FFが故に人気の伸びなかった2代目
text:John Evans(ジョン・エバンス)
translation:KENJI Nakajima(中嶋健治)
2代目ロータス・エランは、英国製スポーツのシンデレラと呼んでも良いかもしれない。お姉さんのエリーゼは脚光を浴びる中で、2代目エランはずっと下積みを積んできた。
1960年代に登場した初代は、伝説的ともいえる存在となった。他方、1989年に登場したM100と呼ばれるエランも、れっきとした2シーターのロードスターだ。
ところが偶然にも同じ年に、マツダMX-5(ロードスター)が登場。タイミングが良くなかった。
皮肉なことに、マツダ・ロードスターも初代エランから多くのヒントを得ていた。縦置きのフロントエンジン・リアドライブレイアウトを採用している。一方のM100は、横置きエンジンの前輪駆動。
スポーツカーの純粋主義者は、動揺を隠せなかった。だが実際に試乗してみると、不安を良い意味で裏切ってくれた。
2代目エランも、高剛性のスチール製バックボーン・シャシーに、軽量なコンポジット製ボディをまとっている。ロータスの基本レシピといって良い。違った点は、ゼネラルモーターズ(GM)から資金提供を受けていた点。
当時のGMは、いすゞ社の株式も所有していた。結果、2代目エランへは日本製の信頼性に優れた、1.6L 4気筒エンジンが搭載されている。ロータスが大きく手を加え、自然吸気とターボチャージャー付きが選べた。
自然吸気は130psを発生させ、ターボ付きは165psを獲得。SEというグレード名が与えられ、人気も高かった。発売当初は自動車雑誌の評価も良く、売り上げは堅調だった。だが、長くは続かなかった。
見た目は魅了させるほどとはいえず、生産コストも高く付いた。横置きの前輪駆動が足を引っ張り、人気が加速することはなかった。
日本製エンジンのおかげで信頼性は高い
GM傘下時代のエランはシリーズ1と呼ばれ、ブガッティがロータスを買収した後の1995年以降に作られたシリーズ2とは区別される。ブガッティは在庫エンジンの存在を知ると、2代目エランを再生産したのだ。
S2のM100型エランは、ハンドリングが若干シャープになっていた反面、触媒の追加で最高出力が158psへとわずかに落ちている。珍しいS2の方が、台数の多いS1よりもプレミアムが付いている。とはいえ、状態を優先した方が良い。
在庫エンジンがなくなったところで、エランS2の生産も終了。その後、さらに韓国キア社がモデル生産の権利を買い取り、韓国市場へわずかな数を供給した。
生産終了から時間が経つが、GMの資金力といすゞ製エンジンのおかげで、今でも状態を保っているエランが多い。注意したい点はあるものの、もし良好なクルマを見つけたのなら、きっと楽しい相棒になってくれるだろう。
英国なら、状態の良いエランでも、1万2000ポンド(159万円)ほど出せば手に入る。中古のエリーゼなら、スターティング・プライスといえる価格帯だ。
7500ポンド(99万円)から1万ポンド(133万円)くらい出せば充分。エンジンオイルとフィルター交換を済ませる程度で、ほとんど手間いらずのエランを運転できるだろう。
今後エランの価格は上昇するのか。ロータスの専門家、ビンセント・ヘイドンによれば、エリーゼの価格が上昇する限り、エランの価格も吊られると考えている。
だが、長期間放置されていたクルマを、高額費用を投じてレストアすることには否定的。まだ新型エランは登場していないが、復活の噂は存在している。
不具合を起こしやすいポイント
エンジン
いすゞ製のエンジンは、定期的なメンテナンスさえしていれば故障知らず。9600km毎のエンジンオイルとフィルター交換が不可欠ではある。
冷却系のホースからの漏れやヒビ、クリップの腐食などには気をつけたい。
トランスミッション
こちらも堅牢で、シンクロの故障などもほとんど聞かない。シフトリンケージ、特にボールリンク部分は摩耗する。まれに切断することもある。
クラッチは滑りがないかを確かめる。クラッチペダルを踏んで手前側でつながる場合、摩耗が進んでいる証拠。
サスペンションとブレーキ
ボディとの間に湿気が溜まりやすく、リアサスペンションの腐食には注意。亜鉛メッキされたウイッシュボーンに交換されているクルマがあったが、良い対処法だといえる。
基本的にサスペンションもタフ。経年劣化として、ダンパーからのオイル漏れや、スプリングが折れることは、想定の範囲内。ホイールアライメントは調整が可能。タイヤの片減りがひどい場合、アライメント調整が必要な場合もある。
ボディ
コンポジットボディだが、塗装面の割れは珍しい。見えるひび割れは、過去に修復した可能性を示している。ボディパネルのチリは均一だが、開閉の多いボンネットやドアは位置調整が必要かもしれない。ドアやトランクリッドのゴムシールの状態は確かめたい。
ソフトトップ
フレームの変形や、ソフトトップの磨耗などを確かめる。正しく開閉できていても、雨漏りする可能性はなくはない。
インテリア
GM製部品を用いており、品質は同年代のクルマより劣る。少なくともスペアパーツは入手しやすい。レザーシートの運転席側は摩耗しやすく、張り替えが必要なことも。
専門家の意見を聞いてみる
ビンセント・ヘイドン ビンセント・ヘイドン・カーズ代表
「以前ロータスのディーラーで働いており、エランのことは良く覚えています。販売インセンティブなど、エスプリより強いプッシュがロータスからありました」
「前輪駆動だと難色を示したお客様も、試乗車へ乗れば、仕上がりを充分に理解してもらえました。皆さん試乗後は、満面の笑顔で降りてきました。常にバックオーダーを抱えていたほどです。いすゞ製のエンジンも、販売の助けになりました。信頼性では定評がありましたから」
「今ではすっかりバーゲン価格です。7500ポンド(99万円)から1万ポンド(133万円)で、整備記録の揃った状態のいいクルマを購入できます。こまめなオイル交換は不可欠なので、定期的な整備は大切です」
知っておくべきこと
熱心なロータス・コレクターなら、ロータスからの正規証明書を手に入れるというのはどうだろう。
約50ポンド(7000円)の費用で、エンジンとシャシー番号、製造日、新車時のディーラーを記した証明書をオーナーへ発行してくれる。さらに30ポンド(4000円)を上乗せすれば、同じボディカラーの生産数など、追加情報も得られる。詳しくは、ロータス・カーズのサイトにて。
いくら払うべき?
3500ポンド(47万円)~4999ポンド(66万円)
走行距離は多め。英国では3850ポンド(51万円)で、18万kmを走った1991年式ターボが見つかった。過去オーナーは10名もいるようだが。
5000ポンド(67万円)~7999ポンド(105万円)
調子の良さそうなターボ車が選べる。走行距離12万km前後。10万km走った1991年式を、7750ポンド(103万円)で見つけた。
8000ポンド(106万円)~9999ポンド(133万円)
整備記録も整った、状態の良い2代目エランが選べる。
1万ポンド(134万円)以上
強気な価格だが、状態はかなり良いだろう。走行距離10万7000kmの1996年式エランS2で、整備記録も揃った主要ディーラーが売り手のクルマが1万4000ポンド(186万円)だ。
英国で掘り出し物を発見
ロータス・エランS2 登録:1995年 走行:11万2600km 価格:9500ポンド(126万円)
とても状態の良さそうなエランS2。整備は主要ディーラーか専門店で受けている。タイミングベルトは交換してあり、ソフトトップは2011年に張り替えられている。ガレージ保管で、サーキット走行はないという。
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