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F1 Topic:タイヤのブリスターに悩まされたメルセデスと優勝したレッドブル・ホンダの違い

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F1 Topic:タイヤのブリスターに悩まされたメルセデスと優勝したレッドブル・ホンダの違い

 2020年F1第5戦70周年記念グランプリでは、メルセデス勢がブリスターに悩まされた。一方で優勝したレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンのタイヤにはブリスターはまったく発生しなかった。なぜか? その理由を説明するうえで、触れなければならないのが、最低内圧の変更だ。

 前戦イギリスGPではメルセデス勢とカルロス・サインツJr.(マクラーレン)のタイヤがパンクに見舞われた。当初、このパンクはコース上のデブリ(破片)が原因だと考えられたが、ピレリは調査の結果、「主な理由は、2020年F1マシンのペースが著しく向上し(ポールポジションタイムは2019年より1.2秒速くなった)、過去最大の力がタイヤにかかったことと相まって、2セット目のタイヤを極めて長く使用するに至った結果、イギリスGPの最後数周は特に厳しいものになった」と発表した。

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 つまり、パンクの原因は長時間、タイヤに巨大な負荷がかかったために、コンストラクション(構造)である内部構造体が破壊されたわけである。しかし、2週連続開催となる70周年記念グランプリまでに新しいコンストラクションに変更することは不可能であるため、ピレリは最低内圧を高くすることで、パンクを防止する対策を講じた。

 イギリスGPでは、フロントタイヤが25.0psi(パウンド平方インチ)、リヤタイヤは21.0psiだったが、70周年記念グランプリではフロントが27.0psi、リヤは22.0psiに変更。フロントは2psi、リヤが1psi上がった。

 最低内圧が上がると、タイヤは膨らみ、路面との設置面が減るため、トレッド面が加熱しやすい。そして、ブリスターが発生した。

 ブリスターとは、コンパウンド内の温度が異常に上がって火ぶくれができ、高速で回転するタイヤの遠心力によって火ぶくれ部分の表面のゴムが飛び散り、タイヤの表面にくぼみができる現象だ。

 レース中、無線でルイス・ハミルトン(メルセデス)がブリスターに悩まされることなく快走していたフェルスタッペンに対して「あいつら、内圧低くしているんじゃないか!?」と疑問を述べていたのは、そのためだ。レース後、そのことを尋ねられたハミルトンはこう釈明していた。

「ピレリの内圧は、レース前の最低内圧で、それはレース中に上昇する。僕たちの方がレッドブル・ホンダよりも上昇したためにブリスターが発生した。彼らがインチキしていたと言っているのではない。この内圧はみんな同じだから」

 なぜ、メルセデスに発生し、レッドブル・ホンダにはできなかったのか。

 その謎を解くを鍵は、メルセデスがブリスターに悩まされたときの症状だ。

 レース序盤にメルセデス勢がブリスターに悩まされたときのタイヤは、主にリヤタイヤだった。これはリヤが滑って、表面が異常加熱していたことを意味する。つまり、このときメルセデスはオーバーステア傾向にあったと見ていい。その理由として考えられるのは、メルセデスがダウンフォースレベルをイギリスGPよりも減らした仕様で70周年記念グランプリを戦っていたことが考えられる。

 ハミルトンとフェルスタッペンの予選の最高速をイギリスGPと70周年記念GPで比較すると、以下のようになる。

・ハミルトン(13.9km/h上昇)
319.8km/h(イギリスGP)→333.7km/h(70周年記念GP)

・フェルスタッペン(12.7km/h上昇)
316.9km/h(イギリスGP)→329.6km/h(70周年記念GP)

■ハードタイヤ交換後もブリスターに悩まされたメルセデス
 2週連続となり、路面が出来上がっていることもあり、70周年記念GPではどのチームもダウンフォースを減らし気味にしたものの、その中でもメルセデスがダウンフォースを削ってきたのは、コーナーリング時にタイヤにかける負荷を減らしたかったのではないかと考えられる。

 そのことは、70周年記念GPのレース後に、トト・ウォルフ代表が「一連の問題は、われわれのマシンが持つ巨大なダウンフォースが関係していたようだ」というコメントしていることからもわかる。

 ミディアムタイヤでブリスターに悩まされたメルセデスは、1回目のピットストップを早めに行い、ハードタイヤに交換した。すると再びリヤタイヤにブリスターができる。しかし、ハードタイヤではミディアムよりも長い距離を走りたい。そのため、リヤタイヤにブリスターが出ても、だましだまし走らなければならなかった。つまり、リヤを滑らせないように労った。すると今度は相対的にアンダーステア気味となり、フロントタイヤへの負担が増した。

 第2スティントでハミルトンが「今度は右フロントタイヤにスジができた」と言っていたのは、そのためだと思われる。右回りのシルバーストンでアンダーステアとなると、キャンバー角がついた状態で右フロントタイヤが内側に引っ張られるため、左フロントタイヤよりも加熱しやすいからだ。

 これらのことから総合的に考えると、メルセデスが70周年記念でブリスターに悩まされたのは、空力のセッティングを変えたことで、マシンのバランスが変化し、それに適正なセットアップを講じることができなかったからではないかと思われる。

 今週末の第6戦スペインGPのタイヤは、再びC1、C2、C3とイギリスGPと同じ最も高いコンパウンドの組み合わせとなる。そのため、ブリスターは発生する可能性は低い。さらに、最低内圧はフロントが23.0psiでリヤが20.5psiに低くなったことも、前戦でブリスターに悩んだメルセデスにとっては好材料となる。

 しかし、忘れてはならないのは、ピレリのコンストラクションが変わっていないおらず、高い負荷で多くの周回を走行した場合、パンクする可能性が高いという問題が解決していないことだ。しかも、スペインGPの最低内圧はイギリスGPよりも低い。カタロニア・サーキットには時速200km以上で駆け抜ける高速の右コーナーが3つある。そこで左フロントタイヤのコンストラクションに大きなストレスがかかったとき、シルバーストンで発生したタイヤトラブルが起きることは、十分考えられる。

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