この記事をまとめると
■世界中でかつての無限製パーツが高騰している
■CR-Zをベースとしたコンプリートカー「CR-Z MUGEN RZ」も存在した
■新車価格よりはまだ安く販売されておりプレミア価格はついていない穴場物件だ
ワークス仕様のハイブリッドコンプリートカーの中身
ホンダファンであれば、「無限」の2文字に惹かれない人はいないだろう。無限とは、いわずもがな、ホンダのチューニングを得意とする、M-TECなる企業が有するブランドだ。ホンダとの直接的な資本関係はなく、ホンダの子会社でも関連企業でもないのだが、ディーラーでは純正オプションパーツと同様の扱いで、新車用アクセサリーを展開している。また、ホンダと協業という形でF1にエンジンを供給したり、自社開発のエンジンでF1に参戦するなど、世界最高峰の舞台でも活躍してきた。
そんな無限だが、ここ数年でネオクラシックカーのブームなどの影響か、いままでにない形で海外を中心に絶大な人気を得るようになってきており、人気のネオクラシックカー向けの無限パーツは、どれも尋常じゃない値上がりを見せている。たとえば、インテグラやシビック用のエアロ、一部ホイール、そのほかのアクセサリーなど、状態がよければ高年式の中古の軽自動車が買えてしまうほどのプライスになることも珍しくない。フルで当時モノのエアロが組まれた車両が出ようものなら、通常の中古車価格の何倍にもなるほど。世はまさに無限バブル真っ只中である。
その極みともいえるのが、2007年9月に販売された、3代目シビックタイプRをベースに無限がチューニングしたコンプリートカー、「無限RR」である。専用のカーボン製バンパーや専用チューニングされたエンジンなどが特徴で、300台限定だったこのクルマはたった10分で完売した。とはいえ、このクルマも10年ほど前までは300万円前後で中古を狙うことができたが、ここ数年でその相場は5倍以上に膨れ上がり、おいそれと手が出せないモノになってしまった。
そんな無限ブームに沸く昨今、”新たなブーム”が来る前に狙っておきたい、やや影に埋もれた(!?)1台を紹介したい。
それが、2012年11月に登場した、「CR-Z MUGEN RZ」である。エコとスポーツをイメージしたカラーとして「青」を設定した背景もあってか、このクルマのボディカラーはアズールブルーメタリックと名付けられた専用色のみでラインアップ。こちらも無限RR同様に300台限定のモデルであった。ミッションは6速MTだけとなる。RZの略は「R」が「Racing」、「Z」が「究極」を意味していた。
このクルマの特徴は、なんといっても無限が仕上げたコンプリートカーである点にほかならない。
たとえば、エクステリアパーツは専用デザインを採用し、軽量化と空力を最優先したスペシャル仕様。しっかりダウンフォースを稼ぐ設計とのことで、高速巡行時の安定感もノーマルと比較すればずば抜けていた。リヤスポイラーは非常に高価なカーボン製であった。
また、足まわりも専用設計で、減衰力5段階調整式の専用サスペンションや、制動力を強化した大径ブレーキローターを組み合わせ、ハードな走行にも耐えられるポテンシャルを秘めていた。なお、リヤを固めることでフロントに荷重をかけやすくさせて、回頭性を向上させるという考えで、このクルマの足まわりは仕上げられていた。ホイールも専用デザインの鍛造モノ(17インチ)をインストール。
チューニングが難しいハイブリッド車を手懐けた
そして極め付けは、なんといってもその心臓部であるエンジンにある。なんとこの「CR-Z MUGEN RZ」は、後付けで遠心式のスーパーチャージャーが1.5リッターエンジンにドッキングされ、ノーマルとは比べものにならないパワーが与えられていた。「CR-Z MUGEN RZ」は後期型のCR-Zがベースとなっているので、新型のリチウムイオンバッテリーが搭載され、デビュー当時のモデルよりさらに軽快で瞬発力のある仕様となっていたが、それにさらなる力を無限は与えていた。このスーパーチャージャーはロトレックス製だ。
これにより、1.5リッターのi-VTECエンジン+モーター+スーパーチャージャーの組み合わせで、最高出力は156馬力、最大トルク185Nmと大幅アップ。ノーマルの6速MT車が最高出力120馬力、最大トルク145Nmだったことを見ると、大幅にパワーアップしていることがわかるはずだ。モーターに手は加えられていない。スーパーチャージャーによる加速はガツンとくるものではなく、じわじわ加速するような、伸び感重視のフィーリングだったそう。
ちなみにCR-Zは、無限が国内最高峰のモータースポーツであるSUPER GTに市販車と同じハイブリッド仕様で2012年の途中から参戦させていたこともあり、それ向けに開発していたレース用インタークーラーと同等のコアを採用し、高い冷却性能を秘めていたところも注目に値する。
スーパーチャージャーは排気効率も重要な要素なので、専用エキゾーストシステムも導入されているほか、専用ECUに3モードドライブシステムを組み合わせ、最高出力&最大トルクを惜しみなく発揮できる「PLUS SPORTシステム」も選べるようになっていた。
インテリアも専用デザインで、テーマカラーの青を多く取り入れた仕様だったほか、過給機がついている証明である、ブースト計が追加されていた。そのほかにも、限定車には欠かせないシリアル番号入りプレートや、無限のカーボン製シフトノブ(専用デザイン)が取り付けられ、乗っていても「無限のコンプリートカー」に乗っていることを忘れさせない演出がなされていた。見ても乗ってもスペシャルな1台だったのだ。
なお、この「CR-Z MUGEN RZ」は、2011年のグッドウッド・フェスティバルオブスピードや2012年の東京オートサロンで展示された、グリーンのボディカラーが特徴的な「CR-Z MUGEN RR Concept Pre Production MODEL」がモデルとなっており、こちらはタイムアタックの聖地、筑波サーキット2000では、通常のCR-Zより5.6秒速い1分08秒612を記録している。ただしこちらは市販車よりも+20馬力以上のパワーが出ているスペシャル仕様であることを付け加えておく。
と、ただ見た目だけ追求した”なんちゃって”仕様とは一線を画す、ホンキの1台であったが、通常モデルがおおよそ240万~260万円ほどだったのに対し、2倍に迫る462万2400円という価格が影響してか、かつての無限RRのように「10分で完売!」とはいかず、聞くところによると、販売から約2年後の2014年春の時点でも、数台の在庫があったといわれている。
この背景には、価格以外にCR-Zはデビュー当時、「CR-X(初代・2代目)の再来だ!」と大注目されていたが、実際はその大人しいスペックに「期待外れ」との評価が少なくなく、早々に市場から飽きられてしまったことも影響していたのかもしれない。
そんな貴重かつ悲運な運命を辿った「CR-Z MUGEN RZ」だが、原稿執筆現在、中古車市場には3台掲載されており、190万円(全塗装済み)、249万円(全塗装済み)、336万円(オリジナル塗装)といった具合。CR-Zとしてみれば高額だが、いまのところプレミアム価格にはなっていない様子。
いますぐ値上がりする可能性は低いが、”無限”の2文字に憧れがある人にはこれから先、見逃せない1台になりそうだ。
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