国内外のミドルフォーミュラを中心に、ここ1週間の話題を毎週火曜日にお届けする『WEEKLY ROUND UP Formula』。今回は2026年6月12~14日にスペイン・バルセロナのカタロニア・サーキットで開催されたFIA F3第3戦、そしてFIA F2第5戦の関連トピックスをお届けする。
■山越陽悠が初表彰台。選手権7位に浮上/FIA F3バルセロナ週末レポート
山越陽悠がFIA F3初表彰台。激闘の首位争いの末に2位を掴む/第3戦バルセロナ
F1、FIA F2を目指す若手が参戦するFIA F3。2026年シーズンは日本から加藤大翔(ARTグランプリ/HFDP)、りー海夏澄(ARTグランプリ)、山越陽悠(VAR)、中村仁(ハイテック/TGR-DC)の4名が参戦している。前戦モンテカルロから連戦となるなか、第3戦は開幕前のプレ・シーズンテストの舞台でもあったカタロニア・サーキットで開催された。
フリー走行から、スペインを本拠地とするカンポス・レーシングがトップ3を占めて他を圧倒。なかでもメルボルン、モンテカルロで連続ポールポジションを獲得したテオフィル・ナエルはフリー走行を首位で終えると、予選でも好調を維持。チームメイトのウーゴ・ウゴチュクウ(カンポス・レーシング)を0.039秒上回り、3戦連続となるポールポジションを獲得した。さらに、ナエルから0.135差の3番手に山越。0.237秒差の5番手に加藤が続き、日本勢ふたりも好位置につけた。
13日に行われた21周のスプリントレース開始直前、フォーメーションラップ開始のタイミングで8番グリッドの加藤の車両は動き出すことができず、加藤はピットスタートに変わった。スプリントレース後に更新された加藤のSNSによると、ギヤが入らなかったという。
スタートではリバースポールからスタートしたジェラード・シエ(ダムス・ルーカスオイル)が好スタートを決めて、2番グリッドスタートのジェームズ・ウォートン(プレマ・レーシング)の行手を阻む。さらに3番グリッドスタートのフレディ・スレイター(トライデント/アウディ育成)がウォートンに仕掛け、1周目のターン5でスレイターが2番手に浮上した。
DRSが使えるようになると、ホームストレートエンドのターン1は絶好のオーバーテイクポイントとなり、3周目にウォートンがスレイターのインに飛び込み2番手を奪取する。その時点で首位のシエとウォートンの間には1.5秒のギャップが開いていたが、ウォートンは一気に間合いを詰め、5周目のターン1でトップに浮上。そのままチェッカーまでウォートンが首位を守り切り、今季初優勝を飾った。
今季は不運が続き、第2戦モンテカルロ終了時点でノーポイントとなっていたウォートンにとってはこれが今季初入賞。また、第2戦モンテカルロ終了時点でチームランキング最下位だったプレマ・レーシングにとっても、待望の今季初勝利かつ今季初表彰台だった。シエをかわしたスレイターが2位。そして前戦モンテカルロのスプリントレースを制したシエが3位で自身2度目の表彰台を獲得した。
日本勢は10番グリッドスタートの山越が7位に入り、今季初入賞で4点を獲得。14番グリッドの海夏澄はスタートで大きくポジションを下げて一時は27番手まで後退したが、レースペースは良く14位まで挽回してチェッカーとなった。ギヤトラブルでピットスタートとなった加藤は猛烈なオーバーテイクショーを展開し、15位でチェッカー。30番グリッドスタートの中村は18位、この日のハイテックは3台ともにペース不足に悩まされていた。
14日に行われた25周のフィーチャーレース。3番グリッドの山越が完璧なスタートを見せた。ターン1手前で一度はナエルの前に出るが、山越はターン1でコース外のエスケープに出てしまう。ターン3で山越はナエルにラップリーダーの座を明け渡し、2番手でオープニングラップを終えた。一方、5番グリッドの加藤はスタートで大きく出遅れ、一時は11番手を下げてしまう。
