この記事をまとめると
■FD2型シビックタイプRはサーキット性能を重視しすぎたため街乗りには向かなかった
サーキットベストの「固すぎる足」は語り草! やりすぎタイプRこと「FD2型」シビックを振り返る
■よりソフトな仕立ての欧州仕様FN2型がシビックタイプRユーロとして日本に導入された
■中古相場は安価でタイプRらしい走りと前衛的なデザインを楽しめる狙い目のクルマだ
硬派すぎたFD2型シビックタイプRの影響で国内導入された欧州仕様
前回の記事でご紹介した、2007年3月デビューの8代目FD2型ホンダ・シビックタイプRは、その前身にあたる4代目DC5型インテグラタイプR以上のサーキットでの速さを、大きく重い4ドアセダンをベースに実現するという難題を自らに課した。それがゆえに、街乗りでは余りにも乗員に厳しすぎる乗り心地となってしまった。
そんな市場の声を聞いたからか、2009年11月、ホンダは欧州向けイギリス生産の3ドアハッチバックをベースとしたタイプRを日本へ輸入。「シビックタイプRユーロ」として2010台限定、2010年8月にも1500台限定で発売した。
「FN2」の型式名が与えられたこの「シビックタイプRユーロ」、じつはFD2型シビックタイプRよりも中古車相場が約100万円ほど安い。
そこで今回は、20代の若い社会人でも辛うじて……ではなく、比較的無理せず購入できる車種として、このシビックタイプRユーロがどんなクルマだったかを、現役当時の印象を振り返りながら紹介したい。
2000年9月に国内デビューした7代目シビックは、5ドアハッチバック、4ドアセダン「フェリオ」、イギリス生産の3ドアハッチバックをベースとした「タイプR」をラインアップし、さらに姉妹車として3ドアハッチバッククーペの「インテグラ」も展開。極めてワイドなバリエーションを誇っていた。
しかしながら2005年8月に8代目へスイッチすると、国内向けは「フェリオ」のサブネームが外れた4ドアセダンのみに。インテグラもモデル廃止が決定していたため、「タイプR」はこの4ドアセダンをベースに作ることとなったのは、前回ご紹介したとおりだ。
そして、この8代目シビックのタイプRが言語に絶する乗り心地だったわけだが、不評だったのはその走りだけではない。4ドアセダン=高齢者が乗る地味なクルマ、というイメージは当時すでに根強く、ベース車自体の内外装デザインや走りがスポーティで、タイプRではそれがさらにレーシーなものへ仕立てられたにもかかわらず、その固定観念を覆すまでには至らなかった。
しかも、さらに悪かったのは、欧州向けの3ドアおよび5ドアのハッチバックが、この8代目では4ドアセダンとはまったくの別物だったこと。初代フィットを祖とするグローバル・スモールプラットフォームをベースとした両ハッチバックは、4ドアセダンや2ドアクーペ以上に前衛的かつ若々しくスポーティな内外装デザインを採用。しかもセンタータンクレイアウトのため室内・荷室とも広く、シートアレンジも多彩だった。
しかし、何度もいうが、8代目シビックの4ドアセダンも十分に前衛的かつスポーティな内外装デザインで、走りもまた同様だったと、筆者自身は当時より評価している。さらにいえば、室内や荷室も十分に広く、使い勝手も良好だった。
とはいえ、隣の花は赤く見えるもの。「なぜこんな素晴らしいハッチバックを日本に入れないんだ!」と、半ばホンダへの抗議めいた記事を展開し、挙げ句の果てには5ドアのディーゼルMT車を並行輸入までしてしまったのが、当時筆者が所属していたザッカー編集部、そしてその前後にはCARトップ編集部を率いていた、故・城市邦夫氏その人である。
そうした運動の効果もあったのか(?)、2009年11月、FN2型シビックRタイプユーロが日本で発売されることになった。
FD2より若干ソフトだが訴求力に欠ける内容で中古相場は低め
では、その走りはどうだったのか。ひとまず仕様をFD2型シビックタイプRと比較してみると、FD2の全長×全幅×全高=4540×1770×1430mm・ホイールベース2700mmに対し、FN2は同4270×1785×1445mm・2635mmと、270mm短く15mm広く15mm高く65mm短い。旋回性能の面では有利と思われ、かつ見た目のうえでも塊感がありスポーティに感じられるものだった。
一方で、ハイチューン仕様のK20A型2リッター直列4気筒DOHC「i-VTEC」エンジンは、圧縮比のダウン(11.7→11.0)、実用トルクを重視した吸気マニホールドへの変更、2次バランサーシャフト採用による騒音・振動の低減など、欧州のユーザー向けにやや快適性を重視したチューニングに。結果として最高出力と最大トルクは、FD2の225馬力/8000rpm&215Nm/6100rpmに対し、FN2は201馬力/7800rpm&193Nm/5600rpmへとダウンしている。
