どのようなドライバーが自動運転を受け入れるか?
アウディは、自動運転に対するユーザータイポロジー(ユーザー類型学)を作成し発表した。これは自動運転に懐疑的なドライバーから、ハイテクに精通した乗員に至る幅広い人々を対象としたオンライン調査、「The Pulse of Autonomous Driving(自動運転の脈動)」によって判明したものだ。
アウディ、自動運転に対するユーザータイプとイメージの調査結果を発表
アウディは「&Audi」と呼ばれる計画において、市場調査機関イプソス(Ipsos)と協力し、3大陸9ヵ国の2万1000人に対するインタビューを実施。その結果、自動運転に最も高い期待を寄せているのは、若く、高収入で教育水準の高い「ステータス志向のトレンドセッター」と「ハイテク技術に精通した乗員」タイプであることが示された。
一方、収入と教育のレベルがあまり高くなく、比較的年齢層の高い「懐疑的なドライバー」タイプは、自動運転に対して消極的な考え方を持っていた。「安全志向で消極的なドライバー」タイプはテクノロジーが十分に実証された場合にのみ、自動運転を利用したいと考える傾向にあるという。最大のユーザーグループは、「オープンマインドな副操縦士」と呼ばれるタイプ。このタイプの人は、いつもで自分でクルマを制御できるという条件付きで、自動運転を受け入れている。
今後の自動運転に関する政策・法律を決めるプロセスに
オックスフォード大学の哲学および情報倫理学の教授兼デジタル倫理研究所のディレクターであり、「&Audi」計画の科学ネットワーク会員であるルチアーノ・フロリディ博士は、今回の調査について次のように語った。
「この研究は自動運転という社会現象に関する知識を深める以上の価値を持っています。政策と法律制定の決定にとって必要なステップです。同時に、幅広い情報に基づいた、より良い世界を積極的に構築することを目的とした、研究開発や事業戦略にとっても重要な意味を持っています」
2015年以来、アウディは、自動運転が社会にどのように受け入れられるかについて調査を行ってきた。「&Audi」計画におけるこの研究では、理にかなった議論、感情、価値観、ライフスタイルによって、自動運転に対する考え方がどのように形成されるのかを調査している。
その結果、「自動運転に対するイメージ」、「ヒューマンレディネスインデックス(HRI=新技術の受け入れ準備指数)」、そして「ユーザータイポロジー」から構成される3つの重要な指標が導き出された。
人々は自動運転に対し高い関心を示しつつも懸念を表明
今回の調査の結果、「自動運転に対するイメージ」は人によって千差万別ということが改めて明らかになった。一方で、自動運転に対して高い関心(82%)と好奇心(62%)も示されている。新しいテクノロジーに関して、回答者は個人と社会に貢献できる可能性を認識。それらはより身近なモビリティの実現(76%)、利便性の向上(72%)、安全性の向上(59%)といった数値に表れている。
回答者の半数以上が自動運転を実際に試してみたいと考えているが、同時に明確な懸念も存在していた。車両のコントロールの喪失(70%)、避けられないリスク(66%)などが挙げられていた。また回答者の41%がテクノロジーに懐疑的で、約3分の1(38%)が不安を表明している。
ちなみに最も多くの人が自動運転に恩恵を感じる状況は、高速道路の渋滞時と自動駐車機能。これらのデータからも、自動運転の知識レベルはまだ低いとアウディは結論づけている。自動運転に関して説明できると回答した人はわずか8%だったのだ。
中国出身・若者・高額所得者が自動運転に積極的
今回、「ヒューマンレディネスインデックス(HRI)」は、社会人口統計学的に見た自動運転に対する考え方の洞察を提供している。
その結果、回答者が若く、教育と収入のレベルが高いほど自動運転に対する態度が前向きであることが判明した。さらに調査した国の間でも違いが明確になっている。中国人(HRI +5.1)は自動運転を積極的に受け入れる傾向にあり、韓国人(HRI +1.2)もテクノロジーに対する肯定的な見方で平均を上回っていた。
一方ヨーロッパでは、スペイン人とイタリア人(共にHRI +0.7)がこの指標で高い数値を示し、ドイツ人とフランス人(共にHRI -0.7)は消極的な傾向。アメリカ人、日本人、イギリス人(すべてHRI -0.9)も同様の数値となっている。HRIは自動運転車を利用するための知識、関心、感情、準備といった項目を組み合わせて「-10」~「+10」の数値指標を生成している。
自動運転に対する考え方はライフスタイルに関連
人々の生活の中における自動運転に対する考え方を調査した結果、「ユーザータイポロジー」には大きな違いが存在すると示された。この分析の結果、5種類のユーザータイプが導き出されている。
「懐疑的なドライバー」タイプは現状を維持することを好み、テクノロジーが完全に確立された場合にのみ自動運転車を利用。「安全志向で消極的なドライバー」タイプも自動運転に対してはかなり消極的な考え方を持っている。彼らは自動運転車は何年もテストを繰り返してから実際の路上で許可されるべきであると考えていた。
「オープンマインドな副操縦士」タイプはテクノロジーの利点を理解しながらも、ビジネス、科学、政治の分野で自動車を安全に走らせるための対策を望んでいる。「ステータス志向のトレンドセッター」タイプは進歩的なライフスタイルを示すことができるため、自動運転に積極的。「ハイテク技術に精通した乗員」タイプはテクノロジーを信頼し、それが全面的に導入されることを望んでいた。
アウディの自動運転責任者であるトーマス ミュラーは、次のようにコメントした。
「自動運転と自律運転は、モビリティを大幅に向上させる可能性があります。その道筋においてはテクノロジーの開発と平行して、人々に納得してもらうことが決定的に重要です。今回の研究によって、自動運転に関する人々の立場の違いや、社会において新しいテクノロジーに対する適切な期待感をどのように確立できるかについて、明確に差別化された洞察を得ることができました」
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