航続距離と環境性能のジレンマ
text:James Attwood(ジェームズ・アトウッド)
【画像】マツダMX-30【同社初のEVを写真で見る】 全116枚
translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)
近年のEV技術の飛躍的な進歩にもかかわらず、航続距離の不安は依然として問題となっている。
例えば、英国の運輸研究所(TRL)が昨年行った調査では、航続距離が320kmの場合、メインカーとしてEVを検討する消費者は50%に過ぎなかったが、航続距離が480kmまで伸びた場合は90%にまで上昇した。
これは、ヒュンダイ・コナ、ジャガーIペイス、テスラ・モデル3など、航続距離が480km前後、またそれ以上のモデルの成功を示している。
しかし、航続距離を伸ばすためにリチウムイオンバッテリーを増設すると、購入コストがかさみ、増えた重量は車両の動的性能に影響を与え、電費を悪化させる。
さらに、バッテリーの増設によりEVの生産時に発生するCO2が増加し、環境面におけるEVのメリットを損なうことになる。
現在、一部の自動車メーカーは、バッテリー大型化の流れに逆行し始めている。
マツダは最近、初の市販EVであるMX-30を発売した。航続距離はライバルの電動SUVに比べて短いが、欧州の研究開発責任者であるヨアヒム・クンツは、「ジャストサイズ」というコンセプトを念頭に置いて開発したと述べている。
「環境と運転の楽しさという2つの観点から、バッテリーが非常に大きく、クルマが大きくて重いというのは、将来的には正しい方向性ではないと考えています」
また、マツダは自動車が作られてから廃車になるまでに排出されたCO2の総量を示す「ウェル・ツー・ホイール」排出量の削減に力を入れていることにも言及した。
「バッテリーの生産には、材料の採取や生産に伴うCO2排出量が非常に多いのです。バッテリーが小さければ排出量が減り、軽量化されるため使用時のエネルギー消費量も少なくて済みます」
マツダは顧客の使用状況を調査し、生産時や走行時のCO2排出量とのバランスを取りながら、MX-30の航続距離を決定した。
クンツは、「平日は自宅で充電するのが一般的な使い方だと思いますが、長距離の移動であれば、次の公共の充電ステーションまでの航続距離で十分だと考えています」と述べている。
マツダは英国などの市場で、小型ロータリーエンジンを搭載したMX-30のレンジエクステンダー・バージョンを開発している。
生産時のCO2排出量も公表すべき
マツダの判断は、英国政府の「全国旅行調査」のデータに裏付けられている。同調査によると、昨年の平均走行距離は13.5kmで、2009年から変わっていない。
一方、RAC財団の調査によると、英国のドライバーの年間平均走行距離は1万6700km(1日当たり約45km)、EV所有者の平均走行距離は1万5000kmとなっている。
マツダだけではない。ボルボから派生した高級車ブランドのポールスターは、EV生産によるCO2排出量のデータを公表し、プリセプト・コンセプトの市販化の準備を進めている。
ポールスターの社長であるトーマス・インゲンラスは、市場での「競争力」を高めるために航続距離を480km程度にすることを示唆したが、業界は「航続距離を競う競争の中で無責任な方向に進んでしまうことはできない」と語った。
「クルマをより効率的にするという話には大賛成ですが、最長の航続距離を作るためだけに『kWh』を詰め込んでいるのであれば、持続可能なクルマに近づくことにはなりません」
インゲンラスは、自動車をより早く、より簡単に充電できるようにするための急速充電インフラを構築することに焦点を当てるべきだと述べている。
自動車のCO2排出量の削減やリサイクル素材の使用量の増加などを通じて、ポールスターは持続可能性(サステナビリティ)をマーケティングの重要な要素としている。
問題は、消費者が同意するかどうかだ。KPMGの調査によると、業界幹部の98%がサステナビリティを重要な差別化要因と考えているのに対し、サステナビリティを重視している消費者は83%にとどまるという。また、経営者側と消費者側の42%が「サステナビリティが製品の特徴になる」と考えているようだ。
KPMGは自動車メーカーに対し、ポールスターのように自動車の製造に伴うCO2排出量を公表すべきだと提案している。しかし、今後の課題は、サステナビリティが航続距離と同様に重要であることを消費者に理解してもらうことである。
マツダのマルチな戦略
マツダは、他の自動車メーカーと同様に、EVに全面的にコミットしているわけではない。その代わりに、市場の需要やニーズに応じて展開する製品を変えることができる「マルチソリューション」戦略を採用している。
マツダにはMX-30、3、CX-30などに使われる小型プラットフォームと、CX-5などに使われる大型プラットフォームを存在する。小型プラットフォームはEVパワートレインを搭載できるように設計されているが、大型プラットフォームはハイブリッドやプラグイン・ハイブリッドによる電動化が可能だ。
ヨアヒム・クンツは次のように述べている。
「長距離を走るお客様はEVを買わずに、ハイブリッドやプラグイン・ハイブリッドを選ぶでしょう。EVのサポート体制が整っていない国では、このようなクルマが鍵を握っています」
また、クンツによると、マツダは再生可能な合成燃料の研究にも投資しており、これによりCO2を排出せずにエンジンを動かせば、EVと同等のクリーンさを実現できるという。
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みんなのコメント
潰れそうで潰れない会社ですから。
マツダ車に乗ってみてパワーがないのには。がっかりしますね。
外観デザイはヨーロッパからデザイナーを連れてきて良くなったが
中身は一世代遅れの車ですね。