ホンダは2020年8月末に発表予定の新型電気自動車、ホンダeのメディア向け技術説明会を開催し、初披露した。
2017年9月のフランクフルトショーでコンセプトモデル、「アーバンEVコンセプト」が発表され、今回初めてホンダeの市販モデルの概要が明らかになった。
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ホンダeは専用のEV用プラットフォームに、シンプルでモダンなエクステリアを採用。
コクピットには、世界初となる5つのスクリーンを水平配置し、AIによる音声認識をはじめとする最先端のコネクティビティを満載した。
注目の電気モーターのスペックについては、154ps/32.1kgm、バッテリー容量は35kWh、航続距離はWLTCモードで283km、JC08モードで308kmとアナウンスされた。
さて、ホンダeの実車はどうだったのか? 気になる中身をレポートしていこう。
文/ベストカーweb編集部
写真/ベストカーweb編集部
【画像ギャラリー】シンプル&モダンでカッコいい新型ホンダeの詳細を写真でチェック
発表は8月末、発売日、価格は?
市販モデルのホンダeを日本初披露
2020年8月5日、市販型ホンダeのメディア向け事前説明会が開催された。この事前説明会は、ホンダeの開発コンセプトやクルマの概要、技術のハイライトなどが開発陣から説明を受けた後、車両の撮影および、ホンダeのAI音声認識/デジタルキー体験というメニュー。
ホンダeのラインナップはシンプルな「ホンダe」、装備を充実させた「ホンダeアドバンス」の2グレード展開とアナウンスがあった。しかし、価格や発表・発売日、販売計画はエンバーゴ(情報解禁日時の制限)付きでまだ明らかにできないことを先に申し上げておく。
ホンダeの開発コンセプトは「シームレスライフクリエーター」
ハイマウントストップランプ、テールゲートハンドル、リアワイパー、マルチビューカメラをリアパネルやリアウインドウの黒いエリアに隠した
それでは今回、明らかになった情報について順を追って解説していこう。
説明会の冒頭、ホンダeの開発責任者、一瀬智史(いちのせともふみ)氏はホンダeの開発コンセプトをこう説明した。
「ホンダらしさと何ぞや? 当社は絶対に他社を真似しないクルマを作ること。そしてヨーロッパの街中で見た狭い駐車スペース、スモールカーでもスタイリッシュなこと、ホンダ車をあまり見かけない……。またCAFEやMAASなど自動車にとって、100年に一度の変革期を迎えていること。
そうしたなかで、我々が目指したものは、小さいボディで都市部で使いやすく、そして環境にも優しい”街なかベスト”なEVです。
最近のEVは、大きなバッテリーを積んで幅が大きく重量も重く、取り回しもそれほど楽ではない。
そのようなEVが多くなっていますが、ホンダeはその呪縛から1回逃れて、小さく作って都市部で使いやすいクルマにすると同時に、未来の技術を詰め込んでこれらを磨きに磨いて魅力あるクルマにしたいと考えました。
タブレットも大きくて見やすくていいですが、普段ポケットに入れて使い勝手のいいスマートフォンのようなものを目指しました。
通信環境が進化した今、自宅や職場、地域や国境を越えたコミュニケーションが自在に行えるようになり、仕事とプライベートも垣根なくシームレスにつなげるようになってきました。
こうした時代のなか、人とクルマと社会がつながる、さまざまなシームレスライフを創造していただきたいという想いを込めて、ホンダeの開発コンセプトをシームレスライフクリエーターとしました」。
ホンダeの特徴を解説!
