現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > クラシック・ベントレーの異端児 3リッター・スーパースポーツ 時速100マイル保証 後編

ここから本文です

クラシック・ベントレーの異端児 3リッター・スーパースポーツ 時速100マイル保証 後編

掲載
クラシック・ベントレーの異端児 3リッター・スーパースポーツ 時速100マイル保証 後編

オーナーが指定したシャシーやボディ

英国の弁護士でレーシングドライバーだった、ウィリアム・ジェフリー・バーロウ氏も、ベントレー3リッター・スーパースポーツをオーダーした1人。シャシー番号1174の、初代オーナーだ。

【画像】ベントレー・3リッター・スーパースポーツと後継のブロワー 同年代の高性能モデルも 全79枚

彼はベントレー・マニアで、シャシー番号22の3リッターも所有していた。そのクルマに乗り、ブルックランズ・サーキットを154km/hで走行している。

1892年にグレートブリテン島の中西部、チェシャー州で生まれたバーロウは、第一次世界大戦時に英国陸軍航空隊へ入隊。ロイヤル・エアクラフト・ファクトリーFE2という複葉機で、任務に加わっている。

より速いベントレーを探していた彼は、1925年にグロブナー・ガレージ社を通じて、スーパースポーツを購入したようだ。ボディの製作を請け負ったのは、南部のウィンチェスターという街にあったコーチビルダー、ウィル・ショート社だった。

安くないモデルだったが、スーパースポーツは1925年に11台が売れている。バーロウの注文は9番目だったという。ステアリングコラムは低い位置へ変更され、アクセルペダルは伸ばされた。リアのリーフスプリングは、標準の7枚から8枚へ強化されていた。

彼は、ボディのデザインへ細かく希望を出している。シートは左右で位置が僅かにずらされ、フレアウイングを装備。バッテリーボックスを下に固定できる、高い位置のランニングボードも指定された。テールはカーブを描き、後端へスペアタイヤが積まれた。

維持されてきたオリジナル・エンジン

ボディカラーには、記録がない。フロントガラスが取り外され、ラジエーターだけがメッキされた当時の写真を眺めると、アグレッシブな見た目だったことは間違いない。

TR 829のナンバーを得たスーパースポーツは、バーロウの自宅があった南部のキングスリー・グリーンに保管され、ロンドンの裁判所へ定期的に高速で走ったことだろう。

スーパースポーツを3年間楽しんだバーロウは、当時27歳だったローランド・スワード氏へ売却。彼は、スーパーマリンス・ピットファイア戦闘機の生産を請け負った工場の創業者だった。

クルマは第二次大戦の戦火を生き延び、1956年にベントレー・ドライバーズ・クラブのメンバーだったジュディ・ジェームズ氏の娘、ジュディ・コーツ氏がオーナーに。その時点での走行距離は6万6000kmほどだったようだ。

1993年までコーツが維持した後は、ベントレー・コレクターのビル・レイク氏が購入。オリジナルのエンジンやシャシーに感動した彼は、以降の約30年間も状態を保った。

2年前のボナムズ・オークションへ出品されると、シャシー番号1174のスーパースポーツは、自身の名を冠したクラシックカー・ディーラーを営むウィリアム・メドカーフ氏が購入。ベントレーの専門家、クレア・ヘイ氏を招聘し、メカニズムの調査が実施された。

そこで確認されたのは、コンポーネントに刻印された番号の多くが、オリジナルと一致すること。「驚くほど保存状態の良い、走行距離の短いスーパースポーツを手にした時は興奮しました」。とメドカーフが話す。

97年前の写真をもとに当時の姿を復元

「18台製造された3リッター・スーパースポーツで、唯一のレストアされていない1台です。しかも、オリジナルのボディを残す4台の1台でもあります」

専門家による調査を終えると、メドカーフと彼のスタッフはエンジンとシャシーをリビルド。見た目のリフレッシュも進められた。新車として購入したバーロウから受け継いだ、当時の1枚の写真をもとに、ボディとフェンダーに修正が加えられた。

「ボディ両サイドのランニングボードが低すぎたので、約50mm高くしています。クロームメッキされた部品も取り外しました」

メドカーフは、97年前の写真の通り、ボディをブラック・アウトするべきだと判断。ライトやフロントガラス・フレーム、ホイールのスピナーなどが、丁寧に塗られた。そのディティールが、クラシックカーとしての独自性を高めている。

レザーの内装は補修を受け、バッテリーボックスがランニングボードの下側に追加された。クラシカルなブロックリー社のタイヤが組まれ、3リッター・スーパースポーツは見事に仕上がった。

完成後のテスト走行を済ませると、メドカーフはラリーイベントへ参加。グレートブリテン島の中西部、湖水地方やノースペニンズ自然公園などを彼の妻と巡った3日間は、素晴らしい体験だったと振り返る。

「スーパースポーツは峠道を見事にこなしました。妻のケイトの運転も素晴らしかった。9フィート(約2743mm)のホイールベースで、ゴーカートのようにコーナーへ食らいつきます。夢のようなハンドリングです」

ビンテージ・ベントレーのフーリガン仕様

「発進してしまえば、ダイレクトなステアリングホイールの重さも改善されます。フライホイールが軽いので、エンジンのレスポンスも鋭い。ビンテージ・ベントレーのフーリガン仕様といったところですね。通常の3リッターとの違いは明らかです」

ベントレー・マニアの1人として、メドカーフも3リッター・スーパースポーツの存在は以前から知っていた。しかし、過去のシャシー番号1046の発見をきっかけに、特別なモデルだという理解を深めたという。

「何年も乗られていないクルマでしたが、エンジンはなんとか始動できました。近所でしたから、3000rpm以下に保って自宅まで走行も可能でした。住宅ローンを選ぶか、レストアを選ぶか、という究極の二択のような選択でしたが」

