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1台に20か月:ファントム VI BMW傘下で新生:ファントム VII 100年の毅然 ザ・ロールス・ロイス(3)

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1台に20か月:ファントム VI BMW傘下で新生:ファントム VII 100年の毅然 ザ・ロールス・ロイス(3)

ファントムVの改良版 完成に最長20か月

1960年代末のロールス・ロイスは、現代的なシャシーの次期フラッグシップ・リムジンを計画した。だが、最終的にはファントムVの改良版に留まった。シルバーシャドウ風のダッシュボードに、前後で独立したエアコンなど、新装備も得ていたが。

【画像】ザ・ロールス・ロイス ニューファントムと歴代ファントム 最新ゴーストとスペクターも 全137枚

6230ccのV8エンジンは、新しいシリンダーヘッドを獲得。ホイールアーチへ潜らず、ボンネットを開いて点火プラグの交換が可能になった。2社が合併したマリナー・パークウォード社製ボディは、ボンネットの開閉部分が僅かに短くなった程度だ。

従来どおり、ボディパネルは亜鉛めっき鋼板とアルミ板を手作業で加工。一部の構造には木材も用いられた。フェンダー1枚の成形に3週間が必要で、ルーフは7枚のパネルで構成され、発注から完成まで20か月を要した例もあったという。

リアサスペンションは、グリースの入ったゴム製カバーで包まれたリーフスプリングに、リジットアクスル。旧式なクロスプライタイヤは、最後まで採用された。インフレや、TVや冷蔵庫などの豪華装備で価格は高騰。生産数は年間12台へ減少している。

走りは軽快 ボートのように揺れる後席

1978年に、V8エンジンは6750ccへ拡大。ATはGM由来の3速へ置換されるが、ブレーキはドラムのままだった。今回のベルベット・グリーンの1台は、当時のロールス・ロイス会長が注文した1971年式で、内装はペール・グリーンのコノリーレザー張りだ。

フロントには、「チッペンデール」と呼ばれるデザインのダッシュボード。スピードメーターは、時速120マイル(約193km/h)まで振られる。前期型で、ATは4速。見かけによらず扱いやすく、意欲的に加速していく。

右足の角度へ気を配れば、変速時の小さなショックを抑えられるが、高速で走ると後席はボートのように揺れる。カーブでボディが傾くと、レザーシートの上で身体が滑る。タイヤからはスキール音。積極的なコーナリングは、ファントム VIらしくない。

それでも、運転席の乗り心地は良好。プロのショーファーは、大きな不満を抱かず生活の糧を得ていたに違いない。

BMW傘下で誕生したファントム VII

「真のロールス・ロイスか?」2003年に復活したファントム VIIへ、AUTOCARは疑問を投じた。フォルクスワーゲン・グループとの複雑な取引きを経て、BMWはグレートブリテン島南部のグッドウッドに、新生ロールス・ロイスを立ち上げた直後だった。

BMWは、上級に仕立てた7シリーズ以上のものを生み出す必要があった。風格漂うスタイリングは、マレク・ジョルジェヴィッチ氏が担当。アイデアは、1956年のシルバークラウドにあったという。インテリアは、チャールズ・コールダム氏が描き出した。

スペースフレームはアルミ製。全長は5.8mを超え、長いボンネットとオーバーハングを、長いホイールベースが結んだ。極太のリアピラーに、なで肩のリア周り、観音開きのサイドドアなどは、いかにもロールス・ロイスだった。

新世代では、オーナーの9割が自ら運転すると予想され、動的能力の向上は必須になった。V12エンジンは760iの改良版で、6.75Lの排気量から459psと73.2kg-mを獲得。サスペンションは前がダブルウィッシュボーン、後ろは7シリーズ譲りの4リンクだ。

文句なしの乗り心地 真のロールス・ロイス

今回の1台は前期の2007年式で、星空のような「スターライト」天井も含めて、オプションは残念だが余り備わらない。ホイールは22インチと巨大だ。

ドアは、金庫のように重厚。ダッシュボードはシンプルでエレガント。速度と補機メーターの他に、エンジンの余力を示すパワーリザーブ・メーターが備わる。ステアリング・リムはスリムで、堂々とした運転姿勢へ落ち着ける。目線の高さはSUVに近い。

キーをダッシュボードへ押し込み、V12エンジンを始動。6速ATは極めて巧妙にギアを切り替え、加速はシームレス。ノイズは、二重ガラスでほぼ耳に届かない。スポーティと呼べないにしても、走りは身軽。大きなボディを、確かに操れる感覚がある。

ステアリングは適度に重く、高速域でも正確。鋭い入力が僅かに孤高の雰囲気を濁すものの、衝撃を静かにいなす乗り心地は文句なし。今でもなお、真のロールス・ロイスだと断言できる。2003年に得た回答のように。

協力:ホールデンビー・ハウス社、ティム・マルティン氏、クリス・モット氏、ヴィンテージ&プレステージ社、リチャード・ビドルフ氏、マイ・ネクスト・カー社

ファントム VIとVII 2台のスペック

ロールス・ロイス・ファントム VI(1968~1990年/英国仕様)

英国価格:1万7550ポンド (新車時)/17万5000ポンド(約3465万円/現在)以下
生産数:365台
最高速度:162km/h
0-97km/h加速:13.8秒
燃費:4.5km/L
車両重量:2722kg
パワートレイン:V型8気筒6230・6750ccc 自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:非公表
最大トルク:非公表
ギアボックス:3速・4速オートマティック(後輪駆動)

ロールス・ロイス・ファントム VI(2003~2017年/英国仕様)

英国価格:25万ポンド (新車時)/13万ポンド(約2574万円/現在)以下
生産数:1万327台
最高速度:239km/h
0-97km/h加速:5.7秒
燃費:6.4km/L
車両重量:2550kg
パワートレイン:V型12気筒6749ccc 自然吸気DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:459ps/5350rpm
最大トルク:73.2kg-m/3500rpm
ギアボックス:6速オートマティック(後輪駆動)

極めて貴重なファントム IVは、100年の毅然 ザ・ロールス・ロイス(4)にて。

文:AUTOCAR JAPAN AUTOCAR JAPAN
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