シーガルが日本に導入される予定はない
中国BYDオート(比亜迪汽車)の日本法人である、BYD Auto Japanは2025年4月24日(木)に、「2026年後半に日本専用設計の乗用軽BEV(バッテリー電気自動車)の日本国内導入決定」というプレスリリースを発信した。
日々の生活の相棒としてBYDのコンパクトEV「シーガル」は最適な1台かもしれない
現状、日本国内でラインアップされているBYD乗用車はいずれもBEVとなり、シーライオン7、シール、ATTO 3、ドルフィンの4車となっている。今回の軽規格乗用BEVの国内導入決定のリリース発信までは、シーガルというコンパクトハッチバックスタイルのBEVが日本に導入されるのではないかと盛り上がることもあったが、この件をビーワイディージャパン広報に確認すると、「シーガルの日本市場導入予定はない」とのことであった。
確認してみると、シーガルはフィリピンやラオス、カンボジア、ミャンマーなど東南アジアのなかで左ハンドル車市場の国々で販売されているとのこと。また、調べてみると、ラテンアメリカ諸国でもドルフィンミニとしてすでにラインアップされ、欧州でもドルフィンサーフの車名でラインアップ予定となっていた。なお「シーガルは中国国内専売車」といった都市伝説のような噂が流れていることについても明確な否定コメントを得ることができた。
中国のBYDホームページに掲載されているシーガル(漢字車名は海鴎)の諸元表をみると、全長3780×全幅1715×全高1540mmとなっており、同じ中国のホームページに掲載されているドルフィン(漢字車名は海豚)のボディサイズと比べると、全長でマイナス500mm、全幅でマイナス55mm、全高でマイナス30mmとなっている。中国仕様のドルフィンが航続距離410、420、520km(CLTC)仕様を用意しているのに対し、中国仕様のシーガルでは305kmと405kmが用意されている。
車格としては前述した日本導入予定の軽規格BEVとドルフィンの中間に位置するモデルと表現することができる。しかし、そのような車格となると、日本国内で重要視されるのはボディサイズが3ナンバーサイズなのか5ナンバーサイズなのか、つまりワイドボディか否かといったことになる。
韓国ヒョンデ自動車は、2025年4月に日本での5ナンバーサイズに収まるBEVとなるインスターを発売した。韓国版軽自動車規格となる“軽車(キョンチャ)”でICE(内燃機関)車となるキャスパーの派生モデルとなり、キャスパーよりボディサイズが拡大されている。韓国版軽自動車サイズ車ベースとなるので、日本でもスンナリと5ナンバー規格に収まることとなった。
日本国内におけるヒョンデの乗用BEVは、インスター以外ではアイオニック5とコナの2車がラインアップされている。インスターはそもそもグローバル戦略モデルなのだが、日本市場に絞れば、ヒョンデとしては軽自動車規格BEVにも興味があったと聞いているが、あえて5ナンバーサイズ登録車規格のBEVで日本市場に勝負をかけたと見ている。
日本国内ではすでに日産と三菱が軽自動車規格のBEVをラインアップしている。とくに日産サクラは発売以来快進撃を続けていたが、2024年秋ごろから急速に販売の落ち込み傾向が目立っていた。サクラはいまでこそ都市部でもよく見かけるようになったが、発売当初は地方部でとくに人気を得た。バスなどの公共交通機関での移動が困難で、高齢となっても日常生活の移動手段として自家用車に頼らなくてはならない地域である。そのような地域に住む高齢のみなさんは、あくまで一般論でいえばクルマで遠出するというシチュエーションは少ない。
通院や買い物など生活圏内の移動が主となる。そのなか、ICE車だとガソリンスタンドの廃業が進み、給油のための移動や時間的負担が大きくなる、給油困難者も地方部で目立ってきた。また、地方部では集合住宅より車庫付き一軒家に住んでいることが多いので、充電施設の設置も容易とのことで、高齢世帯を中心に注目されたのである。
都市部では企業の社用車的ニーズも多いのではないかと筆者は見ている。そのようなニーズにフォーカスしたかは定かではないが、航続距離もカタログ上で180kmとされており、販売現場で説明を聞くと、「遠出を想定したクルマではない」といった話をセールスマンから必ずといっていいほど聞いた。
ただ、軽自動車とはいえBEVなのでICEの軽自動車よりは価格が高いこともあり、日産の登録乗用車に乗っていたユーザーからのダウンサイズも目立っていた。そのなか、高齢となっても所得に余裕があり、しかも心身ともに健康となれば新車を買ったのだからちょっとした遠出もしたくなるだろうが、サクラではなかなかそれを楽しむことはできない。
