■現行最後のスープラ、実力は?
2025年3月21日、トヨタは「GRスープラ」の一部改良モデルおよび特別仕様車「A90 Final Edition」の詳細を発表しました。
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今回の一部改良は何が変わったのでしょうか。そしてA90として最後のスープラはどのようなモデルなのでしょうか。
2019年に17年ぶりに復活を遂げた5代目となるGRスープラ。
伝統の直列6気筒を踏襲しながらも、ディメンジョン(50:50の重量配分、ショートホイールベース、2シーター)を活かしたピュアスポーツに仕上げられていました。
実際に乗るとグイグイ曲がる回頭性の良さに驚きつつも、限界域でのナーバスな車両挙動(特にオーバーステア時)に手を焼いたのも事実です。
筆者(山本シンヤ)は当時の記事「8割くらいで走らせるのが、最も気持ちいかも」と評価したのを覚えています。
この車両特性は開発陣も認識しており、2020年と2022年のアップデートに手が入りました。
実際に乗ると懐が深くなっているのは実感しましたが、開発陣は「もっといいクルマにできる」と開発の手を止めず、GRヤリスやGRカローラのように、モータースポーツ(スーパー耐久ST-Qクラスに参戦の92号車(GRスープラレーシングコンセプト)を活用しながら、「壊しては直す」を繰り返してきました。
そこでの知見が色濃くフィードバックされたのが、今回の改良モデルとなります。
その内容は従来よりも多岐に渡っています。
ボディ・シャシは相対的に弱かったリア周りの剛性を高めるべくリア床下ブレースの構造を強化。
更にリアサブフレームを強化ゴムマウントに変更、フロントコントロールアームを強化ゴムブッシュに変更、前後スタビライザーブラケットをアルミ強化品に変更と、人間で言う“関節”の部分に重点的に手が加えられています。
この辺りを開発責任者である坂本尚之氏に聞くと、「GRスープラのボディ剛性はトヨタ車の中でも格段に高いレベルですが、弱い所が悪さをして活かし切れていませんでした。今回はそこに手を入れることでクルマとしてのバランスが整いました」と語っています。
そんなボディ・シャシに合わせて、サスペンションは電子制御ダンパー特性変更、フロントスタビライザー強化、そしてアライメントの最適化(前後キャンバー角変更)とセットアップの見直しと同時にEPSおよびアクティブディファレンシャルの制御を最適化。
ちなみにブレーキはディスクを18インチに大径化されています。
ちなみに見た目の部分は、エクステリアがフロントにホイールアーチフラップ追加&タイヤスパッツ高さ拡大、リアはダックテールタイプのカーボンリアスポイラーの追加(空力操安に大きく貢献)。
インテリアはブラック&レッドのコーディネイト(シフトノブ/シートベルト)が採用と“見た目”の変化は最小限ですが、走らせると「別物!」と言ってもいいくらいの伸び代です。
まず5代目の魅力の1つであるキレの良い回頭性はそのままに、それに見合ったリアのスタビリティを備えた事に驚きます。
印象的なのはリアの動きで、路面をビターっと捉える接地感とバネ上のフラット感(空力効果も大きい)の相乗効果により、従来モデルよりもリアに荷重が乗せやすくなっています。
タイヤ(ミシュラン・パイロットスーパースポーツ)は変更されていませんが、グリップが増したと思うくらいの安心感です。
と言っても、安定方向でFRの旨味が薄れたわけではなくドリフト走行も可能です。
ただ、ドライバーの意思に反してスライドしてしまっていた従来モデルに対して、新型はグリップ/スライドがドライバーの意思で自由自在。
もちろんショートホイールベースなのでGR86などと比べると流れ出しはかなり速くその対処に腕も求められますが、クルマの動きに唐突な所がないので、まるで時間がスローに感じるくらい動きが解りやすく、「ドキッ」より「楽しい」が上回っています。
ただ、ひとつ残念なのはクルマの限界が上がったことで、今まで以上にシートのホールド性やフィット感に物足りなさを感じてしまった事。ここに手が入ればクルマとより濃厚な対話ができかなと。
総じて言うと、よりドライバーファースト、より懐が深く、よりワクドキな走りに成熟したと思いましたが、今回は更に凄いヤツが用意されていました。
それがグローバルで限定300台だけの特別なGRスープラ「A90ファイナルエディション」です。
■特別なGRスープラ「A90ファイナルエディション」はどんな感じ?
