新型コロナ・クライシスのなか、スーパーカーの今と未来とは? ランボルギーニCEOのステファノ・ドメニカリ氏に、オンラインでインタビューした。
リーマンショック時とは異なる市況
新型コロナ禍でクルマの値段が下がっている。そんな話がちらほらあるものの、個人的にはそう単純な話ではないと感じている。下がっているカテゴリーはもちろんあるけれど(たとえば海外バイヤーの“草刈り場”となっていた高年式の国産人気モデルのオークション)、値上がりこそしないまでも熱が冷めることなく売れているカテゴリーもある(国産旧車やクラシックカー)。
クラシックではない高級ラグジュアリィカーやスーパーカーも、販売の状況は厳しい。新規のオーダーが入らないうえ、高年式の中古車がだぶつき始めた。それでもリーマンショックのときのように“投げ売り”にはならず、なんとか冷静を保っている。本国がロックダウンされる前に輸出された相当量の個体は自粛期間中も粛々と納車されていたし、金融機関から融資を受けて高年式の高額車を売買しているようなショップは、追加融資や返済繰り延べでかえってひと息ついた。
要するになんだか、訳の分からない状況が続いているのだ。急いでクルマを売りたいという人はもちろんいたけれども、その一方で、まるで通販サイトでミニカーを“ポチる”ようにネットと電話でクラシックカーを買い漁っている一般人もいた。リーマンショック時とはまるで様相が違う。
ひとつ推測するならば、あの頃より“経済格差がぐんと広がっている”ことのあらわれではないだろうか。実体経済とかけ離れた動きをみせる株式相場の推移などはその典型だろう。
もちろん今後の展開は未だ不透明だ。景気の底はこれからやってくる可能性も大いにある。前述したように、2カ月近くのあいだ、新たな受注は激減しているし、そもそも本国メーカーがクルマを生産していなかった。その影響はブランドによって違うけれども早くて3カ月、遅くても来年早々には出てくるだろう。
スーパーカーへの憧れは変わらない?
一方で明るい兆しも見えてきた。海外のラグジュアリィ&スーパーカーブランドが続々と生産を再開しているのだ。被害のひどかったイタリアでいち早く工場を止めたランボルギーニやフェラーリが既に生産を再開している。果たしてスーパーカーブランドは今どうなっているのか、そして今後どう変わっていくのか。
ランボルギーニ社のステファノ・ドメニカリCEOにスカイプで単独インタビューを試みた。
西川(以下JN) 工場をはじめ業務を再開されたと聞きました。現場の今はどのような感じでしょうか?
ステファノ・ドメニカリ(以下SD) 社会的責任を果たすため我々は真っ先に休業を決めました。苦渋の決断でしたが、社員の安全を第1に考えた結果です。
医療の最前線で働く人たちに向けては、地域の企業に協力してもらいながら、マスクやフェイスガード、人工呼吸器等を緊急に製造しました。
そしてついに4月27日、工場を再開しました。今のところ稼働率は従来の生産能力に比べて75%程度ですが、6月からは100%稼働する予定です。
オフィス勤務の社員はいまだ出社と在宅勤務が半々の状態ですが、工場ではほとんどのスタッフが仕事を再開し、お客様にクルマをお届けするために仕事に励んでくれています。
休業状態は約5週間も続きましたが、こういうときこそお客様とより密接につながり、情報を届け続けることが大切であると感じました。もちろん短期的にみれば業績の多少の減速は避けられません。けれどもパンデミック直前の我々の業績はとても好調でしたので、できるだけ早く元の状態に戻れるよう頑張っていきたいと思いますし、意外に早く戻れるんじゃないか? と、感じています。
JN “ポストコロナ時代”にはカスタマーのライフスタイルにも変化があらわれてくると思います。そんななかブランドの目指すべき理想は変わりそうですか?
SD スーパースポーツカーへの人々の憧れや欲求は変わらないんじゃないでしょうか? 現時点ではまだネガティヴな状況ですが、ひとたびなにか良い兆候が見えてきたならば、いっきに良い方向へ向かうと思っています。
“ステイ・トゥギャザー”と言うことも、“エモーショナルに生きたい”と思うことも、人間の本質的な欲求だからです。だからこそなるべく早く元の状態に戻ろうとする。みんなそう願っています。
先ほども言いましたが、元の状態には意外に早く戻れるような気がしてなりません。今はまだできませんが、人に集まってもらえるイベントの準備もしておかなければならないと思っています。期待を超える商品さえ用意すれば、みなさんの欲求もすぐに戻る。もうすぐ新しいモデルの発表も控えていますから。
次期フラグシップはV12のハイブリッド!
JN それは楽しみですね。5週間ほど生産が停まりましたが、限定車シアンの顧客へのデリバリーはいつ頃始まるのでしょうか? また次期型フラッグシップモデルのパワートレーンはシアンとおなじものでしょうか、それともまったく新しくなるのでしょうか?
SD デリバリーは年内には始まる予定です。近々、シアンへと繋がるまた新たな展開をお知らせする予定もあります。
発表会や試乗会など“リアル・イベント”の開催にはまだ時間が掛かりそうですが、我々は座して待つつもりはありません。我々が決して眠っているわけではないことを、いろんな手段と通じてお客様やメディアの皆さまに伝えていきたいと思っています。
つい先日もAR発表会という新たな試みで新型「ウラカンEVO RWDスパイダー」を披露しました。今後もいろんなアイデアを試してみたいと思っています。
「アヴェンタドール」の後継車については、残年ながら今は何もお答えすることができません。ただしこれだけは言えます。次期型フラグシップは12気筒を積んだハイブリッドモデルで、アヴェンタドールを超える革新的なスーパースポーツカーになるということです。
JN 今回の新型コロナ禍によって自動車産業は大打撃を受けました。今後、なにが変わって、なにが変わらないと考えますか? パンデミックはどんな教訓をもたらしたのでしょうか?
SD サプライヤーからメーカー、そして販売会社まで、自動車産業には莫大な損害が発生していることは間違いありません。その一方で、クルマが他人と触れずに済む安全な場所であるという価値もまた見直されるようになったのではないでしょうか?
なかでもスーパースポーツカーは貴重な宝石のようなもの。希少価値そのものは変わることがありません。エモーションの象徴であり、価値のある確かな所有物としてこれからも多くの人を惹き付けていくでしょう。今回の危機によって受ける影響はさほど大きくないと思っています。
JN 最後になりますが、日本のランボルギーニ・ファンへメッセージをお願いします。
SD 日本の皆さまのランボルギーニに対する長年にわたる熱狂的なサポートにまずは感謝したいと思います。世界で2番目に大きな市場ですし、歴史的にみても非常に重要な国であることは間違いありません。
イタリア製品のバリューをもっとも理解していただいているのが日本の皆さまです。スタイルや性能についての評価がとても高い。我々もまた日本の皆さまの期待に答えるべく、新しい商品を投入していくつもりです。パンデミックによって今後の企業戦略のポートフォリオに変更があるということはまったくありません。できるだけ早くに魅力的な商品を実際に見ていただける機会を提供したいと思っています。
また皆さまと日本でお会いできることを心から楽しみにしています。
JN 今回はお忙しいところありがとうございました。
文・西川淳
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みんなのコメント
ましてや”~直撃!”って、そんな大上段に構えるほどの取材インタビューではないだろ(笑)
「プリウス」みたいに看板車種の名前だったらエライこっちゃ