アイコニックな要素を際立たせるためにデザインのノイズを抑え、見せる要素と隠す要素を明確化。最小化したのはフロントの冷却開口部、フォグランプ、ドアミラー、リアリフレクター
ワイパーやカウルトップパネル、キーシリンダーを見えない位置に隠し、フロントピラー段差やセンターピラーガーニッシュ、アウターハンドル、バーキングセンサーなどをフラッシュ化。廃止したのはライセンスガーニッシュ、ルーフモール、ドアサッシュ、ルーフアンテナ
完成車開発統括部車両開発二部 開発管理課 シニアチーフエンジニア、ホンダeの開発責任者である一瀬智史氏
ボンネットにある充電ポートはグリルのボタンを押すと回転スライドオープン機構によって開く。左が急速充電、右が普通充電
ホンダeの特徴について順を追って解説していこう。まずは、ホンダeのエクステリアデザイン。
円を基調としたわかりやすいキャラクターで、シンプルでモダンなデザインにしたこと。開発責任者の一瀬氏は、”つるピカ”デザインと呼んでいるそうだ。
例えばボンネット中央にある充電/給電ポートは、充電で頻繁に触れる部分だからこそ特別にデザインし、触り心地のいい全面ガラス製となっており、回転スライド式を採用している。
ブラックアウトされた、ホンダeのフロントマスク、リアパネルにはさまざな機能を集約してシンプルでクリーンなデザインに仕上がっている。
ライト類やマルチビュー用のカメラ、ホンダセンシングのレーダーリッドなどをフロントグリル、リアパネルに集約してブラックアウト。シンプルでクリーンにするために余計なノイズをブラックアウトした部分に封じ込めているのだ。
サイドカメラミラーシステムはミニマムのサイズとし、車幅内に収まるよに設置。アウターハンドルはボディに出ないようにフラッシュなデザインとしている。
フルLEDのライト類は、シンプルで親しみやすい正円形状となっており、FOBキーを持って近づくとポジションライトが点灯するウエルカム機能を採用。
またEVはアイドリング音がないため、外観的にパワーオン・オフの違いを明確に設定、ライト類点灯時には豊かな表情を演出しながら、消灯時はブラックアウトとしている。
ホンダeの実車を目の前にすると、街中で扱いやすそうなコンパクトなサイズで、とにかくボディの作り、質感の高さが好印象。
最先端のEVなのに、どこか往年の名車、ホンダN360を感じさせるレトロなイメージも、昔のホンダ車を知っている世代にはウケそうだ。
ボディサイズについては未公表だが、すでに2020年1月に発表された欧州仕様のボディサイズを見ると全長3895×全幅1750×全高1512mm、ホイールベースは2530mm。ほぼヤリスやフィットと同サイズだ。
■ホンダe欧州仕様:全長3895×全幅1750×全高1512mm、ホイールベース:2530mm
■ホンダフィット:全長3995×全幅1695×全高1515mm、ホイールベース:2530mm
■トヨタヤリス:全長3940×全幅1695×全高1500mm、ホイールベース:2550mm
時代が変わったと思わせるホンダeのインパネ
5つのモニターが並ぶ壮観なホンダeのコクピット
8.8インチディスプレイを採用したシンプルなデザインのメーター
ワイドディスプレイには春夏秋冬の写真が壁紙として入っており、自分好みの写真を映し出すことが可能。バッテリーを充電しながら車内WiFiを利用し映画も鑑賞することもできる。木目調のパネルはディスプレイの反射を抑えるよう濃いブラウンを設定
サイドカメラミラーシステムは170万画素の高精細カメラを採用し、インパネ左右に配置した6インチモニターに映し出す。後退時には左右とも自動的に視界を下方に切り替えるリバースビューとなり、後輪周りを確認しやすくする
センターカメラシステムはカメラモードとミラーモードを簡単に切り替えることができる。カメラモードでは後方の荷物や乗員の影響を受けずに後方確認できるだけでなく、ミラーモードより広い後方視界を実現
事前に写真では見ていたものの、実際に見て感動したのが、ホンダeのインパネ。
使いやすく先進的な室内空間とするため、5つのスクリーンを水平に配置する世界初の「ワイドビジョンインストルメントパネル」を採用。
両脇にはサイドカメラミラーシステム、ステアリング奥にはメータースクリーン、そして12.3インチのスクリーンを2画面並べて水平に配置。
