ドライバー2020年3月号からスタートした新連載「(じつは)動物カメラマン 三好秀昌の『ニッポン探訪』」。日本全国をSUVで駆けまわり、かわいい動物や最高の絶景を撮影してしまおう!という企画です。第26回は沖縄・石垣島で撮影にチャレンジした『ヤシガニ』。撮影テクニックやクルマのインプレッション、その地域のグルメやお土産情報など、取材ウラ話をいろいろと紹介します。
“知恵の象徴”をギリギリ撮! 「三好秀昌のニッポン探訪・取材ウラ話 第25回~フクロウ」
あっという間に1日が過ぎる石垣島
石垣島での1日は忙しい。寝る時間がないほどだ。
海に入れない時期はいいものの、夏だと遊びのキャパオーバーでタコタコになる。
早朝は林道を徘徊(はいかい)。すると、カンムリワシが飛び、不思議な野生の果実が見つかる。
ドキドキしながらその実をかじったりしていると、あっという間に午前中が終わる。
ちなみにこの小さな柿の実に似た果実は、一瞬甘いがその後、ものすごい渋みで口の中がイガイガになった。渋柿みたいに干せば食えそうだが、そこまでする気にはならない。
野性動物の撮影にピッタリなサイズ
狭い林道では小さいクルマが便利だ。林道も生活道路だし、ほかにも自然を満喫しようと観光客も入ってくる。
何かおもしろいものを見つけて、すぐにクルマを停めたいとき、サイズが小さければスペースを探しやすい。ここでモタモタしてると、神経質な動物だと逃げちゃうからね。
スペーシア ギアはターボエンジンだからパワフル。そして、ハイブリッドだから低速ではモーターアシストもあり、山道には絶好の相棒だ。燃費もいいから給油を気にしないで走りまわれるのもうれしい。
そしてシートアレンジが多彩だから、山の中でのんびりとくつろぎながら鳥や動物の登場を待つのも苦にならない。
「ピパーツ」って何それ?
昼は一度林道から国道に出て食べ物屋を探す。思いのほか、何もなさそうなところにポツンと食堂があったりするのがうれしい。そして、チャンプルー(豆腐を使った炒め物)とかがおいしいとこれまた幸せな気分になるのだ。
食後にフラフラさまよっていて、なんか趣のある売店を見つけた。
これは何かおもしろそうなものがありそうだ! とアタリをつけて入ってみると、あった!
あったけど、なんだこれ?
「ピパーツ」
店のおばちゃんに聞いたところ、香辛料で「島コショウ」と呼ばれてるそうだ。だからコショウのように使えばいいのだが、豚肉料理に合うという。ちょっと甘い香りの香辛料だった。
午後はクルマでウトウトしたり、海岸でカニと戦ったりと忙しい。
カラフルなカニやシオマネキ(?)は片方のハサミがやけにデカくて肩こりしそうだ。
ヤシの木に登るヤシガニは次回に
日没間近になると、この後どうするかを決めなければならない。
それはこの時間帯のきれいな夕焼けを待つか、ぞろぞろと登場してくる夜行性の動物たちを待ち構えるか、という究極の決断なのだ。
3月も後半になれば蛍も出てくるし、オオコウモリやコノハズクもうっそうと茂った森の中から飛び出してくる。
この時間帯が大事なので、ほぼ毎晩まともな夕食は取れない。今日はさっきの売店で買っておいたサーターアンダーギーをほおばりながらの観察だ。
ちょっと気づくのに遅れたが、この日は月齢を見ると満月だった。海から出てくる月をバックにヤシガニを写してやろうと思い立った。
きれいな月が水平線から出てきたが、どんどん高度を上げて行ってしまう。そしてヤシガニはいない!
モデルがいないのでただの風景写真になってしまった。そのかわり、でっかいヤドカリがいた。オイラの拳ほどの貝殻をしょっている。
後から知ったのだが、ヤシガニは大きくなる過程で身を守るためにヤドカリのように貝殻の中に入っているらしい。
今あらためて写真を見るとヤドカリのふりをしたヤシガニにも見える。とっ捕まえて問い詰めてやればよかった。
「お前はどっちなんだ!?」と(笑)。
やっとヤシガニを見つけたエリアでは以前、クルマで1匹2匹を踏みつぶさないとそこまでたどり着けないほどたくさんのヤシガニが生息していたらしい。
しかし、今は見つけるのがやっとというほどに減少している。ヤシガニ料理もあるのでみんな食われてしまったのかと思ったらそうでもないという。ヤシガニは排水溝の残飯なども食っているのを地元の人は知っているから、とても食う気がしないらしい。
しかし、青や紫、そしてすでに茹で上がっているかのような赤といったカラフルで強烈な姿をしている。現代の怪獣もどきだ。
ハサミの力も人間の噛む力の数倍あるらしく、これも怪獣のような凶器。見つけてもあまりちょっかいを出さいほうが身のためだ。
前にものすごい叫び声がしたのでそっちを見ると、指をヤシガニのはさみ指を挟まれた人が痛さのあまり踊っていた(笑)。芸人の鼻のようなザリガニとはレベルが違うのだ。
ヤシの木に登るヤシガニという希望の写真は撮れなかったのは残念だが、それは次回の楽しみにとっておこう。夜が明ける前にホテルに戻って寝るとしよう。
「今回の機材」
カメラボディ:SONY α1
レンズ:FE 24-105mm F4 G OSS
ストロボでディテールの立体感を強調
夜間はほぼこの組み合わせ1つで撮影した。ストロボはボディにクリップオンして撮影したり、外して被写体に斜め横から当てるためにワイヤレスフラッシュトリガーで発光させたりもした。これによって影でディテールを際立たせることができ、ヤシガニをよりスタイリッシュに撮影できた。
「オススメのSUV……スズキ スペーシア ギア」
■ハイブリッド XZターボ 主要諸元
(7速CVT/FF)
全長×全幅×全高:3395mm×1475mm×1800mm
ホイールベース:2460mm
最低地上高:150mm
車両重量:890kg
最小回転半径:4.4m
エンジン種類:直3DOHCターボ
エンジン総排気量:658cc
エンジン最高出力:47kW(64ps)/6000rpm
エンジン最大トルク:98Nm(10.0kgm)/3000rpm
モーター種類:直流同期電動機
モーター最高出力:2.3kW(3.1ps)/1000rpm
モーター最大トルク:50Nm(5.1kgm)/100rpm
バッテリー種類:リチウムイオン電池
燃料/タンク容量:レギュラー/27L
WLTCモード燃費:19.8km/L
価格:180万2900円
アウトドアアクティビティに大活躍
ネイチャー写真撮影で島の中を駆け巡る相棒にスペーシア ギアはピッタリだ。モーター、エンジン、ターボとそれぞれの強みで市街地から山道までカバーしてくれる。
後席両側スライドドアとシートアレンジメントのすばらしさでアウトドアには最適な1台だ。
後席ドアのロールサンシェードも何気に便利で、アウトドアでは役立つのだ。
〈文と写真〉
三好秀昌 Hideaki Miyoshi
●東京都生まれ、日本大学芸術学部写真学科卒業。八重洲出版のカメラマンだったが、ラリーで頭角を現し、そのうち試乗記なども執筆することに。1995年、96年にはサファリラリー グループNで2年連続優勝。そのほか、国内外で数多くのラリーに参戦。写真家としては、ケニアでの豹の撮影など、動物をおもな題材としている
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