“0.5mm”まで詰めた最新の「GR86」は何が変わった?
トヨタ自動車のモータースポーツブランドであるGAZOO Racing(以下、GR)は2026年8月6日、「GR86」の一部改良モデルを発表しました。どんなモデルに進化を遂げているのでしょう?
【画像】超カッコいい! 中身が着実に進化したトヨタ「GR86」を写真で見る(18枚)
「GR86」は、トヨタとスバルが共同開発したFRスポーツカーです。その前身となる「86」は2012年に登場。2021年のフルモデルチェンジを機に「GR86」へと車名を改め、現在に至ります。いずれも軽量ボディに水平対向エンジンを組み合わせたシンプルなスポーツカーとして多くの支持を獲得しています。
今回登場した一部改良モデルに施されたブラッシュアップは、ひと目で違いが分かるほど明確なものではなく、どちらかといえば地味な内容。しかしその内容は、モータースポーツを起点にクルマを育て続けるGRならではの考え方が息づいています。
エクステリアでは、2017年に前身の「86」へ約半年間だけ設定されたボディカラー“ソリッドグレー”が復活。また上級の「RZ」グレードではインテリアの一部を変更し、スイッチ類にグリップ性を持たせるとともに、光の反射を抑える鋳物ブラック塗装を採用するなど、ドライビングへの集中力アップと質感の向上を図っています。
また安全面のビッグニュースは、運転支援システム“アイサイト”のカメラが、従来の2眼仕様から3眼タイプへとアップデートされたこと。広角化したステレオカメラに超広角の単眼カメラを加えることで、より広い範囲を検知できるようになっています。
今回進化した「GR86」で興味深いのは、そうした分かりやすい改善だけでなく“走りの味”にこだわり施された各メニューです。
コーナーの出口やすべりやすい路面、ウェット路面、雪道などでも加速を細かくコントロールできるようスロットルの操作性を変更。ドライバーがアクセルペダルを踏む力に対し、よりリニアに加速が立ち上がる特性となっています。
さらに「スーパー耐久」シリーズへの参戦経験を反映し、高速コーナーや荒れた路面でもねらったラインをトレースしやすいよう、電動パワーステアリングの制御を変更。トヨタはここで“ミリ単位”のつくり込みを重ねたと説明します。
そうした細かい改良でも印象的なのが、6速MT。限界域でコーナーへ進入する際、5速から4速へとよりスムーズにシフトダウンできるよう、シフトインターロックの面取りを約0.5mm拡大。これは、減速時からターンインまでの操作を途切れさせないための変更だといいます。
わずか0.5mm……一般的な商品改良なら見過ごされそうな小さなブラッシュアップですが、「GR86」ではそれを真摯に実行してきたのです。
なぜ「GR86」の改良に“終わり”はないのか?
「GR86」にこうした細かな改良が施されるのは、今回が初めてではありません。
2023年の一部改良では、電子スロットルの出力特性を変更してコントロール性を向上。2024年には、モータースポーツ参戦で得た知見をもとにアブソーバーの減衰特性や電動パワーステアリング、MT車のスロットル特性などを変更しています。
つまり「GR86」は、誕生時点での仕様を完成形とするのではなく、レースなどで得た知見を市販車へフィードバックしながら育てられているのです。
今回の一部改良も、プロドライバーだけでなく、社内の評価ドライバーやエンジニアがサーキットとテストコースを走り込み、操作感を詰めたといいます。そんな改良スタイルに、GRが掲げる「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」が表れているといえるでしょう。
ドライバーがアクセルを踏み、ステアリングを切り、シフトレバーを動かす……そうした一連の操作に対して、クルマがどう応えるかを細かく磨き抜き、“意のままに操れる”感覚を高めているのです。
●レース仕様なのにAT! その狙いとは
さらに、ワンメイクレース「GR86/BRZ Cup」への参戦用車両である「GR86 Cup Car Basic」に、新たにAT仕様が設定されたのも注目です(2026年12月から生産開始予定)。
「レース参戦車両なのにATなんて?」と、意外に感じる人もいるでしょう。しかし、GRが掲げる狙いは明確で、トランスミッションの選択肢を増やすことで、より多くの人にスポーツ走行を楽しんでもらい、モータースポーツの裾野を広げるための設定だとしています。
MTはわずか約0.5mmの変更にまでこだわって操作フィールを磨く一方、レース参戦用車両にはATを用意する……一見すると正反対の動きに見えますが、根底にある考え方は共通しています。クルマ側の都合にドライバーを合わせるのではなく、それぞれのドライバーがスポーツカーを楽しめるよう選択肢と操作性を磨く、ということです。
現行の「GR86」は2021年の発売以降、世界累計約11万台を出荷。GR専用車種の中で最も多くのユーザーの元に届けられたモデルとなりました。GRは今後も「86」の文化をより強固なものにし、長く愛されるために「GR86」の魅力を高め続けるとしています。
大幅なパワーアップや派手な新機構の採用だけが、スポーツカーの進化ではありません。0.5mmまでこだわって“操る楽しさ”を磨き、走る楽しさへの入口を広げていく。今回の「GR86」の改良は、メーカーがクルマを売って終わり、というのではなく、モータースポーツとユーザーとともにクルマを育て続けるという“GR流のスポーツカーづくり”を象徴するアップデートといえそうです。(VAGUE編集部)
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私の場合、予算にはもう少し余裕はありましたが、これまでの車歴から「400馬力や500馬力もあっても、まず使う事はない」と考えていたので、GR86のパワーでも十分すぎるくらいです。