964バギーと最新EVがひとつ舞台に
2026年1月31日、 モータースポーツ文化とデザインの祭典「FATアイスレース」が今年もオーストリアのツェル・アム・ゼーで開催され、新旧ポルシェの競演や、新型ポルシェ「カイエン・エレクトリック(Cayenne Electric)」の氷上デビューが注目を集めた。
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披露されたカイエン・エレクトリックの真価
会場となったツェル・アム・ゼー周辺は、刺すような寒さとパウダースノー、そして完璧に整備された氷という最高の冬のコンディションに恵まれた。雪に覆われた山々の荘厳な背景の中、モータースポーツの伝統と現代のパフォーマンスが再び邂逅する光景が繰り広げられたのである。
歴史的なレーシングカーやラリーマシン、各ブランドのハイエンドモデル、そしてクラシックなポルシェ356といったアイコンたちが集う中、フル電動SUVのカイエンは、デモ走行や同乗走行を通じてそのパフォーマンスを来場者に披露し、会場を沸かせた。
技術的なマイルストーンとなるこのモデルについて、カイエン製品ライン副社長のミヒャエル・シェッツレは、「カイエン・エレクトリックは、まったく新しい次元のパフォーマンスを提供します」と述べている。
その核心となる新たな駆動システムは、最大850kW(1156ps)、最大トルク1500Nmというスペックを誇る。電気モーター特有の即応性に加え、オフロード走行モードや緻密に調整されたアクセルペダル制御によって、氷上でも極めて精密なパワーデリバリーが可能となっているものと思われる。
同乗走行(タクシーライド)を終えたシェッツレ副社長は、手応えをこう語る。
「信じられないほど多くの肯定的なフィードバックをいただきました。この車はリアアクスルの安定感が素晴らしく、プロポーションも非常に魅力的で、並外れたスポーティさを放っています。そして走りも最高です」
カイエン・エレクトリックのドリフト走行には、かつてのワークスドライバーであるティモ・ベルンハルトとイェルク・ベルグマイスターがステアリングを握る「964バギー」が並走した。このバギーは長年、ポルシェ・スポーツ・ドライビング・スクールのデモカーとして使用されていた車両を復活させたものだ。
シェッツレ氏はこの共演については、次のようにコメントした。
「世代の異なるポルシェ車、そしてそこに用いられている技術が一緒にコースという俎上に載せられた光景は、観客にとってハイライトだったに違いありません。新旧、そして内燃エンジンと電気、これは素晴らしくスリリングなコントラストです」
カーカルチャーのハブとして次世代へとアプローチ
2019年にフェルディナンド・“フェルディ”・ポルシェ氏が復活させたFATアイスレースは、単なるモータースポーツイベントの枠を超え、現代のカーカルチャーやSNSコミュニティ、世代間の交流ハブとしての機能も果たしているとも言えるだろう。会場では希少車両の展示に加え、デザインインスタレーション、音楽、食が提供され、ライフスタイルとモータースポーツが融合した独自の空間が創出された。
またこの精神を体現する新たな動きとして、ポルシェのグローバルコミュニティマネジメントによる「ポルシェ・ヤングスターズ(Porsche Youngsters)」が今回初披露された。ワークショップなどを盛り込んだ体験ウィークを通じて、若い愛好家たちがポルシェクラブの世界へ参加するための新たな道筋を作るプログラムの基礎が築かれたのである。
参加者にとってF.A.T.アイスレースの訪問は大きなハイライトとなり、次世代のクラブコミュニティの姿を示唆するものとなったようだ。
自動車への情熱を祝う
今回のFATアイスレース2026は、モータースポーツの魅力がラップタイムやコンマ数秒の追求だけにあるのではないこと――そこにあるのは文化、コミュニティ、そして自動車への情熱といった、ポルシェを形作ってきた価値観そのもの――を印象づけた。
主催者のフェルディ・ポルシェは、イベントの魅力を次のように説明する。
「私たちのモットーは『スピードよりも楽しさを(fun over speed)』です。会場には約8500人の来場者がいます。彼らはポジティブな姿勢を持ったクールな人たちで、単に楽しみ、素晴らしいパーティーを体験したいと願う一方で、モータースポーツの歴史にも関心を寄せてくれています」
このアイスレースが焦点を当てるのは「文化的勢い(モーメンタム)」であり、最速であること以上に、良いストーリーを語ることが重視されている。フェルディ・ポルシェはこう締めくくった。
「そうすることで、私たちは歴史的なモータースポーツを若い世代にとっても意義あるものにし続けているのです」
【ル・ボラン編集部より】 ポルシェ家の聖地ツェル・アム・ゼーで、空冷964と最新BEVが並走する姿。それは単なる新旧対決ではなく、ブランドの系譜が途切れていないことの証明だ。先代GTSで「純内燃機関の完成形」を見た我々だが、1500Nmという物理法則を無視した怪力を氷上で調律する技術には、電動化時代の新たな真価を感じずにはいられない。「スピードより楽しさ」を掲げるFATの哲学は、スペック至上主義へのアンチテーゼか。心臓がピストンからモーターに変わろうとも、ポルシェはドライバーの感性を決して置き去りにはしないのである。
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