「完成したクルマでヒルクライム・レースに出場し、それぞれが特別な3リッターだと実感したんです。それ以来、ほかのスーパースポーツの捜索を始めたんですよ」

これまでにメドカーフは、シャシー番号1174も含めて、18台のうちの8台をレストアした。さらにオリジナル部品を用いて、5台分のショート・シャシーも制作している。

202psを発揮するWO.ベントレーの3.0L 4気筒エンジンが、1450kgの車体を駆る3リッター・スーパースポーツは、今も清々しいほど速い。2010年の北京・パリ・モーターチャレンジにも夫妻は別のクルマで参戦しており、クラス2位の成績を残している。

「スーパースポーツは、わたしたちのビジネスを一変しました。これがどんな走りをするのか、多くの人へ披露することは大きな喜びです」

協力:ウィリアム・メドカーフ社、クレア・ヘイ氏

こんな記事も読まれています

ハーレーの最新モデル10台が登場! 特別試乗会「ハーレートライディング in 羽生モータースクール」が5/5開催
ハーレーの最新モデル10台が登場! 特別試乗会「ハーレートライディング in 羽生モータースクール」が5/5開催
バイクブロス
ウイリアムズのスペアパーツ不足、アタックしない理由にはならない! アルボン、日和るなら「家にいたほうがいい」
ウイリアムズのスペアパーツ不足、アタックしない理由にはならない! アルボン、日和るなら「家にいたほうがいい」
motorsport.com 日本版
四国と関西をつなぐ「紀淡海峡大橋」はいつできる? 新たな本四連絡橋で関西圏に環状道路網の誕生なるか。
四国と関西をつなぐ「紀淡海峡大橋」はいつできる? 新たな本四連絡橋で関西圏に環状道路網の誕生なるか。
くるくら
かつて全盛だった「ステーションワゴン」なぜ人気低下? 国産ワゴンは絶滅寸前!? それでもワゴンが良い理由とは
かつて全盛だった「ステーションワゴン」なぜ人気低下? 国産ワゴンは絶滅寸前!? それでもワゴンが良い理由とは
くるまのニュース
バイクの水平対向2気筒エンジン、転倒の際にエンジンが壊れたりしないの?
バイクの水平対向2気筒エンジン、転倒の際にエンジンが壊れたりしないの?
バイクのニュース
トヨタ「ハイエース」を完全DIYカスタム! 3型にこだわるオーナーの見た目と実用性にもこだわった作り込みとは
トヨタ「ハイエース」を完全DIYカスタム! 3型にこだわるオーナーの見た目と実用性にもこだわった作り込みとは
Auto Messe Web
米国運輸省道路交通安全局、ホンダCR-Vとアコードの衝突被害軽減ブレーキを調査
米国運輸省道路交通安全局、ホンダCR-Vとアコードの衝突被害軽減ブレーキを調査
日刊自動車新聞
レクサスLMもびっくり!! 26年度に東海道新幹線で個室復活 N700Sはどこまで変わる
レクサスLMもびっくり!! 26年度に東海道新幹線で個室復活 N700Sはどこまで変わる
ベストカーWeb
新型マツダCX-80、堂々登場!──GQ新着カー
新型マツダCX-80、堂々登場!──GQ新着カー
GQ JAPAN
トヨタ堤工場、2週間生産停止の真相、『プリウス』後席ドア不具合で13万台超リコール[新聞ウォッチ]
トヨタ堤工場、2週間生産停止の真相、『プリウス』後席ドア不具合で13万台超リコール[新聞ウォッチ]
レスポンス
高速道出口にある「青いスラッシュ」何の意味? 実は重要なコト! 覚えておくべき「補助標識」の役割とは
高速道出口にある「青いスラッシュ」何の意味? 実は重要なコト! 覚えておくべき「補助標識」の役割とは
くるまのニュース
EV車は重いって聞くけど......電動バイクは?
EV車は重いって聞くけど......電動バイクは?
バイクのニュース
東海理化、トヨタ・プリウス向け後部ドアスイッチのリコール 関連費用で110億円
東海理化、トヨタ・プリウス向け後部ドアスイッチのリコール 関連費用で110億円
日刊自動車新聞
スバルが新型「最上級SUV」発表! オシャブルー映える「新ガイザー」! 約900万円のタフ仕様「アウトバック」伊に登場
スバルが新型「最上級SUV」発表! オシャブルー映える「新ガイザー」! 約900万円のタフ仕様「アウトバック」伊に登場
くるまのニュース
「カワサキコーヒーブレイクミーティング」 アップデートされたファン参加型イベントを聖地オートポリスで開催
「カワサキコーヒーブレイクミーティング」 アップデートされたファン参加型イベントを聖地オートポリスで開催
バイクのニュース
フェラーリ移籍控えるハミルトン、今は勝利目指して全力「そのうちウルフ代表と話す必要がある」
フェラーリ移籍控えるハミルトン、今は勝利目指して全力「そのうちウルフ代表と話す必要がある」
motorsport.com 日本版
日産『キャシュカイ』改良新型、表情を大胆チェンジ…欧州発表
日産『キャシュカイ』改良新型、表情を大胆チェンジ…欧州発表
レスポンス
特別な文字「J」を与えられしたった10台のスペシャルモデル! ついにファイナルを迎えるランボルギーニ・ウラカン「STJ」が登場
特別な文字「J」を与えられしたった10台のスペシャルモデル! ついにファイナルを迎えるランボルギーニ・ウラカン「STJ」が登場
WEB CARTOP

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

4070.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

581.0660.0万円

中古車を検索
ブルックランズの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

4070.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

581.0660.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村