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「PRADA MODE」と妹島和世──建築と自然とアートが緩やかに共鳴する新たなカルチャー

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「PRADA MODE」と妹島和世──建築と自然とアートが緩やかに共鳴する新たなカルチャー

「PRADA MODE 大阪」に先駆けて行われたのが「犬島プロジェクト」。妹島和世が設計・プラダが寄贈した常設パビリオンの公開とともに、妹島が長年取り組んでいる非資本主義的かつ永続的な取り組みを紹介する。

盛況に終わった大阪・うめきた公園での「PRADA MODE 大阪」(6月8日~15日)。プラダが現代文化に焦点を当てた巡回型国際イベントの最新版で、世界的に活躍する建築家・妹島和世とのコラボレーションにより実現したものだ。

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本イベントの一般公開で展示された主なものは、妹島が長年関わり続けている岡山県の瀬戸内にある犬島に関連した模型や写真などが中心だった。今回、「PRADA MODE 大阪」の一般公開に先駆けて「犬島プロジェクト」も開催され、ふたつの場所にて様々なワークショップやアート展示、音楽イベントなどが行われた。建築とアート、地方との“共生と継続”──これらを見事融合して生み出した新たなカルチャーの意義を犬島での取り組みとともに振り返る。

妹島和世と犬島の出合い妹島が犬島での活動をスタートしたのは、2008年。今から17年も前に遡る。当時、島の人口は約40人、平均年齢は約70歳という過疎化している場所に、ベネッセアートサイト直島を運営する福武財団が妹島に声をかけ、本プロジェクトの一環として島の環境を再構築することを依頼したのがきっかけだった。

そこから段階的にプロジェクトがスタートし、古民家の改修やギャラリー空間やコミュニティガーデンの設計や設立などを展開。島を深く体験できる環境を徐々に整備することとなる。

犬島「家プロジェクト」のさまざまな作品例えば、アーティスト・名和晃平の作品を改修した木造民家に展示している「F邸」(2010年)。坪庭を含む空間全体を使用し「物質的な混沌よりうまれる新しい生のかたち」をコンセプトにした真っ白な巨大作品、《Biota (Fauna/Flora》が展示されている。

また同年には、荒神明香による円形のレンズ《コンタクトレンズ》が透明アクリルの壁内に連なる作品が公開。サイズと距離感が異なる無数のレンズが見る者に多様な景色を見せてくれる作品だ。

「S邸」のすぐ近くにある「A邸」も、アクリルに包まれた空間だ。リング状の建築空間に配された17枚のガラス板は、リオデジャネイロ生まれのアーティスト・ベアトリス・ミリャーゼスによるもの《イエロー フラワー ドリーム》(2018)。島内を歩いているとふと現れる、建築とアートが有機的に融合したこのような空間が、次々と誕生していった。

妹島を中心に、キュレーターで元・金沢21世紀美術館の館長でも知られる長谷川祐子や、妹島とSANAAで活動を共にする西沢立衛、また気鋭の建築家やアーティストらが協力して取り組み、生まれる新しい文化の育成──その主となる目的は、単なる観光客増加ではない。非資本主義的なアプローチで無意識のように溶け込む島の新たな日常風景を継続的に作り上げていくことだという。

プラダと「犬島プロジェクト」今回開催された「犬島プロジェクト」では、妹島和世が設計し、プラダが寄贈した常設パビリオンが発表された。

場所は約4,500平方メートルもの土地を植物園に再生した「犬島 くらしの植物園」。ここは、妹島とコミュニティガーデンプランナーの橋詰敦夫(フラワーデザイナー・木咲豊とのユニット「明るい部屋」)が中心となり、島民や来場者たちが自然のサイクルに身を置きながら自然と共にくらす歓びを体験できる実験的な場所だ。

多種多様な植物が可憐に、かつ野生み溢れ育つ園内に建てられたパビリオンは、放射線状に広がるメタリックのもの。大輪の花のようなフォルムが、植物園を優しく包み込み、重厚感がありながらも自然と緩やかに共鳴している。

そのほか、「犬島プロジェクト」ではこのお披露目とともに、さまざまなプログラムが開催された。フラワーアーティスト・道念邦子による花を摘み、竹と合わせて一時的な空間を創出するワークショップや、アーティスト・ 小牟田悠介による地質学の視点で犬島を歩き、地層と植物の関係性を読み解くワークショップ。また、 ヴェネツィア・ビエンナーレの建築部門元ディレクターで、現在プリツカー賞のエグゼクティブディレクターを務めるルカ=ダジオと長谷川祐子による対談、 アメリカの音楽家・レジー・ワッツによるミュージックパフォーマンスなど。

これらは限定的なプライベートプログラムだったが、犬島での妹島和世の取り組みはこれからも続く。決して合理的・資本主義的ではなく、永続的に文化を創り、育んでいく。ここ犬島を訪れれば、アートや建築、そして島の大自然に触れながら「わたしたちのこれからのくらし」を考えるきっかけをもらえるはずだ。

文と編集・橋田真木(GQ)

文:GQ JAPAN 橋田真木(GQ)

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