7月7日、2024年F1第12戦イギリスGPの決勝レースが行われ、ルイス・ハミルトン(メルセデス)が母国で3年ぶりの勝利を飾った。2位にマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、3位にランド・ノリス(マクラーレン)が続いた。角田裕毅(RB)は10位となり、4戦ぶりの入賞を果たした。
スタートタイヤは上位13台を含む17台がミディアムタイヤ(C2/イエロー)をチョイス。14番グリッドの周冠宇(キック・ザウバー)と18番グリッドのエステバン・オコン(アルピーヌ)がソフトタイヤ(C3/レッド)、ピットスタートのセルジオ・ペレス(レッドブル)はハードタイヤ(C1/ホワイト)を選択した。
なお、19番グリッドからスタートするはずだったピエール・ガスリー(アルピーヌ)はマシントラブルにより、フォーメーションラップ終了時にガレージに入り、そのままスタートすることなくレースを終えている。
曇り空のもと、気温16度、路面温度33度、湿度63%というドライコンディションのなか、52周の決勝レースはスタートを迎えた。
メルセデス勢がワンツーを守るなか、4番グリッドスタートのフェルスタッペンがオープニングラップでノリスをかわし3番手に浮上する。一方、13番グリッドスタートの角田は混戦のさなかウイリアムズ勢2台をパスし、11番手でオープニングラップを終えた。
予選のダメージから修復が叶ったフェルスタッペンは比較的快調なペースでメルセデスの背中を追うが、ラッセル、ハミルトンはともにフェルスタッペンを上回るペースで周回し、早々にフェルスタッペンはDRSが使えない状況に。逆に、フェルスタッペンは1秒前後にノリスを従える展開が続いた。
13周目を迎えて、ラッセルとハミルトンのギャップは1.5秒。一方、ハミルトンとフェルスタッペンは3秒まで広がり、フェルスタッペンはメルセデス勢とのギャップを詰めることができない。
そんななか、ノリスが13周目に自己ベストを更新しフェルスタッペンのDRS圏内に入った。2台の戦いはテール・トゥ・ノーズとなり、シルバーストン・サーキットに詰めかけたファンは歓喜の声を上げる。
そうして迎えた15周目のターン15(ストウ)でノリスはインに飛び込み3番手を取り戻す。フェルスタッペンはタイヤのデグラデーション(性能劣化)が厳しいのか、ノリスのペースに着いていくことができない。
小雨が降り始めた17周目、同じくターン15でオスカー・ピアストリ(マクラーレン)がフェルスタッペンを易々とオーバーテイクし、メルセデスパワーユニット勢がトップ4を占める状況となった。
雨脚が徐々に強まるなか、ベテランのハミルトンが18周目のハンガーストレートでラッセルをパス。歓喜の声援が轟くなか、急激に雨脚は強まり、19周目のターン1でメルセデスの2台はわずかにコースオフ。
続くターン4でノリスがラッセルをパスし2番手に浮上すると、さらに20周目のターン1でノリスがハミルトンをインからパスし、ノリスがラップリーダーへと変わった。さらにはピアストリもラッセル、ハミルトンを続けてパスし、降雨を経た21周目にはマクラーレンがワンツーを形成する。
20周目にはシャルル・ルクレール(フェラーリ)、ペレスら4台が浅溝のインターミディエイトタイヤに履き替えたが、ハミルトンは「まだ乾いてる部分は多いよ」と無線。その言葉のとおり、上位勢はミディアムのままステイを選択。
インターミディエイトに履き替えたペレスは「乾きすぎているよ」と無線を飛ばし、早々にギャンブルは失敗だったことを示唆した。
雨脚が強まったのは一時的なものだった。それを証明するかのように22周目にはノリスがファステストを更新する。“ちょい濡れ”と表せるダンプコンディションで際立った速さを見せたマクラーレン勢だったが、路面が乾くとメルセデス勢もペースを取り戻す。
ただ、レースも後半に差し掛かった26周目、再び雨粒がシルバーストンに注ぎ始めた。27周目に5番手のフェルスタッペン、6番手のカルロス・サインツ(フェラーリ)、7番手ニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)、9番手ランス・ストロール(アストンマーティン)がインターミディエイトに履き替えた。
28周目にはトップのノリス、3番手ハミルトン、4番手ラッセルがインターミディエイトに履き替えるなか、ピアストリはダブルピットを避けるべくステイ。
しかし、状況は27周目にインターミディエイトに履き替えた車両に優位に働いた。28周目にピアストリがインターミディエイトに履き替えるも、トップ10オーダーはノリス(28)、ハミルトン(28)、フェルスタッペン(27)、ラッセル(28)、サインツ(27)、ピアストリ(29)、ヒュルケンベルグ(27)、ストロール(27)、アロンソ(28)、角田(28)、へと変わりピアストリは一気に4つポジションを失う結果に。
そんななか、4番手のラッセルに「リタイアしよう」と無線が飛んだ。冷却系にトラブルが出たというラッセルは34周目にガレージに入り、そのままポールシッターはレースを終えてしまう。
一時は4秒近く開いたノリスとハミルトンだったが、37周目にはその差が1.6秒まで縮まった。そして日差しも照りつけはじめた39周目、2番手ハミルトン、3番手フェルスタッペン、5番手ピアストリらがドライタイヤに履き替えた。
40周目にはノリス、サインツがドライタイヤに履き替えるが、すでにドライタイヤとインターミディエイトでは1周2秒ペース差があり、1周早めにドライタイヤに履き替えたハミルトンがアンダーカットに成功し、ノリスを2.5秒先行することが叶った。なお、ピアストリもサインツに対しアンダーカットを成功させ4番手に浮上している。
残り11周となった42周目のトップ10オーダーとタイヤはハミルトン(ソフト)、ノリス(ソフト)、フェルスタッペン(ハード)、ピアストリ(ミディアム)、サインツ(ハード)、ヒュルケンベルグ(ソフト)、ストロール(ミディアム)、アロンソ(ミディアム)、角田(ソフト)、アルボン(ミディアム)となった。
ノリスとフェルスタッペンはそれぞれファステストを更新するペースを刻むが、ハミルトンはノリスとの2秒のギャップをキープする。一方、46周目に角田はアルボンにかわされ10番手に後退する。
角田はペース不足に悩まされるが、11番手サージェントまでは9秒のギャップが開いており、ここはポジションを守りきる。
48周目、ソフトタイヤの限界を迎えたか、ハードタイヤを履いたフェルスタッペンがノリスの背後に急接近。ターン15で易々とオーバーテイクし、フェルスタッペンが2番手に浮上するが追い上げはここまで。
波乱の52周を終え、ハミルトンが3年ぶり、F1キャリア104勝目を飾った。2位にフェルスタッペン、3位にノリスが続いた。
4位ピアストリ、5位サインツ、6位ヒュルケンベルグ、7位ストロール、8位アロンソ、9位アルボン、10位角田までがポイント獲得。角田は10位で4戦ぶり、今季7度目(スプリント含む)の入賞を果たした。
なお、サインツは51周目にソフトタイヤに履き替えて、ファイナルラップの52周目に1分28秒293を叩き出し、ファステストラップポイントの1点を獲得した。
チェッカー後、ハミルトンは涙を流した。ヘルメットを脱ぎ、涙を拭ったイギリスの英雄は観客席に近づくと、ユニオンジャックを掲げて笑顔を見せた。
次戦となる2024年F1第13戦ハンガリーGPは、7月19~21日にハンガロリンクで開催される。
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