この12.3インチスクリーンの2画面水平配置を活かした表示設定としたポイントとしては、ボタン1つで左右画面を入れ替えたり、アプリ履歴の表示やアイコンボタンのフリック操作で右側から左側の画面にアプリを表示させることもできることが特徴だ。
ホンダeは車内WiFiやスマートフォンと通信を行うNFCが組み込まれているが凄い! と思ったのは音声認識システム。
「OK HONDA」と呼びかけるとホンダパーソナルアシスタントが作動。情報提供だけでなく、「疲れた」と語りかけると、イラストキャラクターが癒しの言葉をかけたり、挨拶するとスクリーンのなかを飛び跳ねて喜び、話しかけないと寝てしまうなど、クルマへの愛着を高めるようなコミュニケーションを行う。
未来を感じさせる装備の1つが、スマートフォンをクルマのキーとして使えること。日本ではこれまでスマートフォンをキーとして使用した場合、ロック解除しかできなかったが、2019年秋にようやく解禁になったという。
具体的には専用アプリ(HONDAリモート操作)をダウンロードすることでスマートフォンをキーとして使用でき、国産車で初めて走行まで行えるという。またスマートフォンでエアコンの遠隔操作やナビの目的地設定が可能になった。
家のリビングを感じさせるインテリア空間
インテリアカラーは親しみやすく飽きのこないデザインを追求。シートとドアの表面生地にはメランジ調のファブリックを採用。厚みのある上質な織物を使い、グレーの濃淡で魅せるコンビネーションでモダンなリビング空間を演出
ソファーらしさを演出するため、シートバックを一体式したリアシート。シートサイドのドアに通じる部分もシートと同じファブリックを設定し、ドアと連動する空間の広がり感を表現
居心地のいいリビングルームを思わせるインテリア空間も素晴らしい。フィットのシンプルでモダンなインテリアに好感をもったが、ホンダeのインテリアはさらに上質さを感じた。
自然な風合いでつやなしのウォールナット調ウッドパネルや、仕立てのいいソファーのようなシートは北欧のインテリアを感じさせる。
フロントシートは大型でサイドサポートもバッチリで心地いい。リアシートはソファーらしさを演出するために、シートバック一体化となっており、シートサイドのドアに通じる部分もシートと同じファブリックを使うなど、細部にもこだわりをみせている。
注目のEVシステムは?
公表されたスペックは154ps/32.1kgm。3L、V6に匹敵する性能だ
トランクの下にEVユニットを搭載、駆動方式はRRとなる。開発当初はFFだったという
電気モーターのスペックのほか、モーターのトルク・出力特性、加速度の変化、走行モードの概念図
リア搭載レイアウトのBEV専用ドライブユニットは、3L、V6エンジンに匹敵する大トルクモーターをリアトランク下に設置。駆動方式はRR方式となる。
電気モーターの最高出力は154ps(113kW)、最大トルクは32.1kgm(315Nm)と発表された。バッテリー容量は35kWh。航続距離は欧州のWLTCモード(高速域が多い)が222km、日本のWLTCモードが283km、JC08モードは308kmとのこと。
デザインは外観も内装も大変キュートで、装備は先進的であること、それでも日産リーフの航続距離が458kmあることを考えると、ホンダeの283kmはやや短いのではないかという心配について、一瀬開発責任者に聞いた。
「航続距離はさんざん聞かれますが、”街なかベスト”なので充分だと思っています。今回採用したパナソニック製のバッテリーは、急速充電の性能が高いのが隠れたウリです。
リーフのバッテリーは容量型といわれていて、なかなか一気に充電できないのです。ホンダeのバッテリーはバランス型といわれていて、急速充電能力が高いのが特徴です。
充電能力が高いのを利用して、小さくて使い勝手がよく、充電警告灯がついて、いざとなったら30分の急速充電で200km走れる、というのがコンセプトです。Bセグメントのボディに大きいバッテリーを入れるのは、ちょっと作れないですね。バッテリーおばけになってしまいますから」。
■ホンダe(35kWh):WLTCモード/283km、JC08モード/308km
■リーフ(62kWh):WLTCモード/458km、JC08モード/570km
■リーフ(40kWh):WLTCモード/322km、JC08モード/400km
