12月8~9日にブラジル・サンパウロに位置する伝統のF1トラック、インテルラゴスで開催されたSCBストックカー・ブラジル最終戦は、元F1ドライバーのリカルド・ゾンタ(シェルVパワー・レーシング)がポール・トゥ・ウインで今季2勝目を飾って有終の美を飾った。また、注目のチャンピオン争いは、4位に入った王者ダニエル・セラ(ユーロファーマRC)が2017年に続くシリーズ連覇を果たしている。
通常の2ヒート制ではなく、王者決定戦に相応しい“Hero Super Final”として25周の1発勝負で争われた最終戦は、レースウイークに入ってからファン投票のSNSで上位6名に贈られるオーバーテイクボタン使用権『FAN PUSH』の投票でも、タイトルを争うセラとフェリペ・フラーガ(シムド・シボレー・レーシング)の2名がダントツの得票数を記録。
ブラジルストックカー第11戦、2014年以来の戴冠目指したバリチェロがリタイアで王座獲得権失う
その他、女性ドライバーのビア・フィゲレイド(イピランガ・レーシング)や、元フォーミュラE王者でSCBルーキーイヤーを戦うルーカス・ディ・グラッシ(HEROモータースポーツ)、その僚友ブルーノ・バプティスタ(HEROモータースポーツ)らに"FAN PUSH"の権利が与えられた。
土曜に行われた予選では、タイトル防衛に向け意気揚々の王者セラが順当にQ3まで進出し3番手グリッドを確保したのとは対照的に、強豪シムドのライバル、フラーガはまさかのQ1敗退。18番手からの巻き返しを強いられることとなり、ランキング2位で追う立場としては、この時点から逆転タイトル獲得に向け非常に苦しい展開となることが予想された。
この予選でポールシッターとなったゾンタを先頭に、日曜午前にシグナル・ブラックアウトとなったレースは、スタートでホールショットを決めたシェルVパワー・レーシングのマシンに対し、セカンドロウ発進の王者セラがひとつポジションダウンの4番手で1コーナーへと進入していく。
一方、18番手から出たタイトル候補のフラーガは前方で2台がスピンオフしたことにも助けられ、序盤からジリジリ順位回復の念走を見せる。
先頭を走るゾンタも、2番手のフリオ・カンポス(プラティ-ドナドッツィ・レーシング)を筆頭にカカ・ブエノ(シムド・シボレー・レーシング)、ガブリエル・カサグランデ(ヴォーゲル・モータースポーツ)らと首位を入れ替えながらの攻防戦を展開する。軽い接触を繰り返しながらのバトルを続ける先頭集団だが、5度のチャンピオン経験を持つ"帝王"ブエノが左リヤフェンダーを破損し、これがタイヤに干渉するアクシデントで最初の離脱者に。
これにより一時5番手まで後退していたセラは4番手に返り咲き、仮にフラーガが勝利を挙げたとしてもタイトル獲得が保証されるポジションでレースを進める優位な立場となった。
しかし10周目のピットウインドウから雲行きは急激に変わり始め、先頭集団のカンポスやセラが続々とピットに向かったのに対し、ゾンタやシムド勢はアンダーカットを狙ってストップを引っ張る戦略を採用。
■ファイナルラップで王者争う2台がサイド・バイ・サイドの大接戦に
さらに後方グリッドからの追い上げを期したディ・グラッシやルーベンス・バリチェロ(フルタイム・スポーツ)らがタイヤマネジメントに徹する老獪な走りで、レース終盤までストップを伸ばし優勝戦線に顔を出してくる。
オーソドックスなタイヤ交換戦略を採用したトップ勢と入り乱れて終盤へと向かったトップ10オーダーは、ゾンタが首位をキープし、2番手にカンポス、3番手カサグランデ、そして4番手にリカルド・マウリシオ(フルタイム・スポーツ)が浮上し、セラは5番手に。
すると終盤に向けオーバーテイクボタンを温存していたディ・グラッシがセラの背後にまで浮上し、ここぞの場面でパワーを解放しセラを6番手に追いやると、その後方まで這い上がってきていたシムド艦隊、2015年王者マルコス・ゴメスと2016年王者フラーガがチームプレーを見せポジションを入れ替え、フラーガをセラの背後に送り出し、ついに直接対決の舞台が整う。
そして迎えた緊張のファイナルラップ。最終周にピットへ向かったアッティラ・アブレウ(シェルVパワー・レーシング)が抜け、各車ひとつずつポジションを上げたタイトル争いの車列は、ターン3の“クルヴァ・ド・ソル”から、4番手のディ・グラッシを巻き込み3台がサイド・バイ・サイドの状態で高速ターン6、7に突入。
ここでアウト側に追いやられたディ・グラッシが弾き出されると、そのまま最終セクターでもポジションを守ったセラが4位でゴールチェッカー。勝者ゾンタ、2位カンポス、3位カサグランデの表彰台背後で争われたタイトル決定戦はセラに軍配が上がり、薄氷の勝負を制してシリーズ連覇を決めて見せた。
「本当に何が起きるか分からないので、とてつもなく緊張した。とにかくタイヤをケアして、マシンをゴールへと運ぶことだけに集中したよ。ポイント差はあったけど、トラック上でそんなことを計算する余裕もなかった」と、開放感とともタイトル連覇の喜びを語った34歳のセラ。
「レース中はナーバスになっていた証に、中盤は6回も『パンクしたのでは』と感じることもあった。それでもコースに留まり続け、なんとかフェリペ(フラーガ)に勝つことができた」
「今の今まで考えてもいなかったけど、この連覇で(父であるチコ・セラの持つ)3度目のタイトル獲得へ挑戦できる環境が整った。もし父に並べたら、僕のキャリアは大成功だと言っていいだろうね!」
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