また、プラットフォーム自体が異なるため、サスペンションの基本設計も異なっており、FD2のフロント・ストラット式、リヤ・ダブルウイッシュボーン式に対し、FN2はフロントはストラット式、リヤがトーションビーム式。ただしFN2はザックス製ダンパーを採用したことを公表していた。
タイヤはともに225/40R18サイズのブリヂストン・ポテンザながら、FD2はドライグリップを最重視したRE070、FN2はトータルバランスの高さで定評のあるRE050Aを選択。ブレーキはFD2がDC5型インテグラタイプRに続いてフロントにブレンボ製対向4ポットキャリパー、FN2もその前身といえる7代目EP3型シビックタイプRと同様に片持ちタイプのキャリパーと、こちらも方向性が明確にわかれている。
そして車重は、FD2の1270kgに対しFN2は50kg重い1320kg。FD2に対しFN2はわかりやすいスペックや装備の面で、やや見劣りするものになってしまっていたのは事実だ。
ではその代わり、FN2は街乗りでも快適で扱いやすいクルマになっていたかといえば、そうとはいい切れないのが悩ましいところだ。確かにK20A型エンジンは、FD2用でさえ低回転域でも扱いやすい万能性のもち主だが、FN2のK20Aはよりいっそう扱いやすくなっており、振動・騒音もその官能的なホンダミュージックを損なわない範囲内で低減されていた。
しかし、肝心の乗り心地は「あくまでFD2よりはマシ」というのが筆者の率直な印象だ。
ホイールベースの短さやサスペンション形式、ボディ形式の違いは確実に不利に働いており、結果として路面の凹凸をすべて忠実に拾い、とくに車体のリヤ側を常に上下動させる傾向はまったく変わらず。乗員の視線をぶれさせ眼精疲労や車酔いを誘発し、首や腰にも多大な負荷をかけ続け、頸椎と腰椎の椎間板ヘルニアを悪化させるという点では、何ら違いはない。
ただ、その突き上げの強さ、跳ねの大きさが、FD2よりは若干抑えられている。また、ウエット路ではFD2よりハイドロプレーニングの心配が少ない。それだけの話である。
以上のとおり、タイプRファンが求めるピュアスポーツ度ではFD2より若干落ちるFN2ではあるが、ではなぜ中古車相場が100万円近く安いのか。なお、ここからはあくまで、筆者の推測となることをご容赦いただきたい。
まず、FD2が4ドアセダンなのに対し、FN2は3ドアハッチバック。後席はどうしても狭くなり、乗り降りも不便になる。家族をなんとか騙……説得してスポーツカーを購入したいクルマ好きにとって、これは致命的だ。そもそもどちらも乗り心地は劣悪なので、それを家族が体感すれば、早晩買い換えを求められるは必定なのだが。
そして、オーディオ。FD2は2DINサイズの取り付け穴が開いたオーディオレス仕様が標準なのに対し、FN2は専用形状のAM/FMチューナー付きCDプレイヤーが標準装備だった。
なお、ディーラーオプションでホンダアクセス製の純正ナビと専用のパネルが用意されていたが、これを装着している個体でも、純正ナビを取り外して市販の2DINナビに交換することは、ステアリングスイッチやサブディスプレイ、バックカメラとの連携を含め、決して容易ではない。
そのうえ、標準装備のAM/FMチューナー付きCDプレイヤーを装着する車両が圧倒的多数のため、オーディオユニット選択の自由度は限りなく低いのが実情だ。
しかし、ありがたいことに、USB Type-A端子とAUX(オーディオ外部入力)端子は標準装備されている。そのいずれかにポータブルオーディオやスマートフォンを接続し使用できれば、はるかに使い勝手はいいだろうが……。
そのほか、センタータンクレイアウトを採用する車種共通の傾向として、前席のヒップポイントがFN2は高めになっている。スポーツカーらしい低めのドライビングポジションが好みならば、FD2のほうが適しているだろう。
これらの特徴を許容できるのであれば、より安価なFN2を選択するのはむしろ賢明といえよう。タイプR各車に共通するレーシーな走り、またFN2だけの前衛的な内外装デザインを味わえるのは、間違いないのだから。
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みんなのコメント
実際出たとしても性能・人気共に現実はこうですよ、といういい例。
とはいえFN2、個としてはいい車なんだけどねぇ。