止まらない物価高の最中にリーズナブルなCX-5
賃金は上がらないのに物価高である。クルマもご多分に漏れず高いということだ。値上げ値上げの連続で、世間も新車が高いと嘆き、「原材料の高騰もあるし装備も良くなったから……」なんていう言い訳じみた返答をするのにも疲れてきた。
【試乗】新型CX-5は「ないものねだり」に応える欲しいもの全部載せ! 特筆すべき走りの上質っぷりと「唯一の要望」
そんな気持ちを察したのか、新型マツダCX-5は戦略的な価格で登場してきた。マイルドハイブリッド搭載と後席拡大などを図りながら、スタート価格はなんとFFで330万円。四駆だって353万6500円からだ。その安さはどこから来るのか? ライバルと比較しながら見てみたい。
引き合いに出す1台目はフォレスターの1.8リッターターボモデル。ハイブリッドよりも安価だが、スタート価格は385万円と4WDオンリーでお高め。そしてもう1台はZR-Vだ。フルハイブリッドだがFFなら370万7000円で、4WDだと392万7000円からだ。
CX-5は高い居住性の反面で走りには改善の余地がアリ
まずは今回の主役となるCX-5から話を進める。CX-60やCX-80といったラージ商品群が充実したマツダ。そこに統廃合される形でCX-5は消滅すると囁かれていた。けれどもラージ商品群の販売がイマイチ伸びず、はたまたもっと安いクルマが欲しいという市場からの要求もあり、復活してきたというのが実際のところなのだろう。新たなCX-5は冒頭でも述べたように、とにかくスタート価格がかなり戦略的だ。
2012年に誕生した初代からの累計販売台数は500万台で、いまでもグローバルで年間33万台を販売。日本では国内販売の1/4にあたるというから絶対にハズせない車種だ。日本のこれまでの累計販売台数は40万台。いまだファンも多い。
だからといってキープコンセプトで、いままでの焼き直しのスキンチェンジではない挑戦的なところも見えてくる。ホイールベースは115mm延長され、後席ニースペースやラゲッジ容量の拡大を行ったところがポイントだ。たしかに旧型は後席ニースペースが窮屈で、ラゲッジも縦方向に狭く、新型のように縦にベビーカーを搭載するなんていう芸当はできなかった。
新型はファミリーで使いやすいようにという配慮がありつつ、ラージ商品群より取りまわしのしやすいサイズ感で収めたところが絶妙。後席に収まってもハズれ席だと感じさせない豊かさがある。2段階のリクライニングもあるし、アームレストも備えるためリラックスした姿勢で座ることができる。頭上の圧迫感もなかった。
パワートレインは2.5リッターガソリンエンジンにマイルドハイブリッドを加え、6速ATを組み合わせている。ディーゼルが廃止となったところは寂しいが、それが欲しければラージ商品群をということかもしれない。
足まわりは旧型のキビキビとした動きを踏襲しつつ、荒れた路面における乗り心地改善を目標とし、スプリングはソフト方向に、ダンパー径を4mm拡大し、ガス圧を倍にするなどの手法で減衰力応答性を確保したそうだ。
そんなCX-5のFFモデルを今回は走らせてみると、まずは交差点からの加速感に懐かしさがある。6速ATは各ギヤが受け持つ車速域が広いために、やや鈍重な加速感なのだ。近年の、ゼロからモーターアシストでスッキリとスタートするクルマに慣れていると、ちょっと物足りなくなる部分もある。エンジン音も割とダイレクトに車室内に入ってくる感覚があり、ノイズキャンセリングもしていないため良くも悪くもライブ感はなかなかだ。
乗り心地はバタつきも少なくフラットな感覚。オンロードに合わせ込んだと思えるその走りは、市街地を主に使うユーザーにとってはありがたいだろう。ステアリングは軽やかなフィールを生み出すように仕立てたと聞いたが、切り込む際の応答性はたしかにと頷けるところがある。けれども、セルフアライニングトルクはかなり強めであり、それを丁寧に戻そうとすると気を遣うし、高速コーナーにおけるステアリングの座りもイマイチだった。このあたりは4WDモデルのほうが良いように感じる。
ADASも車線逸脱防止機能やACCを試してみたが、はみ出しそうになった際の戻し制御は割と穏やかに介入する感覚があり、制御が入って驚くようなことがないところがメリットだ。
走りの質感でHVを上まわるフォレスターのターボモデル
