この記事をまとめると
■2000年以降はスポーツカーの不況が続いた
「スポーツカーにモデルチェンジは不要」86とロードスターの開発責任者の本音
■トヨタ86はクルマ好きを増やすためにトヨタが投入した意欲作だった
■中古車市場には1000台近くが流通しており若者も買いやすくなっている
いまになってわかる86の偉大さ
2012年前半、自動車業界が大注目したクルマが世に解き放たれた。トヨタ86とスバルBRZである。2000年に突入したあたりから、世のなかはクルマの燃費を気にするようになり、低燃費なクルマを求める人が圧倒的に増えた。自動車メーカーもハイブリッド車を中心とした製品ラインアップに切り替えつつあり、スポーツカーなんてのは趣味性の高い、オタクな乗り物になりつつあった。
また、環境性能を重視する世のなかになりつつあったので、パフォーマンスが高いかわりに排気ガスを多く出して、燃費もよくないスポーツカーは社会の敵。自動車メーカーもスポーツカーの新規開発をほとんどやめてしまい、消滅したわけではないにしろ、スポーツカー不況な社会になっていった。
そんななかで誕生したのが、トヨタ86とスバルBRZであった。とくに前者のトヨタ86に関しては、コンセプトモデルが2009年の東京モーターショーでFT-86として登場した際、その名のとおり「AE86の再来だ!」なんていわれ、大盛り上がりであった。
なお、売れないスポーツカーであることを承知でこの企画にGOサインを出したのは、当時副社長であった豊田章男さんだった。「若者のクルマ離れが深刻」というのがトヨタの社内で上がっており、自動車メーカーとして危機感をもっていたという。これから生活に余裕ができてクルマを買うはずの世代が、クルマを買わなくなれば自動車メーカーにとって死活問題なので、問題視するのは当然といえば当然だ。
とはいえ、売れないといわれていたスポーツカーなだけに、当時はそれほど期待されていなかったという。いくらこの時代にFRのスポーツカーが出たところで、それに感化されるのはクルマ好きだけ。一般人は「あっそ」くらいにしか思わない。それが共通認識であった。
しかし現実はどうか。実際に街を見渡してほしい。86やBRZはもちろん、現行型のGR86やBRZも見ない日はないほど走っている。初代のトヨタ86は7万8000台以上、スバルBRZも4万3000台ほど売れたといわれている。そして、その多くは18~30代の若者がオーナーである。彼らに聞くと、「86(BRZ)に乗りたい!」といって買う人も多いし、「カスタムするパーツも多いから買った」、「純正パーツが安いから」といった理由で選ぶ人も少なくない。
なお、18~30代の若者がこの2台を買う際、選ぶのは中古車である場合が多い。新車より安価なのだから当然だ。そしてこれこそが、「若者のクルマ離れ」に危機感をもった、当時のトヨタの狙いであった。
思ったとおりの世のなかに
豊田章男さんはこの86を出した際に、このようなことを語っていた。
「86は約300万円からと、若者がポンと買えるクルマではない。それは承知している。なので、まずは中高年のお金に余裕のある皆さんがどんどん買ってください。そして3年とかで乗り換えてください。そうしてもらえると、世のなかにどんどん中古の86が増えていきます。そうなれば、市場価値も下がって安くなるので、さらにそれを若者が買って、何年か楽しんだら、またそれが中古車として出まわって、また若者が買って……すると、スポーツカーの魅力が多くの人に広がるのはもちろん、中古の86を楽しんだ人がクルマの魅力を知って、いつかトヨタの新車を買ってくれる日が来ると考えています(要約)」
つまり、86はただの革新的なFRスポーツではなく、未来のクルマ好きを増やすための布石だったといっても過言ではないだろう。さらに86やBRZは、たまに特別仕様車や限定車をリリースしているほか、年次改良モデルも続々と出しているので、いまのクルマをどんどん新車に買い替えさせるような仕組みも出来上がっている。
事実、大手中古車サイトを見ると、現在86は1000台弱販売されている(GR86含む)。これを安い順に並べてみると、なんと走行距離10万km以下の車体でも80万円ほどから選ぶことができるのだ。さすがにこれらのモデルはATだが、86のATは制御が優秀で高く評価されている。MTにこだわって探しても、100万円を切る価格のモデルもちらほら。BRZもAT/MTどちらも同じような相場だ。
これならたとえアルバイトであっても、買えないこともない金額だ。しかも86はパーツが安価で、トヨタディーラーも多いので維持管理も容易。14年の歳月をかけて、まさにトヨタが描いたシナリオどおりの世の中になったといえる。なお、86の価格は初期モノであればこれからもっと下がる可能性もあるので、高校卒業後すぐに買えるようなクルマになる可能性も秘めている。未来のクルマ好きを育てる教材といっても過言ではないだろう。
豊田章男さんが86とBRZに与えた任務は、着々と遂行されているといえよう。これからのスポーツカー市場の命運を握るのは、この偉大なる2台なのかもしれない。
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みんなのコメント
中古で86のAT買った。
と言っても2020年式で240万だから安くないが。
で、借りて乗ったら、
とてもいいクルマだった。パワーは十分で出だしも高速もいい。スポーツモードも面白い。スタイルも赤色もいい。乗り換える時、譲ってもらおう!
おかげで日本のスポーツカー文化が生き残ることができました。