大容量バッテリーを搭載し、航続距離を長くすることだけが正義じゃないという、ホンダのこのチャレンジを応援したい。
ホンダ社内の計測値では、30分の急速充電で走行可能な距離はホンダeは202km。
他社EV車A、リーフの40kWhは144km、62kWhは137km。他社EV車BのBMW i3は192km、他社EV車Cの三菱i-MiEVは約180kmと出ている。これを見ると、ホンダeの急速充電性能がいかに高いかがわかる。
WLTC&JC08モードでの航続距離。他社EV車Aはリーフ、他社EV車BはBMW i3、他社EV車Cは三菱i-MiEVと思われる
30分の急速充電で走行可能な距離はホンダeは202km。他社EV車A、リーフの40kWhは144km、62kWhは137km、他社EV車BのBMW i3は192km、他社EV車Cの三菱i-MiEVは約180kmとホンダeの急速充電性能が高いことがわかる(ホンダ社内計測値)
充電に要する時間と充電量の目安は、急速受電設備・CHAdeMO50kw以上で30分。30分急速充電で202km走行できるという。
家庭用/公共AC充電コンセントは、タイプ1~3.1kwで9.6時間以上、タイプ1~6.0kwが5.2時間以上となっている。
走行モードはノーマルモードとスポーツモードに切り替えることができる。特筆すべきは、アクセルペダルだけで加減速を調整できる、シングルペダルコントロール(クリープ動作なし、停止時は自動でブレーキを保持)がスイッチ1つで設定できるほか、オフにすることで通常のAT車の感覚で走行も可能(クリープ動作あり)なこと。
減速度の選択は、シングルペダルオン時が4段階(最大減速約0.1G)、シングルペダルオフ時(最大減速約0.18G)は3段階となっている。
上からP、R、N、D、そしてシングルペダルのコントロールスイッチ。下右側は走行モードの切り替えスイッチ(ノーマル/スポーツ)。下左は電動パーキングブレーキのスイッチ
シングルペダルコントロールのオン/オフができる
まるでスポーツカーのような走り
開発チーム発足当初、ホワイトボードに構想を描いたマンガ(左下)
低重心で、前後50:50を実現したホンダeのプラットフォーム
クイックなハンドリングと合わせ、加速フィールはスポーツカーを感じさせるという
ホンダeのプラットフォームは簡単にいえば、まっすぐ、シンプルで、低重心。
そして前後重量配分は50:50、走行性能を高める前引きレイアウトのステアリング、基本性能に優れた4輪独立懸架、バネ下重量を低減したアルミ鍛造のロアアームを採用などという文言がリリースに書いてある。これはまるでスポーツカーの説明文だ。ホンダの意気込み、こだわりが伝わってくる!
一瀬開発開発責任者曰く、「加速フィールはバビューンという感じで非常に楽しいクルマです。EVのスポーツカーと思っていただいても結構です。ホンダeに試乗したみなさんは、ホクホクした顔をしておられます。ハンドリングはクイックで楽しいですよ。多少のピッチングはありますが、乗り心地も上質です。早くみなさんに乗っていただきたいですね」。
また、片側1車線で楽にUターンできる4.3mの最小回転半径を実現し、取り回し性能を楽にする、可変ステアリングギアレシオの採用も見逃せない。
そのほか、ホンダeには、ミリ波レーダーおよびカメラと前後のソナーを用いた先進の安全運転技術「ホンダセンシング」や優れた全方位衝突安全ボディ、駐車場所を選択しボタンを押すだけで簡単に駐車する駐車支援システム「ホンダパーキングパイロット」など、ホンダの先進技術も満載している。
ホンダeの発表は2020年8月末を予定。発表、発売日、価格などについては、情報解禁日にお伝えする。
なお、ホンダeは会員制レンタカーサービス、EveryGoに導入し、青山本社のほか、東京、神奈川、大阪、福岡の各拠点に計10台導入して8月27日からレンタルが開始されるという。
また全国のホンダカーズにはホンダeの試乗車約140台が導入されるとのことだから、興味ある方はぜひ試乗してほしい。
ボディカラーはホンダeのイメージカラー、チャージイエローをはじめ、ホワイト、ブラック、シルバー、ガンメタ、ブルー、レッドの全7色をラインナップ
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