主役の性能をザッと確認した後に、続いてはフォレスターに乗ってみる。今回のモデルは1.8リッターではあるがターボであり、非ハイブリッドである。だが、それもフォレスターにとっては追い風のように思える。ラゲッジ下にバッテリーを搭載するS:HEVのフォレスターはリヤの重心が突出して高く、結果としてウエットにおける安定感が足りていないところがあったからだ。
C型ではセンターデフのセッティング変更で克服したというがいずれにしても非ハイブリッドのほうが素直な走りだと感じている。
悪路走破性を重視したせいか、はたまたレヴォーグのように可変ダンパーを採用していないからか、フラット感が薄く、舗装路では前後左右にバタつくシーンはあるが、フワッとした乗り味が好きなユーザーには良いかもしれない。
ドライバーズシートはガラス面積が縦方向に広く、下方や後方の視認性が極めて高いことが特徴的。カメラ頼りにならず、取りまわしがしやすい。頭上の空間も十分にある。
ミッションはCVTで静かに走らせているときには応答性もまずまず。だが、深く踏み込んだときには意図した以上に吹き上がるし、アクセルオフでも思った以上にトルクが抜けてくれないなど、リニアさにはチト欠ける。ブレーキは回生がないためか超リニア。ADASは扱いやすく自然で、しかもインフォメーションが理解しやすいところが好感触だ。
アーバンSUVのZR-Vは走りとデザインを諦めない
ZR-Vは都市型SUVど真ん中といった感覚。e:HEVを搭載し、基本的にモーター駆動で動いているために、スタンディングスタートからの俊敏さ、そしてリニアな応答で駆け抜けるところが好感触だ。なによりクーペライクなシルエットでスタイルも抜群。けれどもそこが使い勝手には響く。ファミリーで使うには後席が狭いし、ラゲッジもほかと比べれば……。
だが、基本的にふたりで使うならアリ。内装も曲線美がありオシャレ。シャシーはホットハッチのような俊敏な乗り味が特徴的。走りを諦めたくないという人にはZR-Vがいいか。気になったのがADAS。制御がちょっと荒いため、思わずびっくりしちゃうことがあるかも!?
“最新”ではないもののこれで十分と思えるCX-5
3台比較をしてよくわかったのは、新型CX-5はSUVのド真ん中を突いたということだった。ZR-Vは明らかに都市型だし、フォレスターはオフロードを意識していることは明らかだ。
CX-5はアーバンSUVとしての立ち振る舞いを忘れず、家族でも使いやすいユーティリティ性能を持ち合わせ、悪路だって一応こなせるようには考えている。洗練された内外装デザインも施されていながら、それでいてリーズナブルな価格に収められているのだから、絶妙な位置にいるような気がしてくる。
しかしながら、正直に言ってしまえば安さに理由があるのも事実なようで、たとえばパワートレインに感動するようなところは薄い。マイルドハイブリッド化されたとはいえ、エンジンの応答性は現代化されてはいないし、それに組み合わされるミッションが6速ATなのだから、ちょっとイマドキじゃないのも事実である。
ただ、それがネガティブな要素とは断言できない。電動化することだけが正義なのか? 多段化することばかりが良いことなのか? 昔懐かしの乗り味で何が悪い? ……むしろそっちのほうが感覚にフィットしていて好きだという人も多いことだろう。
CX-5に乗り終わり、帰宅して冷静になると、いつのまにか「足るを知る」という言葉が浮かんでくる。クルマって「これくらいで十分だったんだよ」と思えてくるのだ。もちろん、チープすぎてもいけないのだが、CX-5はそこが絶妙なサジ加減で成立しているように感じてならない。現代に通じる装備の最低限以上は盛り込みながらも、オゴらないところはオゴらないという割り切りがあると感じる。
それは背伸びしすぎて行き場を見失いかけたラージ商品群があったからこそ誕生してきた姿勢ではないだろうか? まるで、すべてにおいて行きすぎてしまった現代のクルマたちに対する、アンチテーゼのようにも感じる。
そのスピリットこそCX-5の魅力ではないだろうか? 物価高に風穴を開けるがごとく登場したその心意気は、じつにマツダらしい1台。すでに持っている財産をうまくリメイクする上手さは、まさにお料理上手。まるで初代ロードスターのようでもある。
※本記事は雑誌「CARトップ2026年8月号」の記事を再構成して掲載しています
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みんなのコメント
ただ、俺は好みではフォレスター。
フォレスター>CX-5>>>>ZR-V
という感じ。