世界ラリー選手権(WRC)最終戦ラリージャパンのDAY2では、ドライバーズランキング首位のティエリー・ヌービル/マーティン・ヴィーデガ組(ヒョンデ)がマシントラブルに見舞われた。これはターボ関連の問題の疑いがあるとして、ヒョンデはヌービルに謝罪し、マシンの“全て”を交換するとの計画を明かした。
ヌービルはこのラリージャパンで6ポイントを獲得すればタイトルを獲得できる状況だが、DAY2のSS4ではヒョンデi20 Nが謎の出力低下に見舞われる予想外の展開を見せた。
■トヨタ勝田貴元、WRCラリージャパンDAY2は不運な後退も総合3番手に0.1秒差まで肉薄「起こったことを考えれば悪くない順位」
ヌービルを苦しめた問題は、午前ループと午後ループの間に設けられたタイヤフィッティングゾーンだけで解決できるモノではなく、DAY2を終えて総合2番手から総合15番手まで転落。チームメイトで総合首位に立つオット・タナク/マルティン・ヤルヴェオヤ組から7分以上の差をつけられた。
今季のi20 Nは信頼性が高く、ヌービルがマシントラブルに見舞われたのはサファリラリー・ケニアだけだった。
ヒョンデのWRCプログラムマネージャーを務めるクリスチャン・ロリアックスは、ヌービルがSS4でブースト圧を失ったことを認め、問題がマシンのターボに関連しているとの考えを示した。ただ、エンジンにはダメージがないと指摘した。
「実はティエリーは、このイベントに向けてターボを新調し、そのほかのモノも信用に足るパーツだった」とロリアックスはmotorsport.comに語った。
「ブースト圧がなくなって、ウェイストゲートの調整が効かなくなっているのは分かっている。電気コイルの問題なのか、ボックスなのか、その間の配線なのか、まだ分からない。今夜それを解明し、問題を解決するために全てを変更するつもりだ」
ロリアックスはヌービルに謝罪し、タイトル王手の最中トラブルに襲われたヌービルの対応を称賛した。
「我々はみんな、全てをかけてプッシュしているから、時にはドライバーがミスを犯すこともあるし、チームがミスを犯すこともある。今年は信頼性が高かったからね」とロリアックスは言う。
「これはかなりの痛手で、我々はプレッシャーに晒され、困難な状況に追い込まれたから非常に悔しい」
「彼はチームのために素晴らしい仕事をしてくれていたし、今回のような状況になるとは思っていなかった」
「トラブルがあったにも関わらず、彼は非常にプロフェッショナルな対応をして冷静を保っていた」
「ステアリングを蹴って、みんなを怒鳴りつけるようなことはしなかったけど、我々は謝罪した。まだ終わったわけではないし、前向きにプッシュし続けなければならない」
ヌービルはこのトラブルについてチームを責めることはしなかったが、ラリージャパンで起こった「最悪の出来事」だと認めた。
「もちろん、彼ら(チーム)は謝ることはできるけど、それで状況が変わるわけではない」
「もちろん、それで僕が元気になるわけでもない。とはいえ、まずは何が問題だったのか調べる必要がある」
「チームに責任があるとは言えない。モータースポーツでは色々なことが起こるものだけど、もちろん彼らは翌日のためにマシンを修理しなければならない」
「今週末、僕らに起こり得る最悪の出来事だった。技術的な問題で7分を失うくらいなら、パンクのほうがマシだった。でも、この問題はシーズンを通して築き上げた(ポイントの)アドバンテージの大きさを示している。この25ポイントは本当に重要だ」
「このハードワークが実を結び、報われることを願っている」
■タナク、ドライバーズタイトル獲得は考えず
ヌービルがトラブルに見舞われたことでタイトル獲得への可能性がわずかに高まったタナクだが、2019年に次ぐ自身2度目のタイトルには届かないと考えている。
多くのドライバーがトラブルに見舞われるラリージャパンでタナクは順調な走りを見せており、エルフィン・エバンス/スコット・マーティン組(トヨタ)らに対して堅実なリードを築き、2020年以来のヒョンデのマニュファクチャラーズタイトル獲得に集中していると語った。
「何も考えることはない」とタナクは言う。
「今僕がやっていること以外にできることはないよ」
「トヨタはDAY2最初のステージで2台がパンクして、全てコントロールできているように見えたが、事態の急変には驚かされ(ヒョンデとして)後手に回ってしまった」
「チームを守るために、僕はトヨタ勢と戦って前に出る必要があった。明日はどうなるか見てみよう。まだかなり難しい状況だからね」
なお、ヌービルのマシン修復は完了し、DAY3最初のステージとなるSS10から順調に走行。SS11ではステージ優勝を飾った。
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