ロータリーターボも用意された80年代マツダのフラッグシップモデル
日本の様式美を感じさせる端正な佇まい、クラウンセドグロに対抗した“広島ベンツ”
「ハードトップでなくセダンがポイント!」ルーチェV6ロイヤルクラシックは未知との遭遇だ!!【ManiaxCars】
ルーチェとしては5代目となるHC型は1986年9月に発売。ボディは4ドアのハードトップとセダンで、2.0L直4SOHCのFE型、2.0L V6SOHCのJF型、そのターボ版JF-T型を用意。ハードトップには2ローターターボの13B-T型搭載モデルもラインナップされた。
翌87年8月、3.0L V6SOHCのJE型を載せるV6-3000ロイヤルクラシックを追加。翌88年9月に実施されたマイナーチェンジで後期型に移行し、同時にJE型はDOHC化が図られた。
2.0LのJF型に始まり、3.0LのJE型、2.5LのJ5型と3種類が揃ったマツダ初のV6となるJシリーズ。いずれもストローク量は77.4mmで、ボア径の違いが排気量の差となっている。取材車両に搭載されるのはJE型のDOHC24バルブ仕様。これをベースに最大トルクを向上させた改良版のJE-ZE型は、後のセンティア/MS-9に搭載された。
HC型ルーチェの最上級グレード、V6-3000ロイヤルクラシックはハードトップにもセダンにも設定されたが、一般ユーザーに受け入れられたのは圧倒的にハードトップだ。
フォーマルなセダンはハイヤーやタクシーに使われたり、あるいは法人需要に応えるためのモデルと相場は決まっているわけで、このクラスなら、クラウンやセドグロにも同じことが言えるだろう。
センターコンソールまで拡げられたメーターナセルがデザイン上の特徴と言えるダッシュボード。エンジ系の内装色は80年代後半から90年代前半にかけて、どのメーカーの高級セダンでもよく見られた。
メーターはデジタル&バーグラフ表示。運転席の目の前にスピードメーターとタコメーターが並び、左手に燃料計、電圧計、水温計が配置される。
オーディオはロイヤルクラシック専用。AM/FM電子チューナー付き正立カセットデッキで、ジャズやクラシック、ロックなど音楽に合わせて5つの周波数特性を選べるサウンドセレクターが備わる。
ATセレクタレバー前方には前後シートヒーター、ATのモード切り替え、オートアジャスティングサスペンションの各スイッチが設けられる。
前後スライド、リクライニング、座面高さ(前後個別と全体)を電動調整できるパワーシート。シートヒーターも内蔵され、メインスイッチを入れておくとシート温度が10度以下で自動的にオン、30度以上でオフになる。
後席も60:40分割で、それぞれ電動リクライニングが可能。ヘッドレストは角度を前後に調整できるスイング式を採用する。
後席センターアームレストにはオーディオスイッチが内蔵される。メイン電源のオンオフ、ラジオバンドの切り替え、カセットプレイヤー操作、ボリューム調整、ミュートが可能。
スピーカーボード中央には空気清浄器と、フタ付きのクールボックスが備わる。マツダのフラッグシップセダンとして充実の装備を誇る。
スペアタイヤを左側に立てかけることで深さを稼いだトランクルーム。見ての通り容量は申し分なく、バンパー上部から開くトランクリッドと合わせて使い勝手にも優れる。スピーカーボードの裏側に見えるのは空気清浄器のフィルター。
光沢感のある細いフィンタイプのスポークが、足元をエレガントに見せる純正アルミホイール。タイヤはグッドイヤーEG01で、標準サイズの195/65R15を履く。フロントフェンダー後方には“V6 3.0DOHC”のエンブレムも。
すでにHC型ルーチェそのものを見かける機会がなくなったが、それでも目にすることがあるとすれば、ほぼ100%ハードトップ。セダン後期型のV6-3000ロイヤルクラシックに遭遇することはまずありえないし、万が一、すれ違ったとしても、よほどのマツダマニアでもなければ気付かずスルーしてしまう可能性が非常に高いのだ。
そう考えるとこのクルマの立ち位置は、セルシオに先駆けて4LV8の1UZ-FE型エンジンが搭載されたUZS131型クラウン4.0ロイヤルサルーンGのセダンに似てるのかもしれない。
当時、マツダはこれでクラウンやセドグロに対抗しようとしたわけで、目いっぱい背伸びしている感がビシビシ伝わってくる。そのため、装備の充実ぶりがハンパじゃないことになっていたわけだ。
がしかし、販売面でライバルたちに歯が立たなかったのは知っての通り。この後、センティア/MS-9にバトンタッチして消えていった最後のルーチェ。その雄姿をここに焼き付けておきたい。
■SPECIFICATIONS
車両型式:HCSS
全長×全幅×全高:4820×1705×1425mm
ホイールベース:2710mm
トレッド(F/R):1440/1450mm
車両重量:1560kg
エンジン型式:JE
エンジン形式:V6DOHC
ボア×ストローク:φ90.0×77.4mm
排気量:2954cc 圧縮比:9.5:1
最高出力:200ps/6000rpm
最大トルク:26.5kgm/4500rpm
トランスミッション:4速AT
サスペンション形式(F/R):ストラット/マルチリンク
ブレーキ:FRベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:FR195/65R15
TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)
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みんなのコメント
セダンはマニアックで珍しいけど、やっぱハードトップの方が格好良くて好きだったな
気品 風格 しっかり感
セダンとして求められる要素がキャビン全体から薫ります。