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英国車の戦後史、新しい軽自動車、日産ファンの気持ち【復刻・徳大寺有恒「俺と疾れ!!」】

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英国車の戦後史、新しい軽自動車、日産ファンの気持ち【復刻・徳大寺有恒「俺と疾れ!!」】

 2014年11月に逝去した自動車評論家、徳大寺 有恒。ベストカーが今あるのも氏の活躍があってこそだが、ここでは2013年の本誌企画「俺と疾れ!!」をご紹介する。(本稿は『ベストカー』2013年11月10日号に掲載したものを再編集したものです/著作権上の観点から質問いただいた方の文面は非掲載とし、それに合わせて適宜修正しています)。

■英国車の戦後史

[ヴォクシー]か[セレナ]ならどっち!? [ミドルサイズミニバン]比較

徳さんがもっともイギリス車的なクルマの1台として挙げる初代レンジローバーは高級というだけでなく、スポーティな男の乗り物という意味で評価される。SUVがかっこいいとされるのもこのクルマがあってこそだ。開発者はスペン・キングでローバーP6も彼の作品だ

 私の大好きなイギリス車は1950年代に全盛期を迎える。この時代イギリスにはまだまだ自動車メーカーが多数存在し、最良の光を放っていた。イギリスにおける2大メーカーであったオースティン・モータースとナッフィールド・オーガゼーションが合併しBMC(ブリティッシュ・モーター・コーポレーション)ができたのが1952年だ。オースチン・モータースにはオースチンがあり、ナッフィールド・オーガゼーションにはMG、ウーズレ−、ライレー、モーリスがあり、文字通り、大同団結であった。BMCから1959年にはMINIが生まれ、さらなる輝きを見せた。

 その輝きも1960年代に入ると衰え始める。最大の輸出先であるアメリカが排ガス規制や安全性強化に踏み切ると、競争力のなかったイギリス車は低迷していく。40も50もあったメイクスがどんどんなくなっていった。

 替わって台頭したのが日本車だ。英国車の凋落は止まらず、ジャガーやディムラー、ランドローバーを持つローバーグループ、バンデンプラ、トライアンフがグループに加わって、ブリティッシュ・レイランド・モーター・コーポレーションになったのは1967年のことだ。

 とはいえ、似たようなブランドが多く、輸出に耐えられる競争力があったかといえば大いに疑問でライレーやウーズレーが消えていくなか、リーダーとなったのはオースチン・ローバーだ。

 ローバーは古い会社でランドローバーが有名だが高級セダンなどを生産していた。1975年ブリティッシュ・レイランド・モーター・コーポレーションは国有化され、ブリティッシュ・レイランドとなって再出発となる。

 このあたりに事情はきわめて複雑で、英国車のことがよくわからないという声が聞こえてくるのも無理からぬことだ。救いの手を伸ばしたのが、ホンダでブリティッシュ・レイランドの株式の20%を取得し、ブリティッシュ・レイランドは英国におけるホンダの子会社の20%の株式を取得し資本提携した。

 ブリティッシュ・レイランドはオースチン・ローバー・グループへと名を変える。当時、MINIはオースチン・ローバーから販売されていて、日本などはローバーミニが大人気となった。

 ローバー・グループは航空機会社ブリティッシュ・エアロスペースに売られたあともホンダとの関係は続き、ほぼ経営権を手中に治めるかと思った矢先、BMWがローバー・グループを買収してしまった。だから、ホンダブランドからMINIが販売されていたかもしれない。このあたりは綾というよりない。

 MINIは現在もBMWの元でブランドが生き残っているが、他のブランドは壊滅してしまった。

 ブリティッシュ・レイランドの解体はイギリスの自動車工業の終わりを意味した。私にとっての多くの好ましいメイクもなくなってしまった。しかし、ジャグァは残った。ジャグァは世界をマーケットに売り、メルセデスのライバルとして生き残った。好きなブランドをもうひとつ挙げるとすればモーガンでローバーはなく、その代わりランドローバーがある。

 ランドローバーの頂点に立つモデルがレンジローバーだが、このレンジローバーを中心としたランドローバー各車は好ましいモデルだ。残るはBMWグループのロールスとなるがいずれにしろ、高級車として生き残っている。

 イギリス車は贅沢だが、その贅沢さをひけらかさない。イギリス車は地味で静かだ。そのくせとても贅沢という、独特のタッチはドイツ車はまねできないし、イタリア車でもない。やはりイギリス、“ジョンブル”なのだと思う。

 これからの季節レンジローバーはイギリス的なおしゃれがとてもよく似合う。ツイードのジャケットやバブアーのコートといった服装の似合うクルマである。世の中、イタリアンルックが全盛だが少し古めかしいイギリスタッチの服装術はやはりいいと思う。少し気温が低ければニットのヴェストがいいかもしれない。あるいはカーデガンもいい。

 いいクルマ、いいファッション、いい趣味、これはジェントルメンのひとつの教養だろう。イタリアファッションに身を固めるよりも古めかしいイギリス好みを選ぶ。これが私の流儀だ。

 もちろん新しさも大事だが新し過ぎないこと。ほどほどかっこよく、ほどほど流行に乗っかっている。ここが大事だと思っている。

■英国のオープンカー

(日本車にロードスター以外のオープンが生まれることと、英国ブランドをどこかが買って再び英国ブランドの小排気量オープンが誕生しないかと心の中で思っています、という読者の方からの声に)

*     *     *

ドロップヘッドクーペ…幌を持つオープンモデルで、幌に内張があり、屋根を閉じればクーペと同じ空間を持つことができるモデル。ロールス・ロイス・ファントム・ドロップヘッドクーペはその名と形を現代に伝えている

