7年半ぶり刷新の「F」と芳醇な「C」。カロッツェリア最新スピーカーの現在地
パイオニアがメディア向けに開催した「2025冬 カロッツェリア 新商品説明会」にル・ボラン編集部が参加し、新製品を搭載したデモカー5台での試聴を体験。特に印象的だったのは、スズキ・スペーシアやホンダ・フリードといった我々の日常に身近なクルマが、カロッツェリアの最新ユニットによって驚くべきサウンド空間へと変貌を遂げていたことだ。7年半ぶりにフルモデルチェンジしたエントリースピーカー「Fシリーズ」と、上位モデル「Cシリーズ」がもたらす音の違い、そして手軽なシステムアップが実現する「ドライブの楽しさ」を詳細にレポートする。
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軽ハイトワゴンの常識を覆す音。新「Fシリーズ」は“中域まで再生”するトゥイーターが鍵
今回の試聴で最大の驚きをもたらした一台が、スズキ・スペーシアのデモカーであった。軽自動車、それもスペーシアのようなハイトワゴンは、広くスクエアな車室空間ゆえに音の響き方が特有であり、オーディオにとっては必ずしも有利とは言えない。しかし、このデモカーはそうした常識を覆すリッチなサウンドを奏でていた。
構成は、ディスプレイオーディオ「DMH-SF900」をメインユニットに、フロントスピーカーとして7年半ぶりにフルモデルチェンジした新「Fシリーズ」のセパレートモデル「TS-F1750S」を搭載。トゥイーターは、同時に発表されたスペーシア専用のトゥイーター取付キット「UD-K310」を使用して、最適な角度でAピラー近辺に美しく装着されていた。さらにパワードサブウーファー「TS-WX400DA」が低域を補強する。
この新しいFシリーズは、エントリーモデルでありながら、上位モデルで培われたカロッツェリア独自のサウンドコンセプト「Open & Smooth」を踏襲しているのが最大の特徴だ。そのために、各ユニットが新開発されている。
通常は高音域のみを再生するトゥイーターに、新開発の「2.9cmマイカ強化型抄紙ダイアフラム」と「頂点駆動方式」を採用することで、従来の⾼音域に加えて豊かな「中域(ボーカル帯域)」までを再生し、これにより、臨場感と明確な定位を実現している。ウーファーも新設計され、新形状「カーボン含有IMCC振動板」と、駆動力を5%向上させた「高性能磁気回路」により、スピード感とパワーのある低域再生を可能としている。そしてトゥイーターとウーファーとの音のつながりをスムーズにし、ドライバーの耳元まで豊かな中域を届けるという発想だ。
まさにカルチャーショック。軽自動車とは思えない「明確な音像定位」
実際にスペーシアの車内で聴くサウンドは、そのコンセプトを見事に体現していた。カロッツェリアの担当者が「スペーシアでここまで良い音で聴けるようになるっていうのが、僕自身も乗ってみてびっくりするぐらいです」と語る通り、軽自動車の車内とは思えないほど明確な音像が目の前に定位する。
とりわけ今回のスピーカー、Fシリーズの音像定位感が大幅に向上したことで、ボーカルや楽器の位置がはっきりとわかる。これは、スピーカー自体のポテンシャルに加え、専用トゥイーターキットによる最適な装着、そしてメインユニット側での音質調整も相まって実現したものであり、クリアでパワフルなサウンドが、スペーシアの広い空間を見事に満たしていた。スペーシアでこれほどリッチな音響体験ができるというのは、正直なところ、カルチャーショックだった。
鳥肌が立つほどの解像度。ホンダ・フリードで体験する「Cシリーズ」の品格
スペーシアの「Fシリーズ」がエントリーモデルの常識を覆す「定位感」と「パワフルさ」を見せつけたとすれば、ホンダ・フリードに搭載された上位モデル「Cシリーズ」は、別種の感動をもたらすラグジュアリーな音世界を体験させてくれた。
こちらのデモカーは、メインユニットに楽NAVI「AVIC-RF722-DC」を据え、フロントスピーカーに「TS-C1740S」(Cシリーズ)、パワードサブウーファーに「TS-WX400AS」を組み合わせた構成である。担当者によれば、Fシリーズが「全体的に元気に、パッとなる」のに対し、このCシリーズは「一つ一つの音の粒立ちの良さ、そしてスピード感、キレといった表現力」や「ディティールの部分が細かく出る」点に強みがあるという。
試聴が始まった瞬間、一瞬で鳥肌が立つほど、その空気感は別格だった。担当者が聴きどころとして挙げた「音の響き、広がり、そして余韻」、そしてボーカルの生々しいクオリティは、まさにCシリーズの解像度の高さを示すものであった。
また別の楽曲では打って変わって、複雑な音のレイヤーと、サブウーファーが支えるベースラインの部分も、かなりくっきりと聞こえて疾走感が車内を包む。これは、カロッツェリアが掲げる「原音忠実再生」、すなわち「アーティストの方々が込めたその歌い方であったり、楽曲、音の意味であったり、意識のようなものまで、そのままできるだけ再現したい」という思想の表れであり、「変に味付けをすることなく、そのまま流す」という上位モデルならではの余裕と品格を感じさせるサウンドであった。
純正オーディオを活かす切り札。DSP「DEQ-2000A」がもたらす劇的な音場変化
この他にも、会場にはトヨタ・プリウス、ランドクルーザー250、ホンダ・シビックタイプRといった注目の車種が並んだ。これらのデモカーは、近年のトレンドである純正ディスプレイオーディオを活かしたシステムアップを提案するものであった。
いずれも12月発売予定のデジタルプロセッサー「DEQ-2000A」を装着し、特にプリウスとランドクルーザー250には、新発売のトヨタ車専用スピーカー「TS-H100-TY」が組み合わされていた。
プリウスでのDSPのON/OFF比較試聴では、OFFではぼやけていた音が、ONにした瞬間に「ボーカルの定位」が明確になり、生々しさや、そこで歌っているような感じが際立つ劇的な変化をみせた。さらにシビックタイプRに至っては、純正スピーカーのままで「DEQ-2000A」のみを追加するという構成でありながら、音響補正だけで純正とは別次元の音場感を実現しており、DSPの持つ可能性の大きさを感じさせた。
今回の試聴会は、日常のアシである軽自動車やコンパクトミニバンが、スピーカー交換という比較的手軽なステップで、驚くほど上質なオーディオ空間へと生まれ変わることを証明するものだった。エントリー・スピーカーのFシリーズから、より高みを目指すCシリーズ、そして純正システムを活かすDSPまで、多様な選択肢で「ドライブの楽しさをもっと自由に」提供しようとするカロッツェリアの現在地を明確に体感することができた。
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デッドニングも必須でしょう。