「DESIGN MUSEUM JAPAN展」が国立新美術館で開催──“暮らしのなかの美”をめぐる旅へ

日本各地に息づく、名もなき美と職人技。その「デザインの宝物」を再発見し、未来へとつなげる展覧会「DESIGN MUSEUM JAPAN展 2025～集めてつなごう 日本のデザイン～」が、2025年5月15日より国立新美術館にて開催される。第一線で活躍する8名のクリエイターがリサーチした地域の生活文化をもとに、今あらためて「デザインとは何か」を問い直す展示となる。

暮らしに宿る“名もなき美”をデザインとして捉える

日本の美しさは、決して都市のモダンな建築や有名ブランドのプロダクトだけに宿るものではない。むしろ、長く受け継がれてきた日常の道具や、地域に根差した文化の中にこそ、本質的なデザインの価値が息づいている。この展覧会「DESIGN MUSEUM JAPAN展」は、そんな“暮らしの中のデザイン”にスポットを当て、日本全国に点在する文化資源をひとつのミュージアムとして捉え直すという、新しい視点からの試みだ。

本展の背景には、NHKの番組「デザインミュージアムをデザインする」（Eテレ）から始まった、「日本にデザインミュージアムがあったなら、どんなものになるか？」という問いがある。そこから導き出されたのは、既存の建築や制度にとらわれず、日本各地の文化を“分散型ミュージアム”としてつなぎ直すという発想だった。

8人のクリエイターが発掘した“デザインの宝物”

今回の展示では、2024年度に8人のクリエイターが現地で見出した“デザインの宝物”が紹介される。たとえば、グラフィックデザイナー・菊地敦己が取り上げたのは、栃木の「ほうろうの生活用品」。デザイナーの名が付かない実用品のなかに、無理のない造形美があることを伝えている。

また、建築家・塚本由晴が奈良で探ったのは「氷室」。自然と人間の手仕事が融合して、夏まで氷を保存する仕組みを成していた古代の知恵と風景は、現代のランドスケープデザインにもつながる視座を与えてくれる。

ほかにも、ガラス職人の情熱から生まれた大阪の「魔法瓶」（五十嵐久枝）、漁師たちの誇りを宿す鳥取の「大漁旗」（菱川勢一）、京都に根ざすフォント文化「ヒラギノフォント」（宮永愛子）など、どれも“地域×生活×デザイン”が織りなす独自の美のかたちだ。

会場構成を手がけるのは建築家・田根剛。グラフィックデザインは岡本健、展示監修は野見山桜が担当し、空間そのものが作品として機能する構成となっている。来場者は会場内を巡るなかで、あらためて「身の回りにあるデザイン」に目を向けることになるだろう。

「これもデザインなの？」と思えるような発見が、生活をより豊かにしてくれる──それこそがこの展覧会の本質であり、日本にまだ存在しない「デザインミュージアム」の姿を浮かび上がらせる試みでもある。

「DESIGN MUSEUM JAPAN展 2025 ～集めてつなごう 日本のデザイン～」会期：2025年5月15日（木）～5月25日（日） ※5月20日（火）は休館
会場：国立新美術館 3階 展示室3B（東京都港区六本木7-22-2）
開館時間：10:00～18:00（金曜は20:00まで）※最終入場は閉館30分前
観覧料：無料
https://design-museum-japan.jp

編集と文・遠藤加奈（GQ）