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ランクルもびっくり!? 最近「軽トラック」もパクられまくる根本理由

掲載 更新 20
ランクルもびっくり!? 最近「軽トラック」もパクられまくる根本理由

狙われ続ける貨物資産

 近年、日本国内における自動車盗難の認知件数は大幅に減少している。2003(平成15)年には年間6万4223件に上っていたが、2024年には6080件にまで減った。

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 しかし、軽トラックに限っては別の傾向が見られる。警察庁が2024年3月に公表した「車名別盗難台数の状況」によれば、スズキ・キャリイとダイハツ・ハイゼットの盗難台数は高止まりを続けている。スズキ・キャリイの盗難台数は以下のとおりだ。

・2021年:75台
・2022年:122台
・2023年:115台
・2024年:96台

一方、ダイハツ・ハイゼットは以下の水準で推移している。

・2021年:117台
・2022年:95台
・2023年:107台
・2024年:103台

キャリイとハイゼットはいずれも、3年連続で盗難台数上位10車種に入っている。2024年の1位はランドクルーザー(1064台)、2位はプリウス(539台)である。それに比べれば軽トラックの件数は少ないが、両車種を合わせた200台超という数字は、すでに“例外”ではない。軽トラックは、もはや盗難の主流の一角を占めている。

 なぜ、軽トラックが狙われるのか。誰が、どのような価値をそこに見いだしているのか。軽トラックと犯罪組織の関係を読み解く必要がある。

盗難増加を招く防犯の死角

 軽トラックは、国内の農業用車両としてだけでなく、海外市場でも高く評価されている。電子制御が少なく、構造がシンプルなため、現地での整備や修理がしやすい。メンテナンスコストも低い。さらに、日本車全般がアフリカなどの未舗装道路や過酷な気候条件に強いとされる。軽トラックもこうした特性を備えており、海外ユーザーの実用的なニーズに応えている。

 この背景から、軽トラックの海外価格は上昇傾向にある。たとえば米国では、ホンダ・アクティが150万円以上で取引されるケースもある。発展途上国や新興国でも、需要の高まりとともに高値取引が常態化しつつあるとみられる。こうした事情が重なり、軽トラックは犯罪組織にとって格好のターゲットとなっている。

 では、なぜ軽トラックがこれほどまでに狙われるのか。原因は車両の構造と、所有環境の両面にある。

●構造的な脆弱性
・盗難防止装置(イモビライザー)が未搭載のモデルが多数(ダイハツは2021年12月以降に導入)
・構造が単純で、不正始動が容易
・セキュリティアラームが標準装備されていない

●所有者側の防犯意識の欠如
・農業従事者が「道具」として扱い、高価な資産との認識が薄い
・キーを挿しっぱなし、無施錠といった使用実態が常態化
・「軽トラを盗む者はいない」という油断

軽トラックの盗難が後を絶たないのは、構造的な脆弱性、防犯環境の甘さ、そして監視体制の限界が複合的に絡み合っているからだ。犯罪組織はこの隙を巧みに突き、計画的な盗難を繰り返している。

密輸部品化で消える盗難車の追跡

 軽トラック盗難の背後には、国内で合法的に稼働する中古車輸出の仕組みに巧妙に寄生する犯罪インフラが存在する。この構造は窃盗の枠を超え、地場産業を模倣した機能分業体制を形成している。標的選定から実行、分解、輸送、販売まで、それぞれ異なる役割を担う人員と拠点が連携している。

 重要なのは、各工程が表向きは合法業務に紛れている点だ。全体としては、物流の皮を被った収奪装置として機能している。

 近年、この犯罪構造に軽トラックが新たに組み込まれた。軽トラックが商品として成立するのは、買い手の存在ではなく、流通機構が整っているからである。盗まれた車両はヤードと呼ばれる解体・保管施設に搬入され、フレーム単位で解体される。

