かつて日本でも親しまれた日産ティアナの名が、中国市場で約5年ぶりに復活した。ビッグマイナーチェンジを受けた新型は、先進コックピットとガソリンターボを武器にどんな進化を遂げたのか。現地試乗で実力を確かめた。
文/写真:加藤ヒロト
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中国で受け継がれるティアナの名!!
かつて日産が日本で販売していたミドルサイズFFセダン「ティアナ」。「ローレル」や「セフィーロ」の後継として2003年に登場し、日本だけでなく中国やオセアニア地域でも高い人気を誇った。2013年に登場した3代目では北米向けセダン「アルティマ」と統合され、日産のグローバル戦略における中心的役割を担うようになる。
現在、アルティマは2018年登場の4代目が最新となるが、日本では4代目に移行することなく2020年に終売、そして中国では「ティアナ」が「アルティマ」に改称されたことにより、ティアナの歴史に幕が下ろされた。
日産の長いセダン史の中に埋もれてしまったかのように思えたティアナだが、2025年11月に日産は中国向けアルティマのビッグマイナーチェンジを実施、なんと約5年ぶりに「ティアナ」という名前が復活したのだ。
今回は発売前の新型ティアナに海外メディアとして初めて試乗、中国市場をとことん意識した新世代ミドルセダンを体感した。
ファーウェイ設計のコクピットシステム搭載!
ティアナは2004年から「天籟」として中国で販売されており、読み方は「tiān lài(ティエンライ)」、ティアナの音写表記となる。2018年に中国向けの英名が「アルティマ」に改称されても中国名は「天籟」のまま、現在まで販売されている状況だ。
この度発表された新型ティアナの正式な中国名は「天籟・鴻蒙座艙」で、英名に「ティアナ」が与えられた。「鴻蒙座艙」は中国のIT会社「ファーウェイ」が設計したコックピットシステム「HarmonySpace」を指し、今回のビッグマイナーチェンジの肝でもある。
一方で「鴻蒙座艙」はあくまでマーケティング上のサブネームでしかなく、実際の車体には「TEANA」のエンブレムのみ付与されているため、「天籟・鴻蒙座艙」は「ティアナ」と訳すのが妥当だ。今回の記事でも引き続き「新型ティアナ」として紹介させていただく。
N7とは対照的な設計思想?
新型ティアナは全長4920mm×全幅1850 mm×全高1447mm、ホイールベースが2825mmと、アルティマ比で全長を14mm延長している。フロントマスクは以前と比べてグリル幅を拡大させ、その中にヘッドライトを取り込む。
ヘッドライトの下には内側に屈折させたマットクローム調の加飾を施しており、日産が展開する「デジタルVモーション」フェイスの進化系と言える。リアは水平基調の左右一体型テールライトの採用で若返りを図っており、レンズ内で赤く輝く「NISSAN」の字が先進的な印象を醸し出す。
コックピット周りはまるでまったくの別車種のような空間が広がる。形状そのものから刷新し、クリアな視界が広がるフラットなダッシュボード、そしてその中央には15.6インチディスプレイが鎮座する。インストルメントパネルも従来の半円形メーターを廃止、昨今の中国EVで流行っている長方形の10.25インチディスプレイに置き換えた。
センターディスプレイの真下にはエアコン送風口とエアコン操作用の物理ボタンが配置されているが、この点は物理ボタンを撤廃した中国専売BEV「N7」と異なり、操作性重視の印象を受けた。交差するセンターコンソールも設計を一新させ、出力50 Wの携帯端末用無線充電パッドや、USB Type-C端子を2つ設置する。
「トラディショナル」と先進性の融合
中国で見かける最新EVはどれもセレクターをコラムシフトにしているため、比較的大きめなセレクターレバーがドスンと中心に構える様子が逆に新鮮だ。「古臭い」と評する人もいるかもしれないが、この形状は掴みやすく、なおかつ入れたポジションで固定されるので、運転中にちゃんと操作できているか不安になる隙を与えない。とても実用的で、安心・安全を感じさせる。
セレクターの横には格納式のカップホルダーを2つ装備、容器を下に押し込むことで床面が下降する。使わない時はボタンを押して上昇させ、フラットなセンターコンソールとなる。
先にも書いたが、新型ティアナ最大の特徴がファーウェイの「HarmonySpace」を採用している点だ。センターディスプレイは同社のスマートデバイスにも採用されている「HarmonyOS」を搭載し、同様のUIやグラフィックで操作する。
オーディオにもファーウェイ製の17スピーカーシステムを採用しており、車内のあらゆる場所に配置されたスピーカーには「HUAWEI SOUND」と刻印されている。音質に関しては人の好みもあるだろうが、個人的にはどこかまだ足りない印象を受けた。
名前だけじゃない! 走りに見る日産のDNA!
パワートレーンは以前と変わらず、通常グレードでMR20DD型2リッター直列4気筒エンジン、最上位のターボグレードではKR20DDET型2リッター直列4気筒可変圧縮比ターボエンジンを搭載する。今回試乗したのはターボグレードで、最高出力240hp・最大トルク371 Nmがもたらす力強い加速にモーター駆動のEVとはまた異なる魅力を感じた。
「快適性」よりも「走り」に振っているためか、乗り味は意外にも硬め。もしも柔らかい乗り心地で快適性を重視しているのなら、同クラスの「N7」や少し小型のPHEV「N6」を選ぶべきなのだろう。また、運転中に感じたことが物理ボタンの便利さだ。
先述の通り、新型ティアナでは中国向け車種としては珍しくボタンが多めだが、これにより操作のたびに視線をおろすことなく、物理的フィードバックをもって指先で行える。この方がはるかに安全性も高いし、何でもかんでもタッチ操作が良いわけではないと改めて実感した。
メーカー希望小売価格は13.99~16.79万元(約306.6~368.1万円)となる。12月頭から納車が始まっているが、購入層のおよそ半分が1990年代以降に生まれた世代とし、純ガソリン車ながら若い世代からも注目を集めているようだ。
まだまだセダンが元気? これからのラインアップにも注目!
実際に納車されたオーナーは室内空間の広さや高級感のある内外装を高く評価しており、燃費もターボだと少し悪いものの、おおむね満足という声が多く見受けられる。一方でトランクの開閉は電動ではなく、また車内に開閉ボタンがないのはマイナスポイントなので、今後のアップデートに期待したいところだ。
日産は月6000台前後を売り上げる大ヒットBEV「N7」、そのPHEV版に位置付けられる「N6」、そして新型アルティマと新たなセダンを立て続けに投入しているが、2026年には小型セダン「セントラ(日本名:シルフィ)」のビッグマイナーチェンジも予定しており、まだまだ中国でのセダン需要は高いことがうかがえる。
EVに関しては2027年末までに6車種(BEV・PHEV・EREV)を中国で発売する計画で、中国事業の再建はますます加速していく。
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