2番手に浮上した山越はDRSも活用し、2周目に1分32秒902というこの時点でのファステストを更新する走りでナエルのDRS圏内をキープ。ただ、3番手にはウゴチュクウがつけており、決して油断はできない。トップ3のナエル、山越、ウゴチュクウは等間隔で周回が続くが、2番手山越は5周目に1分32秒408で再びファステストを更新。10周目を迎えると山越と3番手ウゴチュクウのギャップは1.5秒まで広がり、DRSを失ったウゴチュクウは4番手ブルーノ・デル・ピノ(VAR/ペドロ・デ・ラ・ロサの甥)を抑えるのに必死となる。
これで首位ナエル攻略に集中できる状況となった2番手山越は12周目のバーチャル・セーフティカー(VSC)明けから、ナエルを本格的に揺さぶり始める。トップのナエルは長いホームストレートで蛇行し、山越にトウ(スリップストリーム)を使わせないなどのディフェンスを見せる。
15周目の最終コーナーでウゴチュクウがグラベルにはみ出すミスを喫し、デル・ピノが3番手に浮上。さらに、16周目には首位ナエルがペースを上げ、2番手山越に1秒以上のギャップを開けた。DRSが使えなくなった山越は、徐々にナエルとのギャップが開く事態に。
ただ、山越はタイヤが厳しくなった残り3周/23周目の段階で、ナエルとのギャップを1.1秒まで縮めると、残り2周/24周目を1秒差で迎えた。ただ、2025年のマカオGP/フォーミュラ・リージョナル・ワールドカップ勝者であるナエルは手強い。絶対に山越にDRSを使わせないように、1秒のギャップを死守してファイナルラップを迎えた。
そして25周のレースはナエルがポール・トゥ・ウインでFIA F3初優勝。今季唯一のポールシッターがようやく勝利を掴んだ。山越はFIA F3初表彰台となる2位。最終的なナエルとのギャップは0.7秒だった。そして20周目にル・ピノを攻略したウゴチュクウが3位に続いた。
日本勢では加藤が9位で入賞。14番グリッドからスタートした海夏澄は13位、30番グリッドスタートの中村は22位となった。なお、ファステストラップは山越が5周目に記録した1分32秒408となった。
この週末に23点を重ねた山越はドライバーズ選手権7位に浮上。選手権9位の加藤(18点)を上回り日本勢最上位となった。中村は選手権17位(6点)、海夏澄は選手権20位(2点)で続いている。
2026年FIA F3、次戦となる第4戦は6月26~28日にオーストリア・シュピールベルクのレッドブルリンクで開催される。
■2026年FIA F3第3戦バルセロナ 結果抜粋
●フリー走行
・1番手:テオフィル・ナエル(1分28秒422/カンポス・レーシング)
・2番手:ウーゴ・ウゴチュクウ(+0.223/カンポス・レーシング)
・3番手:エルネスト・リベラ(+0.365/カンポス・レーシング/レッドブル育成)
・4番手:アレサンドロ・ジュスティ(+0.612/MPモータースポーツ/ウイリアムズ育成)
●予選
・1番手:テオフィル・ナエル(1分24秒263/カンポス・レーシング)
・2番手:ウーゴ・ウゴチュクウ(+0.039/カンポス・レーシング)
・3番手:山越陽悠(+0.135/VAR)
・4番手:ブランド・バドエル(+0.233/ロダン・モータースポーツ)
●スプリントレース
・1位:ジェームズ・ウォートン(プレマ・レーシング)
・2位:フレディ・スレイター(トライデント/アウディ育成)
・3位:ジェラード・シエ(ダムス・ルーカスオイル)
・4位:トゥッカ・タポネン(MPモータースポーツ/フェラーリ育成)
●フィーチャーレース
・1位:テオフィル・ナエル(カンポス・レーシング)
・2位:山越陽悠(VAR)
・3位:ウーゴ・ウゴチュクウ(カンポス・レーシング)
・4位:ブランド・バドエル(ロダン・モータースポーツ)
●ドライバーズランキング(第3戦終了時点)
・1位:ウーゴ・ウゴチュクウ(58ポイント/カンポス・レーシング)