シーガルを導入しても販売拡大には繋がらない
さらに追い打ちをかけたのがサクラの再販価値の伸び悩みである。ICE軽自動車は5ナンバーコンパクトハッチバック車と比べるとはるかに再販価値が高い。N-BOXなどの人気軽自動車では残価設定ローンを組んで購入すると、残価率が高いので月々の支払い負担は予想以上に軽いものとなる。
しかし、サクラだけというか、現状BEV全体のネックにもなっているが再販価値の伸び悩みがサクラでも目立っており、このまま補助金交付による4年しばり終了を待って乗り換えを勧めるよりはということで、2024年秋あたりからは補助金(残り期間分)を返還してもらい、ノートやノートオーラを中心にICE搭載車種への乗り換えを勧める動きが、販売現場で目立ってきていると筆者は聞いている(時期として発売当初にサクラが納車されたユーザーならば乗り換えを予算面で勧めやすくなったとみている)。
ヒョンデとしてはそのようなこともあり、5ナンバーサイズ登録乗用車タイプBEVに日本市場を託したように見える。コナはSUVスタイルとなるし、全長も4mを超えているのでキャラが被ることもなく、インスターで新規ヒョンデユーザー獲得も可能となるだろう。
話をBYDに戻せば、すでにドルフィンがあるなか同じ3ナンバーサイズのシーガルを新たに導入してもブランド全体の販売拡大にはまず貢献しないだろう。日本におけるBEVの販売状況(台数)を見れば、いたずらにラインアップを拡大するような規模にはまだ育っていない。
BYDがラインアップを予定しているのは軽自動車規格BEVとなるが、サクラほど生活圏内移動車(シティコミューター)色の強いものにもならないだろう。ただし、登録乗用車と同じような販売手法はいたずらに体力を消耗するだけとなってしまう。
スズキやダイハツは正規ディーラーではなく協力業者による業販比率が高い。さらに、ダイハツではトヨタ系正規ディーラーがダイハツ系正規ディーラーと委託販売契約を結び、トヨタ系ディーラーから直接発注することはできないが、ダイハツブランドの軽自動車をトヨタディーラーを通して手に入れることは可能で、このトヨタ系ディーラーでの委託販売が想像以上に販売台数上積みに貢献し、スズキとブランド別販売台数で日々激しい競争を優位にしているとも聞いている。
日本国内ではオンライン販売に特化しているヒョンデでは、軽自動車はたとえBEVでも継続販売していくのは難しいだろう。一方のBYDは、日本国内でも販売ディーラーの積極展開を進めているので、現状の軽自動車販売の実状を把握し、BYDらしい販売手法を確立して攻めることができるので筆者としてもその戦略に期待している。
中国でも微型車という日本の軽自動車のようなカテゴリーがあるが、この微型車派生の5ナンバーサイズBEVではなく、しかも3ナンバーサイズとなってしまうシーガルが日本国内に導入されることは、今後もまずないと考えていいだろう。かつてはリッターカーなどと呼ばれた、日本におけるコンパクトクラスではまだまだ5ナンバーか否かが重要になっているのである。
本稿執筆のためいろいろ調べてみると、タイで航続距離などスペックを少々抑えるかわりに割安感があることで大ヒットした、中国哪吨汽車のローコストBEVとなる哪吨AYA(タイでの車名はNETA V)の寸法をみると、全長4070×全幅1690×全高1540mm、つまり日本の5ナンバーサイズに収まっているのである。NETA Vはすでにタイで現地生産されており、タイから日本への輸出も可能。日本市場で販売可能な基準を満たしているかは定かではないが、タイやインドネシアですでに販売されていることを考えれば……。商社が輸入し、家電量販店でオール電化住宅、家電製品、そしてBEVをワンストップでそろえることができる環境を整えれば(メンテナンスなカー用品量販店に依頼)……、とついつい妄想が広がってしまう。
BYDは軽自動車規格BEVを選択したようだが、日本市場における5ナンバーサイズBEVは、インスターの成否次第では外資ブランドでこちらも盛り上がってしまうというのもまったく非現実的な話ではないとも考えている。
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みんなのコメント
なんかめっちゃ推す人が居るが、ここでポジティブコメントするくらいなら買ってやれば?
圧倒的に推しコメントに対しての売上台数が少なすぎるんだけど。