その内容は量産の域を超えた大胆かつ色濃いアップデートが車両全体に行なわれて、ズバリ「理想」、「究極」、「最高」のGRスープラと言っていいと思います。
エンジンは吸気(レゾネーター廃止&インテークパイプ最適化)/排気(アクラポヴィッチ製チタン)とECU変更で387ps/500Nm→441ps/571Nmにアップ。
高出力に合わせて冷却性能も強化されており、ラジエター冷却ファン強化、サブラジエター追加、デフカバー冷却フィン大型化、脱着式インナーダクト付カーボンボンネットダクト追加と、抜かりはありません。
ボディ・シャシ周りは強化ラゲージクロスバー追加(ロールケージ並みに強固)に加えて、フロントはカウルブレース強化&床下ブレース追加、リアは床下ブレース構造の強化、既存部品の素材変更&強化、リアサブフレームのアルミリジットマウント化、フロントロアアームのゴムブッシュ強化、フロントコントロールアームのピロボール化、アルミ強化品の前後スタビライザーブラケット、リアスタビライザ―リンク強化と、細部に渡り手が入っています。
量産車以上レーシングカー未満に仕上げられたボディ・シャシには、kW製減衰力調整式サスペンション&前後スタビライザー強化、それに合わせたEPSおよびアクティブディファレンシャルの制御の最適化を実施。
更にタイヤはミシュラン・パイロットスポーツカップ2(フロント:265/35ZR19、リア:285/30R20)、ブレーキはフロント大径化(19インチ)に加えて、高μパッド(フロント)&フローティング構造のドリルドディスク(フロント/リア)、ステンメッシュのブレーキホースを採用しています。
空力デバイスはTGR-Eの風洞に煮詰めたモノで、カーボン製フロントスポイラー&カナード、フロントセンターフラップ、カーボン製スワンネック構造のリアウイングを採用。機能はもちろん、より精悍、より迫力あるエクステリアに仕上げられています。
インテリアはドライバー側のみレッドと言う大胆なコーディネイトに加えて、アルカンターラ&カーボンのコーディネイトによりスパルタンだけど質の高い空間に仕上げられています。
注目はシートでレカロ製の新カーボンフルバケットシート「Podium CF」は専用チューニング品で、抜群のホールド性と掛け心地を両立させています。
このように、こだわりのアップデートパーツが惜しみなく投入されていますが、共同開発を行なったBMWもGRの熱意に共感し、喜んで協力してくれたそうです。
見た目は完全にサーキットスペックですが、その走りはベースモデルの走りの“純度”をよりピュアに高めたモノでした。
とにかくクルマがより小さく、軽く感じる手の内感の高さと、グイグイ曲がるのに鉄壁なスタビリティの両立はメカニカル&空力の合わせ技によるもので、結果としてキレ味を損なうことなく路面に吸いつくようなコーナリングが可能でした。
と言っても、レーシングカーのロードバージョンのようにタイム重視でロールを抑えてタイヤのグリップに頼った走りではなく、意外と姿勢変化は大きめでスライド走行も許容しますが、ベース車以上に楽々とこなします。
中でも挙動変化の解りやすさと、スライドしてからのアクセルコントロールのしやすさ、そして大カウンターの状態でもスピンしにくい粘り強さは、「君はロングホイールベースになったの?」と錯覚してしまうレベル。
まさにハイパワーFRなのに扱いやすく安心感の高いフットワークはどことなく先代(A80)に似ているような(A80はグイグイではなく穏やかに曲がる感じでしたが)。
この辺りはシャシや空力をはじめとするレベルアップが大きな効果を生んでいますが、その性能をより正確、より精緻、より安定した操作が可能な運転環境、ホールドと言うよりも吸い付く感じのフィット感を備えたシートのフィット感も大きく寄与しています。
■ファイナルエディションは「GRMNスープラ」と名乗らなくて良かった? 豊田章男会長が語る「次期スープラ」とは
ちなみに試乗前は「なぜ、GRMNスープラを名乗らないのかな?」と疑問に思っていましたが、量産車と45度線上に位置するオールラウンダーな特性から、逆に名乗らなくてよかったのかなと。
恐らく、サーキットベストを目指すのならば、もう少し違った味付けになっていたと思います。
パワートレインは出力アップよりもアクセルワイヤーのような応答性とまるで入念にバランス取りしたかのような滑らかな回転フィールと伸びの良さ、そして昔のエンジンのような艶っぽいサウンドに、「エンジンっていいな」を再確認。
ちょっと前に乗ったアルピナB3Sにフィーリングが似ているなと思ったら、開発陣は「実は同じエンジニアにセットしてもらいました」と教えてくれました。
トランスミッションは6MTのみの設定ですが、ライトウェイトスポーツのように操作力は軽く抵抗感が少なめで、カチッと入るではなくスコッと入るフィーリングは、このエンジンとの組み合わせだと、より輝くように感じました。
総じて言えば、ベースは量産車の範囲内、ファイナルエディションは量産の域を超えた範囲で「5代目の集大成」としてやり切ったモデルと言っていいでしょう。
現行モデルでここまでできると言う事は、次期モデルはもっと期待できそうです。
このGRスープラに特に強い想いを持っているのがマスタードライバーの豊田章男氏です。豊田氏に次期モデルの話を聞いてみると、笑顔でこのようなヒントをくれました。
「クルマは何年かでモデルチェンジしてこそのクルマなんです。僕が何で『もっといいクルマづくり』と言ったかと言うと、当時のトヨタは伝統あるモデルを次々とドロップ、その一方で新しい名前のモデルばかり作っていた。
その結果、モデルの繋がりも無くなりました。私はトヨタが『自分の時だけこの新車を出したよ』と言うメーカーになってはいけないと言う気持ちを持っています。
だから、私はスープラを復活させました。更にカローラやヤリスは群にしましたし、ウワサではセリカも出てくる(笑)。
要するにトヨタと言う会社は、代々商品を引き継がなければダメなのです。クラウンは明治維新を迎えましたよね? 何が言いたいかと言うと、トヨタは『ブランド』を大切にしなければダメだと。全然答えになっていないですね(笑)」
※ ※ ※
明確には語っていませんが、「ブランドを大切にする→系譜が途切れてはダメ→次期モデルは用意」と考えていいでしょう。
それを踏まえると、今回の改良はスープラの歴史の通過点の1つであり、ファイナルモデルは次へのスタートと言うわけです。
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みんなのコメント
ま、そういう事だ