・2位:テオフィル・ナエル(52ポイント/カンポス・レーシング)
・2位:ブルーノ・デル・ピノ(48ポイント/VAR)
・3位:フレディ・スレイター(47ポイント/トライデント/アウディ育成)
●チームランキング(第3戦終了時点)
・1位:カンポス・レーシング(126ポイント)
・2位:VAR(99ポイント)
・3位:ロダン・モータースポーツ(57ポイント)
・4位:トライデント(56ポイント)
■2026年FIA F3第3戦バルセロナ 日本勢結果
●#10 加藤大翔(ARTグランプリ/HFDP)
・フリー走行:5番手
・予選:5番手
・スプリントレース:15位(8番手スタート→ピットスタート)
・フィーチャーレース:9位(5番手スタート)
・ポイントランキング:9位(合計18ポイント)
●#12 りー海夏澄(ARTグランプリ)
・フリー走行:7番手
・予選:15番手
・スプリントレース:14位(14番手スタート)
・フィーチャーレース:13位(14番手スタート)
・ポイントランキング:20位(合計2ポイント)
●#14 山越陽悠(VAR)
・フリー走行:12番手
・予選:3番手
・スプリントレース:7位(10番手スタート)
・フィーチャーレース:2位(3番手スタート)
・ポイントランキング:7位(合計23ポイント)
●#25 中村仁(ハイテック/TGR-DC)
・フリー走行:15番手
・予選:30番手
・スプリントレース:18位(30番手スタート)
・フィーチャーレース:22位(30番手スタート)
・ポイントランキング:17位(合計6ポイント)
※掲載順はカーナンバーに準じる
■FIA F2トピックス:半ズボン着用は競技規則違反。500ユーロの罰金
FIA F2とFIA F3のチームスタッフは、ピットレーンで仕事に取り組む際に長ズボンを着用する義務がある。これはFIA F2とFIA F3の競技規則22条15項の『すべてのチームおよび技術スタッフは、すべての練習走行およびレース中、ピットレーンでは長ズボンを着用しなければならない』で明文化されている。
意外にもこの22条15項による違反は、例年春から初夏にかけてたびたび発生しており、2026年FIA F2第5戦バルセロナでもチームに500ユーロ(約92,680円/公示日のレート換算)の罰金という裁定が下っていた。
審査委員会発表によると、6月12日(金)の予選セッション中にカンポス・レーシングの6号車(ニコラ・ツォロフの車両)に携わるチームスタッフがピットレーンの作業エリア内で半ズボンを着用しており、これが先に記したFIA F2競技規則22条15項違反ではないかという疑いが生じた。審査委員会は予選終了後、カンポス・レーシングの代表者を召喚し聴取を実施した。
カンポスレーシングの代表者は、半ズボンを着用していた男性は6号車のフィジオ(理学療法士/チームではなくドライバーと契約を結ぶケースが多い)であり、カンポス・レーシングで実務を担当するチームメンバーではないと主張。ただ、審査委員会は過去の判例に準じ、22条15項は『フィジオを含む車両付近で作業にあたるすべての人員に適用される』と判断し、カンポス・レーシングに対し500ユーロの罰金を課したのだった。
また、今季第2戦マイアミのフリー走行では、AIXレーシング(エマーソン・フィッティパルディJr.担当スタッフ)、ダムス・ルーカスオイル(ロマン・ビリンスキー担当フィジオ)が同様の違反で500ユーロの罰金を支払っており、22条15項違反による罰金は今季3度目の事例となった。
なお、罰金は裁定の通知から48時間以内に、FIA国際自動車連盟に向けて銀行振込で対応しなければならない。
■フェラーリ育成カマラ、初優勝で選手権7位から3位に浮上
