目的地共有の摩擦
2025年4月18日、実業家・堀江貴文氏が自身のSNSでタクシー利用時の不満を投稿した。目的地の伝達ミスやドライバーとのコミュニケーション不全、そしてその背景にあるIT活用の遅れを指摘し、「行き先をアプリで指定できる機能をはやく入れて欲しい」と提言した。
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堀江氏の発言は、単なる不満にとどまらず、日本のタクシー産業が抱える構造的課題をあぶり出している。なぜ日本では、移動サービスがテクノロジーと円滑につながらないのか。そこには、制度、文化、産業構造、そして市場設計の複雑な交差点が存在する。
まず確認したいのは、目的地を正確に伝えるという行為が、移動サービスの本質的価値の一部であるという点だ。どれほど高級な車両でも、目的地に正確かつ効率的に到達できなければ、その価値は大きく損なわれる。
堀江氏の主張は、この基本価値の毀損に対する異議申し立てであり、ある意味でサービス提供者と利用者の認識ギャップを示している。
だが、問題はそこにとどまらない。なぜ2025年の今なお、タクシー利用時に
「口頭で行き先を伝える」
ことが標準であり続けているのか。この背景には、日本のモビリティ産業特有の設計思想が色濃く反映されている。
制度に縛られた再設計機会
日本のタクシー事業は、規制産業として長らく保護されてきた。1990年代から徐々に自由化が進んだものの、地域ごとの台数規制や営業エリアの厳密な区分け、そして車両・乗務員の厳格な登録制度が残り続けている。このため、Uberのようなリアルタイムな配車・決済・ナビ統合型アプリが入り込む余地が限定されてきた。
さらに、各地域で異なる事業者が独自にアプリを開発・運用していることが、統合的なユーザー体験の構築を阻んでいる。結果として、利用者は
「どのアプリがこのエリアで使えるのか」
「乗る前にアプリで指定できるのか」
を事前に把握しておく必要があり、日常的な移動のなかで接続の断絶を強く感じざるを得ない。
これは裏を返せば、日本の移動サービスが、テクノロジーの進展に合わせて再設計される機会を失ってきたことを示している。利便性を高める機能が既に存在していても、それが制度や既得権の壁によって阻まれている状態が続いているのだ。
移動UXと現場の乖離構造
堀江氏のようなITリテラシーの高いユーザーにとって、「移動のUX(ユーザー体験)」はすでに世界標準で設計されるべきフェーズにある。Google MapsやApple Mapsを通じて移動の計画はリアルタイムに調整可能であり、言語や地域に依存しないナビゲーションが当たり前になっている。そうした世界観のなかで、
「いまだに運転手と口頭でやり取りして間違われる」
という現実は、制度的遅れというより設計の怠慢と映る。
一方、現場の運転手に目を向けると、また別の現実がある。高齢化が進む乗務員層は、アプリの扱いに不慣れなケースも多い。また、ナビを使用しながらも、地元の地理に精通していることを誇りにしている運転手にとっては、
「アプリ任せの運転」
はスキル軽視とも映りかねない。このミスマッチは、単にテクノロジーの導入タイミングの問題ではなく、移動を誰が、どのように定義するかという問いそのものを突きつけている。
利便追求のコスト負担構造
忘れてはならないのは、すべての利便性にはコストがともなうという点だ。アプリとタクシーの完全な統合には、システム開発費だけでなく、
・端末配備
・研修
・保守運用
といった継続的な支出が必要となる。利用者がそれを運賃に上乗せされても納得するかどうかは、また別の問題だ。
また、ITによって効率化された配車システムが、既存のタクシー台数や営業エリア制度と競合する場合、
・需給の不均衡
・既存業者の淘汰
が生じる可能性もある。都市部では需要に応じた柔軟なサービスが歓迎されるだろうが、地方部では供給過剰や競争激化による撤退リスクが高まるかもしれない。
利便性の向上は、多くの人にとって歓迎されるべき方向だ。しかし、その恩恵を誰が享受し、負担を誰が背負うのか。その配分が明示されない限り、移動サービスの最適化は単なる“理想論”に終わる可能性がある。
一見すれば煩雑な口頭での目的地指定も、他者との接点として捉えるならば、そこには一定の意味もある。ドライバーとの対話から得られる地域情報や、思わぬ抜け道の提案といった人間味は、完全自動化されたアプリでは代替しきれない要素だ。
また、すべてのプロセスが自動化されることで、利用者が移動の選択肢やルートに無関心になるリスクもある。何を目的に、どこに行くのかという問いをすべてアプリに委ねたとき、移動は目的地に着くだけの作業になってしまうのではないか。
このように考えると、堀江氏の主張するアプリ連携の必要性と、それに対する現場の抵抗や制度的遅れは、単なるテクノロジー導入の是非ではなく、移動の本質とは何かというより根源的な問いを私たちに突きつけている。
効率至上の陰に潜む違和感
タクシーに乗り込み、アプリで指定した通りに、正確なルートで目的地へ向かう――。それは未来の移動の理想形なのかもしれない。しかし同時に、その効率の裏で失われるものがあることも忘れてはならない。
日本の交通サービスがつながらないのは、単に技術が遅れているからではない。そこには多層的な背景と、それぞれの立場による合理がある。だからこそ、なぜつながらないのかという問いに対して、私たちは即断を避け、問い続けるべきなのかもしれない。
移動とは、目的地へ向かう行為以上の意味を持ちうる。その意味をどこに置くかは、ユーザーひとりひとりに委ねられている。
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みんなのコメント
自分の車はDAなのでヤフーカーナビ、モビリンク、Googleマップを使い分けてる。
ナビって車線や右左折交差点の混雑具合まで出ないから時間のロスが有るし、曲がれない所(時間帯や中央分離帯など)曲がれって出る。
アプリって言うけどそのアプリだってよほど金掛けて開発しないとタクシーじゃ使えない。
今使ってるのも上のアプリもGOのマップもたまに遠回りするし。
この人が言ってるのは、俺の言う通りにしろって感じなんだよ。
大半のクレーマーが大なり小なりこんな感じだ。
どこの会社も人が定着しないし金掛けられないんだって。
儲かってるんだから自分で雇えば良いのに。
その方がいろんな無駄が無くせるよ。