 ヤードは全国に合法的に分布する中古車輸出業の一環だが、そのなかには密輸輸出専用の施設も紛れ込んでいる。盗難車は部品単位に分解され、輸出可能な形に再構成される。部品化によりトレーサビリティはほぼ消失し、法的追跡は困難になる。

 この工程は法の脱法ラインと輸送の非可視性が組み合わさる。コンテナ輸送は通関制度や港湾労働に依存するが、現場では量と速度が優先され、細かな確認は事実上行われていない。地方港湾や小規模ヤードの一部では検査の実効性が初めから放棄されている。

 この盲点を狙うのが、国境を越えた多国籍の偽装業者だ。彼らは農機具やバイク、正規軽中古車に盗難部品を紛れ込ませて輸出している。すべての工程は合法性の皮膜で巧妙に覆われている。

 軽トラックは新品や高年式である必要はない。重要なのは一定の信頼性と修理可能性を持つ汎用機械であることだ。言い換えれば、軽トラックは現代の汎用品兵器として、アフリカや東南アジアで農業用や物流用、時に軍用車両の代替品として再定義されている。この価値が市場で認知される以前に、供給体制が整備されていたという逆説がある。

農村を狙う越境型窃盗ビジネス

 農村部が犯行現場として選ばれているのは戦略的な判断だ。都市部はリスクが高く、監視インフラも発達しているが、農村部は監視が緩い。加えて、共同体の連帯感や相互監視といった伝統的秩序が弱体化し、農村は管理されない財の集積地と化している。

 農業従事者の防犯意識の低さは個人の問題ではない。社会全体が地方に犯罪のインセンティブはないと見なしてきた結果、脆弱な空間が放置された。その隙に国際犯罪インフラが接続したのが実態だ。

 現場の対策と組織犯罪の仕組みには致命的な非対称が存在する。軽トラック窃盗は隙を突くのではなく、既に成立したシステムの中で定常的に行われている。もはや事件ではなく制度化された収奪だ。

 この状況下で鍵をかける、見回る、GPSを付けるといった対策は、犯罪インフラ全体ではノイズ以下に過ぎない。問題の根源は、農村が資源供給地として機能し始めたことにある。グローバルな犯罪ネットワークはこの機能を見抜き、組織的に利用している。

 軽トラックが盗まれるのは、盗みが成立する社会構造がすでに完成しているからだ。

軽トラ窃盗と輸出経路の実態

 軽トラック盗難は、辺鄙な農村が国際犯罪経済に取り込まれたことの象徴である。2025年現在、グローバル経済と接続した組織犯罪が、日本の農村部にまで浸透している。

「過疎地は犯罪と無縁」という前提は、すでに崩れている。国際的な需要と連動する犯罪組織にとって、監視の目が届きにくい農村は格好の標的となっている。

 問題解決には、個人の防犯意識だけでは不十分だ。地方で軽トラックを狙うのは、輸出インフラを有する多国籍の犯罪組織である。

 軽トラック盗難は、グローバル化時代における地方の治安リスクを浮き彫りにしている。従来の枠組みでは対応しきれない。国境を越えた犯罪に対する包括的な対策が求められている。(樋口信太郎(バス・トラック評論家))

文:Merkmal 樋口信太郎(バス・トラック評論家)
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みんなのコメント

20件
  • 田吾作
    日本国における窃盗犯罪の罪が軽すぎる事と,ヤードの取り締まりが殆ど無い事。
  • エガちゃんねらー
    先日Jリーグでクルド人の私設サポーター団が
    無申請のままで応援しようとしたが
    チームがそれを排除したのを当人らが
    差別だ!差別だ!と猛抗議したそうだが
    その件に関してウチの地元紙が
    クルド人に対する差別は許し難い、と
    社論として掲載してて目眩おこしそうになった
    無申請は国籍問わずに排除されるのは
    ちゃんと規則として明記されてる
    それを何言ってんの?って
    そりゃこんな頭がチョコのハニー漬けな国は
    不良外人からしたらチョロ過ぎるだろうよ
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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