーのリクエストが殺到。かのウォルター・ウルフ氏も例のカラーリングでオーダーし、現在もビカビカに動態保存されています。
アルヴィンとマンフレート・クレーマーというレーサー兄弟によって1969年に設立されて以来、彼らはポルシェのチューニング一辺倒。当初は911/914、はたまた934といったロードカーのメカニカルチューンが中心でしたが、ベクトルはレースに向いていたこと、いうまでもありません。
彼らの仕事にサプライズは少なく、ターボの大型化や実践的な冷却メソッドを用いて、ポルシェがもつ耐久性を存分に活かすというじつに真っ当な仕事が特徴。1994年には、ホンダがNSXをル・マンに初めて投入する際、パートナーにクレーマーを選んだのは、真っ当な勝利の方程式を信じたからこそ、ではないでしょうか。
ルーフオートモービル(Ruf Automobile GmbH)
ルーフについては、アロイス・ルーフよりも「イエローバード」や「ステファン・ローザ」といったワードのほうが浸透しているかもしれません。それだけ初代CTR、通称イエローバードと、そのデモランを披露したローザ氏のドリフトテクニックのインパクトは強烈だったかと。
先のクレーマーと違い、ルーフは徹底してロードカーのコンプリートにこだわり、また最高速への情熱はほかのチューナーが足もとにも及ばないもの。たとえば、1987年にはそれまでフェラーリF40が持っていたナルド・テストコースの最高速記録323km/hを破り、339.6km/hをマーク。翌年には6速MT化したCTRで342km/hまで記録を伸ばしています。
また、2000年代に入ると中東のビリオネアらがこぞって出資したおかげか、開発ペースがスピードアップ。CTRは三世代めに突入し、RGTという新たな人気モデルや初代CTRをオマージュしたSCRといった珠玉のモデルが次々と登場したのです。
国内でもルーフはほかのチューンドポルシェをおさえて、ダントツの人気。チューンアップといっても、本家の911より壊れないとさえいわれる完成度で、しかもハンパなく速い。もっとも、ルーフ本人はチューンドカーと呼ばれることを極端に嫌っています。ポルシェ本社からホワイトボディを購入して、一から作り上げているからコンプリートカーだ! との主張については今も昔も議論の的となっているようです。
911だけでなく356もレストモッドのモチーフとして人気
9ff(9ff Fahrzeugtechnik GmbH)
ルーフといえば、一時期同社のチーフエンジニアを務めたヤン・ファットハウアー(Jan Fatthauer )が作った9ffも忘れがたいポルシェチューナーでしょう。やはり最高速にこだわったチューニングが特徴で、「最高速度400 km/hの911」をコンセプトに数々のマシンを送り出しています。有言実行できたのは2008年のことで、9ff GT9によって最高速度409 km/hを記録しました。
これは997をベースとしながら、エンジンは4リッターまでスープアップ&ツインターボ化がなされ、およそ1100馬力を発揮。また、ミッドシップへと変更されたほか、主要部分をカーボン素材に置き換えることで、その名のとおりGTレース車両に等しい仕上がり。
驚くべきはGT9の生産台数で、その数なんと150台! このクラスとしては売れに売れたといっても過言ではないでしょう。ただし、前述のフルチューンエンジン搭載車は20台程度とされ、ほかはいくらかマイルド(といっても700馬力オーバー)とのこと。
なお、このあとでGT9はR→CS→Vmaxと進化を続け、最終的には4.2リッター、1200馬力というモンスター911として知られるようになりました。
エモリー・モータースポーツ(Emory Motorsports)
ここまで主に911をチューニングするファクトリーをご紹介してきましたが、エモリー・モータースポーツは先代の356をチューンするというレアなファクトリー。カリフォルニアで三代続くというクルマやパーツを扱うエモリー家ですが、現代表のロッドが家業を継ぐと、クラシック・ポルシェのレストア&カスタムに手を広げました。
これだけならさして珍しくもないのですが、エモリーはシンガー同様に大胆なレストモッドも得意としており、356ボディの下に993カレラ4の駆動系を潜り込ませたこともあるのです。とはいえ、このモンスター356の場合はオリジナルよりも車体は大型化され、いわゆるマルホランド・ランのような仕上がり。
一方で、注目すべきはオリジナルの356ボディ&シャシーに930のフラットシックスを4気筒化して搭載、また901系のミッションと足まわりを移植することで、「現代の路上を余裕で走れる356」となっているとのこと。900kgの車重に188馬力のフラットフォー(笑)となると、パワーウェイトレシオはおよそ4.79kg/psですから、たしかに気もちよさげなチューンアップといえるでしょう。
価格はチューンのレベルにもよりますが、17万5000~30万ドルと、新車の911にも等しいもの。とはいえ、ボンヤリした911を356がキリっとぶち抜いていく対価としたら相当お安い気がします。
ここで紹介したほかにもアンディアルやシンガー、あるいはゲンバラやDPなんてチューナーもじつに魅力的な作品を生み出しています。奥が深いというか、サンプルが多いチューンド・ポルシェですから、深堀してみることオススメいたします!
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