 イギリスのロードスター、あるいはドロップヘッドというオープンモデルはもう生まれてこないでしょう。

 本来、イギリスは古い自動車工場が数多くあり、大量生産にはない個性的なモデルが面白かったのです。しかし、もうそんなクルマは考えられません。

 ロードスターやドロップヘッドクーペ、それに固定式のルーフを付けたフィクストヘッドクーペのボディ成型はイギリスを発するところが多いのです。現在ではドイツ車のカブリオレを日本でも多くの人が乗っていますが、イギリスが最も多くのボディタイプを生みました。

 日本ではオープンといいますが、イギリスではロードスター、ドロップヘッドクーペ、コンバーチブル、ドイツやフランスではカブリオレやカブリオといろいろな呼び方があります。

 ロードスターは本来商業的な意味が強く、マツダロードスターなどは、コンバーチブルやドロップヘッドクーペというべきものでしょう。

 ちなみにクーペは切られた馬車を表すフランス語が元で“短い”という意味を持つようになりました。クルマのボディの名称は一度しっかり勉強したいですね。

■軽自動車の新規格

(TPPほかで軽自動車の優遇が問題になるなか(※当時)で、軽自動車を作る側からも新しい提案が必要だと思います、徳大寺さんはどうお考えでしょうか? という質問に答えて)

*     *     *

 日本の軽自動車は日本の誇るべき技術のひとつだと思います。800ccにしたら1000cにしろ世界中のクルマのスタンダードを燃費を基準にしたいですね。その点では日本の軽自動車は十分じゃないでしょう。

 軽自動車はやや重くなり過ぎました。エアコン装備で700kgプラスαが理想ですが、多くの軽自動車は900kg以上あります。それにあれこれ装備を付ければ1t近くになってしまいます。

 もっとシンプルで燃費のいい軽自動車がほしいですね。その点ではミライースやアルトエコはいい線かもしれません。

 とにかく新車の販売台数でみると40%近い人が軽自動車を選んでいます。それだけ期待が大きいのですが660ccのパワーユニットで充分なクルマを作ることはとても難しいのです。それだけに軽量化がカギとなり、各社とも熾烈な研究開発を行っています。

 輸出まで考えるともう少し大きな排気量となりますが、そうするとリッターカーなどと変わらなくなり、軽自動車の立ち位置が難しくなってくるかもしれず、低価格で提供することも難しくなるかもしれません。

■パッカードの強烈な印象

(パッカードの流麗なデザインに、こんなにかっこいいクルマを作れるクルマと戦争しちゃ勝てっこないという気持ちを抱いた、という年配の読者の方からの、パッカードというブランドは日本ではどのような受け止め方をされていたのでしょうか? という質問に)

ハドソン・ホーネット…ステップダウンというフロアパンをフレームよりもしたにレイアウトすることで重心の低いデザインを可能にした画期的なモデル。エンジンはサイドバルブの5L直6とV8が主流になりつつある時代にあって遅れていた

*     *     *

 パッカードはロールスやディムラーと肩を並べるアメリカの高級車メーカーで、小林旭さんの“自動車唱歌”だったと思いますが、パッカードが出てきます。

 戦後のクリッパーなかでも、直列8気筒のスーパーエイトが有名ですが、パトリシアンやホークを思い出します。大量生産に乗り遅れたメーカーとして晩年は哀れでしたが、最後まで誇りを失わない態度は立派でした。

 現在ならスーパーチャージドエンジンにするとか生き残る方法はあったと思いますが、V8ユニットへの移行が遅れたことが命取りになりました。

 パッカード・ゴールデンホークはかっこいいクルマでした。パッカードは1950年代後半に、スチュード・ベーカーを吸収合併し、当時はナッシュとハドソンが合併しアメリカン・モーターズ・コーポレーション(AMC)となった時代でもあります。

 このハドソンが作ったクルマにハドソン・ホーネットがあった。“ステップダウン”つまり、フロアパンをフレームよりも低くレイアウトしたおかげで、重心の低いデザインが可能になったものだ。

 クルマが大衆化する直前、1950年代のアメリカ車は、豪華でうっとりするようなモデルがたくさんあります。

■日産ファンの気持ち

(個人タクシーユーザーの読者の方からの、日産には情熱がなくなったように感じます。もう少しユーザーの気持ちを配慮したラインアップが出来ないかと思うのですが、徳大寺さん日産についてどう思われますか? という質問に)

*     *     *

 日産はこと日本に限れば、シェアは小さくなり、往年の日産ではないのです。それなのにフルラインアップを諦めていないように見えます。

 もちろんディーラーのことを考えると車種は多いに越したことはありませんが、もう少し減らすべきでしょう。フーガは悪いクルマではありませんが、スカイラインに絞り、マーチとスカイラインの間に2、3車種あればいいと思います。

 現在のボスである、ゴーン氏の決断になるところですが、国内に限れば、スポーティさを売りにしたクルマで固めてしまうのも手でしょう。

 もちろん国内の販売会社は難しいと思いますが、一度改めて国内の販売車種を考えてみることも必要でしょう。

■徳大寺有恒の「俺と疾れ!」リバイバル特集

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みんなのコメント

9件
  • hir********
    徳大寺先生は、今の日産をみて何とコメントするんでしょうね、、
  • dar********
    昔の日産で「社長が態度がデカく横柄だった」と証言する人が多かった。しかし日産内部で社長よりも態度がデカいと言われていたのが労働組合の委員長だった。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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