ランボルギーニが満を持して送り出すスーパーSUV、ウルスがついに上陸した。650㎰/850Nmを発生する4.0ℓV8ツインターボを搭載するこのファイティングブルは、一体我々にどれほどの異次元のパフォーマンスを体験させてくれるのだろうか? その強烈な個性と超高性能な走りを、たっぷりと堪能してきた。TEXT◎渡辺敏史(WATANABE Toshifumi)PHOTO◎小林邦寿(KOBAYASHI Kunihisa)
ランボルギーニのオフロード4WDといえば、かつては軍用高機動車の体を採ったチーターからの発展版として、LM002が販売されたこともある。その数は約300台。もちろん史実は揺るがないが、カスタマーの分け隔てなく届けられ、年間3000台規模の販売を目論むウルスとは同列に並べて考えることは出来ない側面もある。ちなみにウルスの発売によって、ランボルギーニは来年の販売台数を2016年比で一気に倍加させる目論見だが、それは恐らくうまくいくだろう。
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かつてのポルシェがそうであったように、SUVというキーワードは今やクルマ屋がその間口を広げようというなら避けることのできないものだ。スーパースポーツブランドで括っても、アストンマーティンのSUVが来年に控えており、遂にはフェラーリも22年までにそれを発表するとアナウンスするに至っている。先鞭をつけたランボルギーニの動向を伺うまでもなく、だ。
そのような視点でみても、ウルスはもはや彼らのビジネスにおいて、失敗することのない既定路線としてさえ捉えられているのだろう。とあらば、唯一にして最大の問題は、その出来栄えが、果たしてランボルギーニたるものかということになる。
ウルスのハードウェアの根本にあるものは、グループのストラテジーでありシナジーだ。まずシャシーはポルシェが開発を主導したMSBモジュールをベースに、独自のディメンジョン&ジオメトリーが採られ、ランボルギーニとしての運動性能が表現されている。そのホイールベースは3003mmと、同じくMSBを用いるカイエンより約100mm長く、厳密にはベンテイガに対しても5mm長い。トレッドは後軸側がベンテイガに対して約20mm広いが、これは前後で異なる幅のタイヤを履くがゆえの影響かとも思われる。
通常、フルタイム4WDでわざわざ前後異寸にすることは珍しい。グリップ限界のキワを常用するほどのハンドリングを狙った上で、常識的なスタビリティを確保するためのセットアップとしてごく一部のスーパースポーツ、たとえばGT-Rなどに用いられている。ちなみにウルスのタイヤ幅は前輪がGT-Rの後輪と同じ285幅で後輪は315幅、21インチが標準となり、オプションでは23インチまで選択が可能だ。トルセンセンターデフを持つ4WDの駆動配分は通常40対60、最大70%を前軸に、87%を後軸に割り当てる。
搭載されるエンジンは4.0ℓ直噴V8ツインターボで、これはカイエンやベンテイガが用いるものと基本的には同じだ。が、ランボルギーニ独自のチューニングが施され、最高出力は650㎰とカイエンターボに対しても100㎰ものパワーが上乗せされている。0→100km/h加速は3.6秒、最高速は大台超えの305km/hと弩級の数字が並ぶのも、さもありなんというわけだ。
複筒式のエアサスを用いた足まわりは最低地上高158~248mmと最大で90mmの車高調整が可能で、ドライブモードセレクトに応じて自動で調整される。そのモード切り替えはセンターコンソールの左側にあるタンブーロと呼ばれるレバーによって行われ、雪上、悪路、砂漠環境も含めた6つのモードが選択可能。右側は操舵力や減衰力などを任意で設定できるエゴモード付のセレクターとなり、中央はギヤセレクターとなる。合金製のこの3つのレバーは操縦桿のようなロジックを採用しているが、操作性は抜群とはいかず、雰囲気ものの側面があるのも確かだ。
独自のロジックでいえば変速も然で、ニュートラルも含め8速トルコンATの基本操作はパドルが主になり、リバースやパーキング時にタンブーロを用いる。スーパーカーに慣れている人であれば普通に扱えるだろうが、そうでない人にとってはミサイルスイッチでのエンジン始動に始まり、走り出しに至るまでがちょっとした儀式となるだろう。