FIA F2第5戦のフィーチャーレースでFIA F2初優勝を飾ったラファエル・カマラ。四輪ステップアップ前からフェラーリ・ドライバー・アカデミーの一員として強力なサポートを得ると、2024年に激戦のフォーミュラ・リージョナル・ヨーロッパ、そして2025年FIA F3でチャンピオンに輝き、2026年のFIA F2にはチャンピオンチームのインビクタ・レーシングからデビューするという、エリート街道を歩んできた。
ただ、開幕戦メルボルンのフィーチャーレースで2位、第2戦マイアミのフィーチャーレースで3位となるも序盤戦は勝利に恵まれず、第4戦モンテカルロでは初ポールポジション獲得も、フィーチャーレースはマシントラブルでリタイアとなっていた。モンテカルロ終了時点でカマラは選手権7位、同じくフェラーリ育成のディーノ・ベガノビッチ(ダムス・ルーカスオイル)が4点差の選手権6位につけていた。また、ベガノビッチはバルセロナの週末に3度目のF1フリー走行1回目にも出走していた。
それだけに、バルセロナのフィーチャーレースにおけるポール・トゥ・ウインはカマラの悲願だった。
「ようやく長い間示してきたポテンシャルを、結果に繋げることができて本当に、本当に嬉しいね。モナコでは優勝を逃してしまった。だけど、そのわずか1週間後に優勝を果たすことができた。何と言えばいいかな……素晴らしい週末だった」と、カマラ。
「スタートからクルマにとても馴染むことができ、選んだ戦略も完璧だった。でも、レースは決して楽なものではなかった。序盤はタイヤマネジメントしなければならず、終盤のスティントでは順位を挽回するために全力を尽くさなければならなかった。でも、すべてが上手くいき、この結果でチームとフェラーリ・ドライバー・アカデミーのみんなに報いることができて本当に嬉しいね」
バルセロナで計30点を重ねたカマラは選手権首位のガブリエレ・ミニ(MPモータースポーツ/アルピーヌ育成)から17点差の選手権3位に浮上した。
■前年2位チームのハイテックが暫定8位。「シーズンはまだ長い」
2025年シーズンをチームランキング2位という成績で終えたハイテック。ただ、FIA F2参戦3年目の宮田莉朋と参戦初年度のコルトン・ハータ(キャデラックF1テストドライバー)というラインアップに刷新した2026年、序盤戦は苦戦が続き未だ表彰台を獲得できていない。そしてバルセロナでの得点はハータの4点に留まり、暫定チームランキングは8位となっている(ランキング7位トライデントとは同ポイント)。
バルセロナ終了後、ハイテックがチームの公式サイトに掲載したFIA F2レースレポートにはドライバー陣のコメントはなく、ハイテックのFIA F2レースエンジニアリング責任者を務めるヤン・スーマンのコメントが掲載された。
「我々にとって、この週末は明暗が分かれる結果となった。一方でペースは良く、ポイントを獲得することができた。コルトンは初の表彰台を目指して素晴らしい走りを見せてくれた。シーズンはまだ長いからチャンスはたくさんある。両ドライバーともこの厳しい週末を乗り越え、2週間後のシュピールベルクに向けて前向きな姿勢を持ち続けていく」
キャデラックF1の次のレギュラー有力候補のハータ、そして日本の宮田がハイテックから出走しているだけに、ハイテックの復調が実現される日を心待ちにしたい。
[オートスポーツweb 2026年06月16日]
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みんなのコメント
97年ミナルディに移籍した右京も、チームスタッフに短パンの人間がいることに「ルールの中身を理解せず、見た目だけの問題としてるからこういうスタッフがいる。こういうところからもミナルディが下位なのがわかる。上位チームはきちんと長ズボン着用してますからね」
ってことを川井氏のインタビューで答えてるしね。
昔、他のチームが軒並み真夏はスタッフ全てハーフパンツに切り替えていったのにマクラーレンだけがスタッフにロングパンツ強制してたな。
ロンデニス含め当時のマクラーレン首脳陣は過去の栄光にしがみつく事が全てなんだろうなぁって実感した出来事。