代わり映えのしない日常を抜け出したい。そう思うあなたにおすすめしたいのがオートバイだ。このプリミティブな乗り物にまたがり、五感を研ぎ澄まし、体全体を使って操れば、いつもの風景もまた違ったものに見えてくるのは間違いない。今回はそんな非日常の世界に連れていってくれる6台の最新モーターサイクルを紹介しよう。いずれも分別ある大人のライダーにうってつけの相棒となってくれるはずである。
高バランスのモダン・カフェレーサー
トライアンフ・スピードトリプル 1200RR
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英国の伝統的オートバイ・メーカーとして知られトライアンフ。映画『大脱走』でスティーブ・マックイーンが駆ったTR6を思い出す人も多いはずだが、近年でいえばトム・クルーズ主演『ミッション・インポッシブル2』でのスピードトリプルの活躍も印象的だった。その最新版がスピードトリプル1200RSであり、カスタマイズ仕様の1200RRだ。今回試乗した1200RRはライトの単眼可とともにハーフカウルを装着。セパレート・ハンドルやバックステップの採用でライディングポジションはかなりの前傾となった。もっとも、その姿勢は決して我慢を強いられるようなものではなく、初見でも無理なく操れる。伝統的な3気筒 1,160ccユニットは同社の市販車史上最高の180PSを発揮。低回転域からかなりのパンチ力を披露しつつ、一般的な4気筒エンジンと違わぬスムーズさで吹け上がるのが気持ちいい。この1200RRには電子制御サスペンションも奢られ、モード切り替えによるダンピング調整も可能。メーカーによる至れり尽せりのカスタマイズが施されたモダン・カフェレーサーは、その洗練された乗り味も含めて、大人のライダーにぴったりの高バランスで仕上げられている。
根源的な楽しさは変わらない
BMW R nine T
BMWの“ボクサー”水平対向2気筒を搭載する本流はやはりこのR nine Tではないだろうか。原始的なネイキッドスタイルにボクサーエンジンを積むこのモデルは、電子制御等で先鋭化していくモーターサイクルのなかにあって、無駄を省いたプルミティブな良さが光る一台だ。車体の低い位置に水平対向ユニットが据えられるメリットは、何より重心の低さと安定性の高さが得られること。多少の横風を受けたとしてもびくともしない抜群の直進性はいつ乗ってもほれぼれする。いざとなればそのスタビリティの高さを持って、高い旋回速度でコーナリングを楽しむこともできるのが嬉しい。またいっぽうで、そのプレーンなスタイルゆえ、自分好みのスタイルに作り上げていける楽しみを持つところも魅力だ。実際、様々なカスタマイズパーツが用意されるとともに、通常のラインナップとしてオーソドックスなネイキッドから、エンデューロスタイルのGSタイプも用意されるなど、選べる楽しみもある。一時はバイクかから遠ざかっていたリターンライダーにとっては、ふたたびオートバイの楽しみを存分に味わうことのできる、最高の素材とも見えるだろう。
今も息づく伝統的スタイル
ハーレー・ダヴィッドソン・ローライダーS
その名のとおり、ロー&ロングのポジションで人気を博してきたハーレー・ダヴィッドソンのローライダー・シリーズ。1970年代から受け継がれてきたこのネーミングは一度ラインナップから姿を消したものの、2015年に再び登場。最新モデルでは1923cc(!)という強力なVツインエンジンを搭載して登場した。やや遠めのフラットバーハンドルを握るポジションはローライダーの伝統的スタイルで思わずニンマリ。スロットルをグイッと開けたときの蹴り上げの強さはまさに強烈の一言で、ドラッグスターのようなパワフルさに一瞬たじろいでしまう。もっともそんなライダーの不安はどこ吹く風といった様相で、車体はまったく安定し切った姿勢を保ち続けてくれるのが頼もしい。Vツインユニットのビートは滑らかかつ迫力のあるもの。その洗練されたマナーは、70年代のショベル・ローライダーを知るものにとっては隔世の感があったが、迫力のある走りっぷりはまごうかたなきハーレー。現代においてもまったくぶれることなく我が道を往く一台である。
磨きがかかった多様性
ドゥカティ・ムルティストラーダ V4S
“様々な道を駆ける”キャラクターとして、ドゥカティ初のデュアルパーパスモデルとして登場したムルティストラーダは、2003年に第1世代が登場。2010年から第2世代となってよりクルーザー色を強めている。その一番のポイントは様々な路面での走行を想定してボタンひとつでエンジン特性やハンドリング(ダンピング)を切り替えられる電子制御化で、ドゥカティの言う“4 Bikes in 1”が推し進められた。そして現行世代の主軸たるV4Sでは、よりそのキャラクターを明確にするべく、エンジンに1158cc V型4気筒が採用された。実際、それまでLツイン・ユニットで感じられた独特の振動は鳴りを潜め、4気筒らしく軽やかに回ってくれるのが美点。振動の少なさはなによりロングツーリングでも疲労の軽減には大いに役立ってくれるだろう。加えてモーターサイクルでは初となるレーダーセンサーを持つアダプティブクルーズコントロールも備わるなど、四輪顔負けの先進性の塊となっている。旅を愛する大人のライダーには、ドイツのライバルとはまたひと味異なった個性を持つツアラーの登場が、かなり魅力的に映るはずだ。
冒険心をくすぐるパフォーマンス
ハスクバーナ・モーターサイクル ノーデン901
北欧スウェーデンのメーカー、ハスクバーナはチェーンソーといった農林・造園機器などで知られる一方、モトクロスなどのオフロード バイク製造メーカーとしても名高い。現在では二輪部門が独立した企業としてKTMの傘下に収まり、オフロードやモタードを主体としたモデルをリリースする。その最新作がアドベンチャー系のノーデン901だ。KTM890アドベンチャーと基本骨格等を共有するいっぽうで、パリダカに出場するマシーンのような迫力のあるアピアランスが魅力的。もっとも、実際に跨ってみると見た目から受ける印象ほどの大きさは感じられず、ツキのいいパワーの湧出や取り回しが良い点など、意のままに操れる軽快さがあるのがいい。サスペンションのストロークはラフロード走行も前提にしつけられているのだろう、しなやかさが際立っていてどこにでも踏み込んでいける安心感がある。パフォーマンスとしてはもちろん、デザインを含めた車体の全体の雰囲気としてアドベンチャーモデルらしい味わいを好む、違いのわかる大人に選んでほしい一台である。
電動化でも変わらぬ BMWの味
BMW CE 04
四輪とともに二輪も連綿と作り続けているBMWにあって、伝統的なスタイルが水平対向のRシリーズなら、挑戦的かつ革新的なモデルがCシリーズだ。その最新作であるCE 04はパワーユニットに電動モーターを採用した、普通自動二輪免許で乗れるEVスクーターである。スクーターといってもロングホイールベースの堂々としたスタイルで、ツアラー的なキャラクターも持つ。高速走行でもボクサーユニット搭載車のような安定感を保ち、矢のように突き進んでくれるのにはちょっと驚いた。駆動用バッテリーやモーターは四輪技術を応用したものとあって、信頼性やクオリティの高さは抜群。1充電あたりの航続距離は130kmを確保する。新時代のクルーザーとしてはもちろん、シティコミューターとして高いパフォーマンスを発揮してくれるに違いない。
TEXT・桐畑恒治(AQ編集部)
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