ドライブモードをストラーダに入れている限り、ウルスは努めて上質なSUVといえる。乗り心地は目地段差などで若干の張りを感じるが、壊滅的な大径タイヤを履いているブツだと思えば十分納得できるレベルだろう。エンジンの音質は確かにキワモノ的なメカメカしさがあるものの、音量は適切に抑えられており、音楽に耳を傾ける余裕ももてるほどだ。これならどんなロングツーリンでも疲れることはない。
感心するのは5mを超える長さや2mを超える幅が、街中を走るにさほど気にならないことだ。細街路では後輪操舵が効いていることももちろんだが、操作とクルマの動きとのズレのなさがそのように思わせてくれるのだろうか。首都高の都心環状線などは車線に入れておくだけで大変かと思いきや、ひと回りは小さいクルマに乗っている感覚で自然にラインをトレースできる。
加えて、リラックスして走るなら追従型クルーズコントロールに速度管理を任せることも可能だ。さらにオプションのトップビューカメラを装着すれば360度好みの角度から周辺状況を確認することができるから、駐車時には大いに効果を発揮してくれるだろう。これらの先進技術は最新のアウディの電子プラットフォームを活用しており、作動感にストレスがないのもありがたい。
もちろんウルスはひたすらに快適で扱いやすいだけでは終わらない。ドライブモードをスポーツ、そしてコルサにセットすると、そのキャラクターは二次曲線的に変化する。操舵力はズシッと重くなり足まわりは然引き締められロール量も減少、エキゾーストサウンドにも遠慮はない。ウラカンやアヴェンタドールで使用をためらうコルサモードがストリートでも躊躇なく活かせるのは、信頼に足る安定性があるからだ。これほど早く体に馴染むランボルギーニは今まで経験がない。
650㎰を解き放って得られる加はとんでもないが、それをも冷静に観察していられるほど、シャシー側の懐は深いということだろう。
むしろ驚くのはこの巨体をまったく意に介さないコルサモードの旋回力だ。タイヤ径から推するに158mmの最低地上高はシャコタン寸前といったところだろうが、その重心高に後軸側主体でうまくチューニングした駆動制御も相まって、コーナーではインへインへと尖ったノーズをグイグイ向けていく。サーキットに行けと言わんがばかりにその限界は深く、公道ではそのスキール音すら聞くことは滅多にないはずだ。
SUVの運動性能を語るにあろうことか話がサーキットにまで及ぶとすれば、その筆頭に挙げられるべきはカイエンだった。が、ウルスは恐らく持久力で譲るかもしれないが、純粋なパフォーマンスではカイエンに勝るところにいるだろう。しかも従来はその刺激的な性能と引き換えにドライバーにそれなりの覚悟を要するのがランボルギーニだったわけだが、ウルスは何も我慢する項目がないところが凄い。目立ちすぎて隠れようがないということは恐らくランボルギーニを所望するユーザーにとっては歓迎すべきことだろう。しかしなんとも法外なSUVが現れたものである。
※本記事は『GENROQ』2018年12月号の記事を再編集・転載したものです。
SPECIFICATIONS
ランボルギーニ・ウルス
■ ボ デ ィサ イズ:全 長5112×全幅2016×全高1638mm ホ イ ー ル ベ ー ス:3003mm ■車両重量:2200kg ■ エ ン ジ ン:V型8気筒DOHCツインターボ ボア×ストローク:86×86mm 総排気量:3996cc 最 高 出 力:478kW(650㎰ )/6000rpm最 大ト ル ク:850Nm(86.7kgm)/2250~4500rpm■ト ラ ン ス ミッシ ョン:8速AT ■ 駆 動 方 式:AWD ■ サ ス ペ ン ション 形 式:Ⓕ & Ⓡ マ ル チリンク ■ブレーキ:Ⓕ&Ⓡベンチレーテッドディスク ■タイヤサイズ(リム幅):Ⓕ285/45ZR21(9.5J)Ⓡ315/40ZR18(10.5J) ■ パフォーマンス 最高速度:305km/h0→100km/h加 速:3.6秒 ■環 境 性 能(EU複合モード) 燃料消費率:12.6km/ℓ ■ 車 両 本 体 価 格:2816万1795円
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