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トヨタ育成2期生&3期生がラリー・エストニアに挑戦。松下がWRC3クラス初優勝を飾る

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トヨタ育成2期生&3期生がラリー・エストニアに挑戦。松下がWRC3クラス初優勝を飾る

 TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムの2期生である山本雄紀と、3期生の後藤正太郎と松下拓未が、7月17日(木)から20日(日)にかけてエストニアで開催されたWRC世界ラリー選手権第8戦『ラリー・エストニア』に出場した。

 今季初のハイスピードグラベル(未舗装路)ラリーで、山本はWRC2クラス7位でフィニッシュ。松下はWRC3クラス初優勝を飾り、後藤はWRC3クラス4位で完走という成績を収めた。

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 2年ぶりのWRCイベントとして開催されたラリー・エストニアは、WRC屈指の高速グラベルイベントだ。エストニア第2の都市『タルトゥ』の北側と南側に設定されたステージは、同じく高速グラベルイベントであるラリー・フィンランドと同様、全体的に道幅が広く、流れるようなコーナーが続くレイアウトが特徴となる。

 しかし路面はフィンランドよりもやや軟らかく、多くのクルマが走行すると深い轍が刻まれるため、走行ラインに注意が必要となる。また、フィンランドと比べると道幅の狭いテクニカルな区間も多く、北側と南側ではステージの特徴が大きく異なることもポイントだ。それでも、TGR-WRTのヘッドクォーターが置かれるフィンランドでドライビングを磨いてきた2期生と3期生にとっては、これまでのラフグラベルラリー以上に実力を発揮しやすいステージとなった。

 前戦アクロポリス・ラリー・ギリシャでライバルとの速度差を大きく縮めることに成功した山本は、今回はレギュラーのコドライバーであるジェームズ・フルトンが個人的な理由により欠場することとなった。そのため、前戦まで小暮ひかるとコンビを組んでいたトピ・ルフティネンが急遽代役を務めることになり、新たなペアでラリーに臨んだ。

 なお、小暮にとっては前戦アクロポリス・ラリー・ギリシャがWRCチャレンジプログラムでの最後のイベントとなった。彼は4シーズンにわたり著しい成長を遂げたが、ここ数戦の結果は小暮にとってもチームにとっても期待に届かないものとなっていた。チームはリリースにて「今後の彼のさらなる活躍を心から願っています」と綴っている。

 引き続き、チャレンジプログラムの2期生として挑んだ山本は昨年、ERCヨーロッパ・ラリー選手権の1戦として開催されたラリー・エストニアに出場して経験を積んでいたが、今回新しいコドライバーと出場するための準備期間は非常に短く、慣れない部分もあるなかラリーをスタートした。

 それでも山本は木曜日のデイ1オープニングのSS1で4番手タイムをマーク。金曜日のデイ2から土曜日のデイ3にかけては、5~8番手のタイムを安定して刻んだ。そして、デイ3最終のSS17ではふたたび4番手タイムを記録。最終日デイ4の3ステージを全て7番手タイムで走行した山本は、WRC2でのベストリザルトとなる7位でフィニッシュした。

 地元のエストニアや、フィンランドの強豪ドライバーが多く出場し最後まで僅差の戦いが続いたWRC2クラスで、山本はこれまで以上に高い競争力を発揮したことで、さらなる成長を遂げている。

 3期生の後藤と松下にとってエストニアは、今シーズン、クルマを前輪駆動のラリー4から、4輪駆動のルノー・クリオ・ラリー3へと乗り換えて臨んだ3回目のグラベルラリーであり、ラリー・エストニアへの出場は今回が初参戦となった。

 それでもふたりは、ラリー開始直後から速さを披露。松下はプレイベントテストで大きなアクシデントに見舞われ、その際レギュラーのコドライバーであるペッカ・ケランダーに怪我はなかったものの、痛みを感じていたためエストニアを欠場することに。ヴィッレ・マンニセンマキが急きょ代役を務めることになった。

 そのなか、松下は徐々にペースを上げていき、多くのステージを2、3番手のタイムで走行してベストタイムも2回記録。土曜日の午前までWRC3クラス2番手につけ、午後3本目のSS15で首位につけていたライバルがクルマのラジエターにダメージを負ってストップしたことで、クラストップに浮上した。SS16以降は最終日まで全ステージを2番手タイムで走行して最後まで首位を守り、今シーズン3回目となるクラス優勝を達成。WRCイベントとしては、出場4戦目でWRC3クラス初優勝となった。

