古着バイヤー・栗原道彦による古着講座、本日開講日。第2回は「アバクロンビー&フィッチ」が80年代頃までに販売していた珍品、もとい雑貨について紐解く。
【はじめに】あらためて古着ってなんだろう? 新品を20年着続けたら古着になるわけではないし、20世紀に流通したアメリカの服だけが古着ではない。古着バイヤーをはじめ、30年以上のキャリアを持つ栗原道彦が古着の見方を解き明かす。
ファッション・キュレーター・小木“Poggy”基史“90s MIX Style”──進化する東京アイビー
服だけじゃない
オオサワ系(以下、生徒) (教室で一人、インテリア雑誌を見ながら)教授が手伝ってくれたおかげで無事に引っ越しができたのはいいけど、仕事部屋がだいぶ殺風景なんだよな。
栗原道彦(以下、教授) (がらがらがら。ドアを開けて教授が入ってくる)はい、こんにちはー。
オオサワ系(以下、生徒) こんにちは。教授、先日はありがとうございました。
教授 その後、新居はいかがですか?
生徒 毎日を快適にすごしています。ただ部屋が味気なくて、なんちゅうか本中華……。じゃない、ピンタレストで素敵な部屋のケーススタディを探してました。
教授 (大橋)巨泉のCMですか、わかりますけど1979年って古いですね。ちょうどそれぐらいの時代に流通したものについて講義をしようかなと思ってました。今回はインテリアのアクセントにもなる、キミにぴったりなものを取り上げます。
生徒 ハウス食品かー、なんだろ。時代的には丸大ハンバーグだろうけど関係ないし。ハイリハイリフレ、ハイリホーだったけ? おっと古着の話か。だったら、ナウガモンスターか、アレキサンダー・ジラルドか、ザ・スリー・ストゥージズのUSトイ? いやいや、ガンビーなわけないだろうし。
教授 余計なものがだいぶ混じってますが、今日はアバクロ(アバクロンビー & フィッチ)の雑貨について触れようと思います。
生徒 アバクロって、「フィアース」の香水が立ち込めた妖艶な空間を覚えてます。いまは香りが違うんでしたっけ? 服ばかりではなく、雑貨もあったとは驚きです。
教授 アバクロンビー&フィッチは1892年にアメリカ・ニューヨーク州で誕生しました。当時は富裕層向けにハンティングやキャンプ関連のアイテムを販売して、おもに男性の利用が多かった高級デパートでした。1976年に破産申請し、その後紆余曲折があり、1992年に経営陣が変わってから若い層へ向けたファッションブランドとして復活して、現在に至っています。今回紹介する雑貨は、主に破産前の高級デパートで扱っていた頃のもの。当時は世界各地のものをセレクトして、自社のネームを付けた商品を販売していたんですよ。僕も実物を見たことはありませんが、リーバイス501XXでもアバクロのネームが縫い付けられたものの存在が確認されています。
生徒 そういえば、このブルドッグに似たものを見たことがあります。
教授 2000年代後半に日本の古着市場で1920~30年代のアーリーアメリカンなスタイルが流行った時にアバクロの雑貨が注目されたことがあるのでその頃ですかね。これはブルドッグモチーフのフットスツールで、同じレザーを使ったゾウやサイ、ブタなどが存在しています。
生徒 ゾウだったかも!
教授 このブルドックは「オメルサ」というイギリスのブランドのものです。おそらく80年代製で、当時、アバクロの店舗で売っていたものかもしれません。
生徒 物を見てもロゴや刻印が見当たりません。見分け方のコツを知りたいですね。
教授 「オメルサ」は70年代中頃まで動物の耳などに販売店のネームをスタンプしていました。アバクロであれば「A&F」、リバティーであれば「LIBERTY OF LONDON」のスタンプが押されています。こちらのブルドックはそれ以降に作られたものなのでスタンプがなく、そうなるとアバクロで売られていたものかどうかはわかりません。ちなみにアメリカでは「オメルサ」というブランド名はあまり知られておらず、アンティークのマーケットでもアバクロのフットスツールとして広く認知されています。
生徒 どうりでサルを見ても、デザインに一貫性がない雰囲気があります。
教授 これはドイツの「デル」というメーカーのものです。50~60年代製で、リベット以外、一枚の革を折り上げて仕上げているのが特徴で、この技法は海外で”ORIGAMI(折り紙)”と呼ばれています。「Abercrombie & Fitch Made in Germany」とネームが入っていますね。この頃のアメリカの富裕層の間ではサファリブームが起こっており、アバクロでも60年代に「Abercrombie & Fitch Safari」というアパレルラインが誕生。同社で売られていた雑貨も前述の「オメルサ」、こちらの「デル」共に、アフリカに生息している動物をモチーフにした商品が多く展開されていました。
生徒 フクロウも雰囲気がガラッと変わりますね。
教授 オブジェは革製品以外もあります。これは70~80年代製で、「ザ ロンドン オウル カンパニー」という、フクロウの人形を製造していたイギリスのメーカーです。ゴルファーは同社のフクロウの中でも一番多く目にするモチーフですが、この個体は通常出てくるものより一回りサイズが小さい珍しいもの。ほかにはスキーヤーやテニスプレイヤーなどのスポーツ系、医者や警察官などの職業系と多くのバリエーションがあります。中でもアバクロで売られていたものには胸に「A&F」の刻印が入ったピンが付けられているのが特徴で、こちらもそのピンが付いていないので当時アバクロで売られていたものかどうかは不明です。今回紹介したもののほかにもイタリアのメーカー「ローマー」の木彫りの人形などの雑貨や「マイティーマック」、「ダックスバック」のアパレル等、当時のアバクロが本当に良いものを国内外からセレクトして販売していたことがわかりますね。
生徒 やっぱりお高いんですよね? アメリカだけでなく、古いデザインファニチャーは途方もない値段になったし、こういうジャンルも今後ちょっと期待できちゃうかなって話ですよね!? いやー、お得だな。これってヴィンテージインサイダー取引疑惑でとんちゃん通りあたりで警らしてる古着ポリスに逮捕とかないですよね?
教授 金額よりも数のほうが問題です。古着に比べると絶対数がそもそも少ないのに加え、現在の古着ブームの影響を受けていないので、探している人も増えていない=流通しない。相場そのものは昔と比べてほぼ変わっていません。古着の世界も服の良し悪しがわかるようになれば、こういったオブジェや雑貨も楽しめるようになります。今日はずいぶんおとなしいなぁと思ってたら、最後の最後でプレミア化の話ですか……バツとしてコンバースのオールスターを100足紐通しの刑です。ハイカット、たくさんあるんで。
PROFILE
栗原道彦千葉県出身。ヴィンテージウェアのバイイング歴30年、日本有数の古着バイヤー。1年の約1/3は渡米。栗原氏がピックした珠玉のアイテムは富ヶ谷「ミスタークリーン」で購入可能。安いきれいかっこいい古着しかない、古着ラバー悶絶の店。
文・オオサワ系 編集と写真・岩田桂視(GQ)
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