2023年F1第8戦スペインGP。レイアウトが変わった今年のグランプリでは、マックス・フェルスタッペンがポール・トゥ・ウインでシーズン5勝目を飾り、メルセデスがダブル表彰台を獲得した。その一方で好走を続けていた角田裕毅は、レース後半に科されたペナルティで入賞を逃すことに。スペインGPを無線とともに振り返る。
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【角田裕毅を海外F1ライターが斬る:第7/8戦】先輩より熟練して見える最近の角田。結果につながる日がいずれ来る
予選3番手と今季ベストの結果を出したランド・ノリス(マクラーレン)。しかしスタート直後にルイス・ハミルトン(メルセデス)と絡んでしまう。
1周目
ノリス:ダメージだ!
ウィル・ジョゼフ:ボックス!
フロントウイング交換のために、緊急ピットイン。最下位まで転落してしまった。
ミディアムタイヤのレッドブル2台、ハードタイヤを履いたピットレーンスタートのシャルル・ルクレール(フェラーリ)など少数の例外を除けば、大部分のドライバーがソフトタイヤをスタートタイヤに選択した。しかし予想以上のデグラデーションの酷さに、彼らは苦しむことになる。
6周目
ニコ・ヒュルケンベルグ:タイヤがグチャグチャだ
7周目
角田裕毅:アンダーがひどい!
リカルド・アダミ:プランAで行くぞ
カルロス・サインツ:それでハッピーだ
この場合のプランAはおそらくソフト→ハード→ハードの2ストップ作戦と思われる。
アダミ:ステータス4だ
サインツ:ガマンして行こう
「ステータス」は、プッシュの度合いを意味する。「1」がもっとも攻めた走りで、「4」を提案した担当エンジニアは、ソフトをできるだけ持たせようという意図だったのだろう。それでも15周が限界で、サインツは1回目のタイヤ交換に向かった。
アダミ:ピットインして、ミディアムだ
サインツ:なぜなんだ?
サインツにしてみれば、ハードを履くと思ったのだろう。それに対するアダミの返事は公開されていない。
一方、サインツのピットインで2番手に順位を上げたハミルトンは、クリーンエアでの走行もあって、ソフトに問題はなさそうだ。
16周目
ハミルトン:タイヤはすごくいい
ピーター・ボニントン:わかった。そのまま行こう
タイヤの持ちの良さは、12番手から一気に3番手まで順位を上げたジョージ・ラッセル(メルセデス)も同様だった。
18周目
ラッセル:このタイヤ、ペースがたっぷりあるから、前を見て行こう。後ろじゃなく
21周目
ラッセル:タイヤはいい。1ストップで行ける。このままステイアウトしよう
マーカス・ダドリー:いいかもね
ラッセル:タイムが証明してるだろう?
順調に周回していたラッセルが、雨情報を伝えてきた。
28周目
ラッセル:ターン5で雨だ
決勝レースでの降水確率は40%。確かに山側は、黒雲が垂れ込めている。しかしその後も、雨が降り始めた様子はない。
32周目
ラッセル:誰か他に雨の報告をしてる人はいた? もしかしたらヘルメット内の汗だったかも
ダドリー:誰も言ってないから、汗かもね
このやりとりを聞いていたメルセデスの関係者は、さぞずっこけたことだろう。とはいえラッセルはその後も快走を続け、25周目のピットインで先行を許したサインツも、35周目にターン1のブレーキングで抜き返し、3番手に復帰した。
36周目
ダドリー:堅実な仕事だ
ラッセル:堅実なだけ?
トト・ウォルフ:すごくいいぞ
「堅実」以上の賞賛をねだるラッセルに、ウォルフ代表はやれやれという感じで褒め言葉を追加した。
43周目
ジャンピエロ・ランビアーゼ:タイヤはどう?
マックス・フェルスタッペン:あまりよくないね。ブレーキングで手こずってる。フロントがオーバーヒートだ
首位を独走するマックス・フェルスタッペン(レッドブル)はハードタイヤへの不満を述べるが、それでも1分18秒台のハイペースは衰えない。
一方、早めにミディアムに履き替えた9番手の角田裕毅(アルファタウリ)は、背後の周冠宇(アルファロメオ)をなかなか振り切れない。次のピットインでどんなセッティング変更をしてほしいかマッティア・スピニが尋ねるが、角田はそれどころではない。
49周目
スピニ:スタビリティかローテーションか、どっちがほしい?
角田:運転に集中させてくれ! これ以上速く走るなんて、無理なんだから!
そして57周目のターン1で、周が角田に襲いかかる。角田の背後にぴたりと付けた周が1コーナーのブレーキングで先行。立ち上がりで2台のラインが交差しかけ、接触を嫌った周がコースオフを喫した。
56周目
周:押し出しやがった!
角田は「十分にスペースを開けていた」と、レース後に主張したが、5秒ペナルティの裁定が下された。これで角田は12番手に後退した。
一方、独走体制のフェルスタッペンは、それでも極端にペースを落とさず、ターン1で何度もトラックリミットを超えてしまう。
60周目
ランビアーゼ:3回目のトラックリミットだ。ハミルトンは18秒後方だ。無理するな
黒白旗が提示されたものの、フェルスタッペンは終盤61周目に最速タイムをマークした。
ランビアーゼ:さ、これでもう白線からはみ出さずに、クルマを持ち帰ってくれ
フェルスタッペン:わかったよ
24秒の大量リードを築き、フェルスタッペンはポール・トゥ・ウインで今季5勝目を飾った。
クリスチャン・ホーナー代表:素晴らしい仕事だった。何回か、白線は超えたけどね
フェルスタッペン:でも限界は超えなかったよ
アロンソの担当エンジニアのクリス・クローニンは、なぜかとんでもない上位の順位を伝えてしまう。それでもアロンソの返事は、寛大なものだった。
クローニン:優勝はフェルスタッペン、2位サインツ、ハミルトン、ペレス、5位がラッセル、ランス(・ストロール)、そして君だ
アロンソ:スクリーンで見たら、その順位じゃなかったよ
クローニン:あ、申し訳ない。間違えた
アロンソ:そうだと思ったよ。本当にいい仕事をしてくれた。今回はメルセデスが速すぎた
そして角田に対しては、チェッカー後に初めて5秒ペナルティが告げられた。
スピニ:ユウキ、5秒ペナルティだ
スピニ:ポジティブな面を言うなら、クルマはすごく安定していた
角田:そんなこと、どうでもいい。こんなXXなクルマのことなんて。僕はしっかりスペースを空けてた。十分に空けてたんだ
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