 一方、後藤とコドライバーのユッシ・リンドベリは、木曜日のSS1で2番手タイムを記録。金曜日最初のSS2では横転を喫するも、SS3では3番手タイムを、SS4ではベストタイムを刻むなど序盤から速さを示した。しかし、後藤はSS5で岩に当たり右フロントサスペンションにダメージを負い、ここでデイリタイアに。修理されたクルマで再出走した土曜日のデイ3では、速さと安定性を高い次元で両立させ、2、3番手のタイムに加え、3本のベストタイムを記録する速さを見せた。さらに、最終日のデイ4は3本すべてのステージでベストタイムを刻むなど大きくパフォーマンスを向上させ、WRC3クラス4位でラリーを走破した。

 チーフインストラクターとしてふたりを指導するミッコ・ヒルボネンは「3人の走りは本当に素晴らしいものだった」とし、今回の経験を次のように振り返った。

「山本が最速タイムに近づくために、もう一歩踏み出すことを期待していたが彼はそれを成し遂げた。エストニアとフィンランドの強いドライバーたちが多く出場していたが、山本は彼らと互角に競い、10分の1秒差の戦いを続け、一貫性もかなり保っていた」

「松下のラリーに向けての準備は順調には進まず、大きなアクシデントを経験した後、このような高速ステージで自信を取り戻すことは簡単ではなかったはずだ。それでも彼はとても忍耐強く走り、ハードに攻め過ぎることもなかったが、最終的にそのアプローチが報われた。スマートなドライビングと、アクシデントからの力強い復活を成し遂げた1週間だった」

「後藤は金曜日に小さなミスがあったが、その後のペースは非常に良かったので、ミスさえなければ上位を争うことができたはずだ。このようなミスは避ける必要があるが、それでも以前の彼のペースから考えるとこれは大きな進歩だった」

 2期生および3期生の次戦は、7月31日(木)から8月3日(日)にかけて開催されるWRC第9戦『ラリー・フィンランド』だ。このイベントは、フィンランドのユバスキュラを拠点に活動する2期生と3期生にとって、第2のホームイベントといえるラリーとなる。

 トレーニングやテストで慣れ親しんだフィンランドの森林地帯の未舗装路を舞台に、もっともハイスピードで攻め甲斐のある道が続く。さらに、ラリー4車両をドライブするフィンランド人ドライバーのヤルッコ・ニカラのコドライバーとして、4期生の前川富哉が初めてWRCに出場する予定となっている。


■TGR WRCチャレンジプログラム2期生ドライバーコメント


●山本雄紀(GRヤリス・ラリー2/クラス7位)

「WRC2クラス7位でラリー・エストニアをフィニッシュすることができて嬉しく思います」 「前戦までのラフ・グラベルラリーよりも自分に馴染みのあるタイプの道だったので、このラリーをスタートするのが楽しみでした。そして、プレイベントテストでも良いフィーリングを得ていたので、自信を持ってラリーに臨むことができました」

「最初はグリップの判断が難しいと感じましたが、すぐ自然に感覚を掴めるようになり、どんどん良くなっていきました。週末を通して安定して良いペースを保つことができましたし、小さなミスはいくつかありましたが、自分のペースと良い順位でフィニッシュできたことには満足しています」。まだ学ぶべきことは多くありますが、良い週末でしたし、ラリー・フィンランドに向けての準備は整っています」


●後藤正太郎(ルノー・クリオ・ラリー3/クラス4位)

「エストニアの道はフィンランドの道に似ていますが、路面は大きく異なりグリップがやや低いため、最初は完全に信頼することが難しく感じました」 「ドライビングのリズムは金曜日の朝から良かったのですが、少しプッシュし過ぎてしまい、最初のステージでクルマを横転させてしまいました。小さなミスでしたが、予想以上に路面が滑りやすかったことが原因です。幸いにも走り続けることができ、そのステージの2回目の走行では最速タイムを記録することができました。しかし、次のステージでコーナーを少し深くカットした時、内側にあった岩に当たってしまいました」

「インストラクターからはスピードとリスクのバランスを見つけるように指示されましたが、土曜日と日曜日はその指示に従って走ることができたと思いますし、大きなミスを犯すことなくベストタイムを何本か記録することもできました。ですので、ラリー・フィンランドを前に改善を進めることができたと感じています」


●松下拓未(ルノー・クリオ・ラリー3/クラス優勝)

「この結果に本当に満足しています。金曜日の朝は泥が多く非常にトリッキーなステージだったので、ややスローなスタートでしたが、その後はフィンランドで慣れている道に似たステージが続きました。全体的にフィンランドよりも道の読みが難しく、非常に正確なペースノートが必要でした」

「週末を通じて堅実で一貫性のある走りを続けられたことが、この結果につながったと思います。ペッカ、ヴィレ、そしてチーム全員の一週間を通してのサポートに感謝します。これでラリー・フィンランドに向けて自信をつけることができたので、本当に楽しみです」

[オートスポーツweb 2025年07月23日]

文:AUTOSPORT web
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