フォーミュラEは電気で走るフォーミュラカー。電気は身近なエネルギー源であるが、目に見えないし、実はよく分からないのでは?? そもそも電気って何なのか? ヤマハ発動機のフォーミュラE開発担当者に尋ねてみた!
いよいよ今週末、東京で2度目となるフォーミュラEのレースが行なわれる。
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フォーミュラEは、電動フォーミュラカーによるレースである。つまり電気で走るわけだ。この電気を”扱う”というのは、そもそもどういうことなのか? 今季からローラ/アプトと組んでフォーミュラEへの挑戦をスタートしたヤマハ発動機のパワートレイン開発を担当するおふたりに訊いた。
「ガソリン車ではエネルギー源がガソリンで、エンジンはその動力変換器です。電気自動車(EV)だとこれが、エネルギー源が電気で、モーター/インバータが動力変換器ということになります」
ヤマハでフォーミュラE開発を統括する原隆氏は、そう説明してくれた。
「ガソリンエンジンというのは、実はそんなに効率が良くないんです。ガソリンを爆発させて動力を取り出すので音も熱も出ますし、エネルギー効率がよくありません。一方でモーターは、エネルギー効率は95%以上です。エネルギーの損失も少ないので、音も小さいです」
これだけ聞くと、全ての自動車を電気にすべきではないかと思えてしまう。しかし、事はそう単純ではない。
「でもなぜガソリンエンジンが今普及しているかというと、ガソリンが持っているエネルギー密度がすごく高いからです。だから40リットルくらいのガソリンがあれば、東京と静岡を往復できてしまいます。一方で電気は、電池におけるエネルギー密度がそれほど高くないので、エネルギー効率が高いとはいえ、同じことをしようとすると、ものすごく大きい電池が必要になります」
■フォーミュラEの技術は、IHコンロやエアコンに近い!?
EVの進化には、電池におけるエネルギー密度を上げる技術の進歩が重要になってくる、そういうことになろう。しかしフォーミュラEではバッテリーは全車共通。そのため、与えられたバッテリーに蓄えられた電気を、いかに効率よく使うかが勝負になってくる。
電気を効率よく使うためにはどうすればいいか? 何か我々の生活において身近に存在するもので感じられるモノはないのか? そう尋ねると、原開発統括は次のように説明してくれた。
「IHのコンロは、モーターとかなり原理が近いと思います」
IHのコンロは、ガスを使わずに調理を行なうことができる夢のようなコンロとも言える。火を使わないので安全性も高いが、しっかりと食材に火を通せる。
「HIコンロは、渦電流損と言って、磁束(物体の中を移動する磁力の量)を変化させて発熱させているんです。鍋の底の磁界を細かく行き来させて、鉄におけるエネルギー損失で発熱させているわけです」
エネルギーが損失するということは、電気が流れる上で抵抗があるということ。それによって発熱するのだ。
「モーターでも、実はそれと同じことが起きていますが、その損失をいかに少なく設計するかというのが重要です。電気が持っているエネルギーのうち何パーセントをスピードに使えますかというのが、フォーミュラEでの競争です。そこが、スピードの違い、勝敗に繋がってきます」
「エアコンのモーターも、実は同じような競争になっています。省エネの技術で、各社さんよく競っているじゃないですか? 電気を効率的に使うために、インバータを介してモーターの速度を変化させ、一番いいところを使うとか……そのあたりの考え方は、我々がフォーミュラEでやっていることに近いです」
■フォーミュラEマシンもスマホも……電気を使うとなぜ熱くなる?
フォーミュラEを見ていると、「オーバーヒートを避けるように」という指示がドライバーに飛ぶことや、以前は「オーバーヒートしちゃうからアタックモードは使えない」というような状況が多々あった。我々がパソコンを使ったり、スマホを酷使したりすると熱を帯びることがあるから、「電気を使えば発熱するものなのか」と多くの人が漠然と認識していると思う。
ではこの発熱とは、一体何が起きているのか? ヤマハのフォーミュラE開発グループリーダーである梅田泰宜氏は、これについてこう説明する。
「3つの要素があります。ひとつ目は、モーターは回転しますから、その軸の部分の摩擦熱があります」
そう梅田氏は言う。
「あとは銅が発熱します。モーターは基本的には銅と鉄でできていますが、銅にはたくさんの電気が流れていて、そこでの抵抗によって発熱するんです」
「ただ銅だからいけないということではありません。銅は抵抗がかなり少ない金属で、電気を100流したとしたら、例えば99くらいは流してくれます。他の金属を使うと、それが90になってしまったりします」
「そして鉄の中で磁束が動くと小さい電流が流れて、それで発熱するということもあります」
この発熱は、エネルギーの損失につながっているということになる。これをいかに減らすかが、フォーミュラE開発の基礎なのだ。
「この3つのロスを減らすことができれば、エネルギーの損失も少ないですし、発熱も抑えられる。そうなればラジエターが小さくて済むなど色々なメリットが出ます。そこが求められています」
そう原氏は説明する。しかもそのどれかひとつだけを解決すればいいというモノではない。例えば、銅の部分での発熱を抑えれば、鉄の部分での発熱が増えてしまう……そういうこともあるのだそうだ。
「フォーミュラEはそういう部分を極めようとしているんです。銅線も太ければ、それだけ損失が少なくなります。でも線が太いとコイル状に巻くのが難しくなります」
「銅線もどう巻くのか、鉄の素材をどうするか……そういう部分もかなり攻め込んでいて、その部分を理解するというのが、我々の目標のひとつです」
「その組み合わせの全てを、人間が手計算でやっていくには、回数も時間も限界があります。最近では最適化ツールやAIを使っています。そうすることで、やれることが飛躍的に増えるんです」
ちなみに銅よりもエネルギー損失が少ない素材は金なのだという。しかし価格の面でも、品質管理の面でも、現実的ではないのだそうだ。原氏が説明する。
「銅はかなり良いレベルなんですが、一番良いのは金らしいです。でも金を多用したクルマなんて、夜中にすぐ持っていかれちゃいそうですね(笑)」
「金を使うと、少なくとも今のレギュレーションで許されている予算制限は超えてしまいます。しかも成形も難しいし、品質管理も難しい。そういう意味では、現時点では銅が一番強いかなと思います」
■目に見えない“電気”、扱いやすい?
電気というのは、今やなくてはならないエネルギーである。しかしその姿は目に見えず、身近ながらもよく分からないモノではないだろうか? 開発する身としては、その扱いにくさは感じていないのだろうか?
「僕は両方ですね」
そう梅田氏は言う。
「問題が何も出なければ、モーターの応答性なんかも含めて、とてもコントロールしやすいのが電気だと思います。ただ、この電気というのは、ノイズを周囲に撒き散らすんですよね。例えば飛行機に乗った時、今も離着陸時は携帯電話で通信しないように言われたりしますが、まさにそれです」
「僕らもフォーミュラEでは、参戦し始めた今年の初め頃には、そのノイズにとても苦しめられました。センサーが変な動きをしたり、何もないのにエラーが出てしまったり……そうなると、パフォーマンスを下げざるを得ないんです」
「それと、何かあった時に漏電してしまうと、人間が感電してしまって危ない。漏電しているのも見えませんからね。そういうところは扱いにくいと思います」
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みんなのコメント
しかも、パワーバンドは無視
モーターが最も効率よく回る回転数でだけ「95%」と言ってる。
それしか言う事ないんか…。